2026年4月1日
2026年のマクロ経済の安定維持とインフレ抑制を目的とし、ベトナム国家銀行(NHNN:英名State Bank of Vietnam(SBV)/ベトナムの中央銀行であり、通貨政策の策定や金融システムの監督を担う機関)は、国内の各金融機関に対し、金利水準を安定させるための同期的な対策を講じるよう要請した。
【金利安定化と市場規律の強化】
国家銀行は、政府および首相の指示に基づき、以下の重点事項を各金融機関および外資系銀行支店に求めている。
・金利水準の維持: 政府の指針に沿い、通貨市場を安定させるため、全システムで金利水準を一定に保つ対策を徹底する。また、預金金利の公表義務や上限金利に関する現行規定を厳守しなければならない。
・内部統制の強化: 違反行為を迅速に是正・処分するため、内部監査・管理体制を強化し、金利の不当な変動を抑制して金融秩序を維持する。
【情報の透明性と資金提供の最適化】 金融機関は、利用者(個人・企業)が融資を受けやすい環境を整えるため、自社ウェブサイト等での情報公開を義務付けられた。
・公開内容: 平均貸出金利、預貸金利差(スプレッド)、および各融資パッケージの適用金利などを透明化する。
・資金使途の誘導: 流動性と支払能力を確保した上で、融資資金を生産・経営活動、優先分野、および経済成長の原動力となる部門に集中させる。
【当局による監督体制】
国家銀行の各地方支店は、管轄地域の金融機関に対する指導を強化し、情報の透明性を維持させる。国家銀行本部は今後も市場動向を密接に監視し、金利政策の実施状況について検査・監督を強化する方針である。
2026年3月25日
2026年3月24日、ベトナム最大手の工業用・物流用不動産デベロッパーであるBWインダストリアル(BW)は、ハイテク産業およびハイパースケールデータセンターの需要取り込みを目的とした2つの重要な覚書(MoU)を締結した。提携先は、Becamex IDC(ベトナムの工業団地開発最大手) とVSIP(ベトナム・シンガポール工業団地)が共同出資して設立した電力投資開発会社(BV Power)およびベトナム・シンガポール・スマートエネルギー・ソリューション(VSSES)である。
【データセンター向け700MW級の電力供給計画】
BV Powerとの提携により、BWは「BWサプライチェーン・シティ」において大規模な電力インフラを開発する。
・段階的ロードマップ: 今後12ヶ月以内に第1段階として120MWの供給を開始し、3〜5年以内には220kVおよび110kV変電所の増設を経て、総供給能力を約700MWまで引き上げる計画である。 ※700MWは中規模火力発電所1基に匹敵する規模
・戦略的立地: 同プロジェクトが位置するビンズオン省エリアは、ホーチミン市の都市計画においても「集中デジタル技術区」としての発展が期待されており、データセンター特有の膨大な電力需要に即応する体制を整える。 ※ビンズオン省はホーチミン市北部に隣接する主要工業地帯
【再生可能エネルギーへのコミットメント】
VSSESとの協力により、BWバウバン工業団地において、ベトナムの工業用不動産分野で最大規模となる屋根置き型太陽光発電システムを導入する。
・規模と効果: 約24万㎡の屋根面積に30MWpの設備を設置し、年間最大4,050万kWhのクリーン電力を生成する(一般家庭約1万世帯分の年間電力消費に相当)。
・拡張性: BWは今後、保有する約300万㎡の屋根面積を活用し、太陽光発電容量を100MWp超まで拡大する潜在力を有しており、テナント企業のESG目標達成を支援する。 ※ESG目標:環境・社会・企業統治に配慮した経営のための具体的な数値目標
【展望】
BWのランス・リー総局長は、クリーンかつ安定したエネルギーインフラこそが、次世代の工業成長における「絶対的な競争優位性」になると述べている。有力株主(Warburg Pincus(世界的に有名なプライベート・エクイティ・ファンドの)、Becamex IDC、ESRグループ(不動産アセットマネジメント会社))の支援を背景に、BWはベトナム経済のデジタル化とグリーン化を加速させるインフラプロバイダーとしての地位を固める構えである。
2026年3月25日
ホーチミン市は現在、強力なデジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として、大規模な「データクリーン化」キャンペーンを展開している。市はデータを単なる蓄積情報ではなく、国の「戦略的資産」と位置づけ、情報の孤立状態を打破し、共有データ倉庫の構築を目指している。 ホーチミン市デジタルトランスフォーメーションセンター(HCMC-DXCENTER)のヴォ・ティ・チュン・チン所長に詳細を聞いた。
【データ主導の意思決定と行政サービス】
今回のキャンペーンは住民、土地、企業登記の3つの基盤分野に焦点を当てている。
・行政の効率化: データのクリーン化と連結により、住民が何度も書類を提出する手間を省き、教育や都市計画などの分野でデータに基づいた正確な意思決定(エビデンスに基づく政策立案)を可能にする。
・政府の役割変化: 紙ベースの管理からデータガバナンスへと移行し、市民へのサービス品質を向上させる。
【サイバーセキュリティと「能動的防御」】
共有データの集中管理に伴い、サイバーセキュリティが最優先課題となっている。ベトナム共産党事務局が発行した「指令57号(57-CT/TW)」に基づき、市は以下の対策を講じている。
・能動的防御: 事後対応ではなく、システム設計段階からセキュリティを組み込む「セキュリティ・バイ・デザイン」を導入し、リスクを早期に特定・排除する。
・階層管理と権限分離: 各機関が職務に必要なデータのみにアクセスできるよう厳格なアクセス制御を行い、すべての活動ログを監視する。
【今後の展望:国産技術と人材育成】
市は、データセキュリティの自主・自立を掲げ、国内のIT企業(Made in Vietnamソリューション)との連携を強化している。また、データの商用化を見据えたサンドボックス(実証実験)の構築や、デジタルスキルの普及活動を通じて、住民一人ひとりがデータ保護の重要な担い手となるエコシステムの形成を目指している。
2026年3月16日
トー・ラム書記長は、ハイフォン市(ベトナム第4の北部に位置する港湾都市:ハノイ市、ホーチミン市、ダナン市と並ぶ中央直轄都市)の発展計画について、長期的な視点を持つべきであると強調した。2045年までにアジア規模の現代的な工業・サービス港湾都市、そしてスマートで住みやすい「緑の海洋都市」を実現し、2100年までには世界的な競争力を備えた「海洋メガシティ」を構築するというビジョンを示した。
ハイフォン市による特区メカニズム・政策の提案:3月16日午前、トー・ラム書記長率いる中央作業代表団はハイフォン市共産党委員会と協議を行った。
・経済成長: レ・ゴック・チャウ市長は、2025年のGRDP(地域内総生産)成長率が11.81%(全国2位)に達し、11年連続で2桁成長を維持していると報告した。また、地方競争力指数(PCI)や行政改革指数(PAR Index)でも全国トップクラスを維持している。
・主な提案:
市は持続的な成長を確保するため、以下の項目を中央政府に求めた。
‣首相権限である都市計画・機能区計画の承認および調整権限の地方への委譲
‣紅河デルタ地域計画および国家計画の早期承認(国際中継港、海洋経済センター、再生可能エネルギー拠点としての更新を含む)
‣国道10号、17B号、38号、タンブー・ラックフェン線などの主要交通インフラ拡張への資金支援
‣ハノイやホーチミン市に適用されている特有のメカニズムをハイフォン市にも導入するための決議226号の改正(制度的なボトルネックの解消)
長期的ビジョンの策定と国際競争力の強化
トー・ラム書記長は、同市の社会経済発展の成果を高く評価した上で、今後の役割を明確にするよう求めた。
・位置づけ: ハイフォンは北部経済を牽引する成長極であり、ハイテク産業、国際物流(ロジスティクス)、現代的海洋経済の拠点となるべきである。ハノイ、クアンニンと共に「発展の動員三角地帯」を形成することが不可欠である。
・段階的なビジョン:
‣2030年まで: ラックフェン、ナムドソン、ヴァンウック川エリアを統合した現代的な海洋経済空間を構築し、北部のロジスティクス調整センターとなる。
‣2045年まで: アジア規模の工業・サービス都市、およびクリーンエネルギーと海洋科学技術の拠点となる。
‣2100年まで: 東アジアを代表する海洋メガシティへと発展し、気候変動に適応した持続可能な都市モデルを構築する。
最後に書記長は、「人間を開発の中心に据える」という観点を堅持し、成長の成果をすべての市民が享受できる社会を実現する必要があると強調した。また、市からの提案については、実情に即した正当なものであるとの認識を示した。
2026年3月11日
ファム・ミン・チン首相は11日、世界のシルバー経済(高齢者向け経済)の発展とベトナムの適応戦略に関する会議を主宰した。首相は、人口高齢化を「社会保障の負担」ではなく「国家発展の新たな機会」と捉え、包括的なエコシステムを構築する決意を強調した。
1. 世界的潮流と認識の転換
国連の予測によれば、2025年までに世界の高齢人口は12億人に達する。先進国では高齢層が個人消費の5割以上を占めるなど、シルバー経済は外部要因に左右されにくい持続可能な成長エンジンとして浮上している。首相は、ベトナムも従来の「保護・支援」という考え方から、高齢者の知恵と経験を「社会資源」として活用する「発展・創出」の考え方へ抜本的に転換すべきであると指摘した。
2. 現状と課題:制度整備の加速
ベトナムは定年年齢の調整や「世代間自助クラブ」の拡大など一定の成果を上げている。しかし、制度的枠組みの不足や、脆弱な長期ケア体制が家族や国家予算に重い負担を強いている現状がある。首相は、国民が「豊かになる前に老いる」リスクを直視し、高齢化を成長の空間へと変えるための制度改善が急務であると述べた。
3. シルバー経済を支える「三本柱」と「5つの重点行動」
首相は、今後の発展に向けた戦略的枠組みを提示した。
三本柱:
・高齢者: 経験豊富な「供給力」と、高い購買力を持つ「需要の牽引役」としての主体。
・企業: イノベーションとサービス(健康観光、介護技術等)の実践の中心。
・国家: 制度設計と法的インセンティブを整備するアーキテクト。
5つの重点行動: 意識改革、高齢者向け複合施設(ハッピービレッジ等)の構築、民間サービスの振興、高齢者の社会的役割(教育・助言)の促進、高齢者協会の強化。
4. 省庁への具体的指示と期限
戦略を実効化するため、首相は各省庁に対し以下の任務を課した。
保健省: 戦略的ビジョンに基づく「高齢者法(改正案)」の策定および複合医療施設の試行。
財務省: 2026年第2四半期までに「2045年までのシルバー経済戦略」を提出。
外務省: 2027年APECにおける「シルバー経済」関連会議の主催。
公安省・内務省: 高齢者データベースの構築と、再雇用・生活支援メカニズムの検討。
5. 新時代に向けた展望
首相は、高齢化は発展の避けられない趨勢であり、積極的な適応が必要であると断言した。また、高齢者が新時代の国造りを先導する存在であることを期待し、「高齢者が模範を示し、健やかな老後を送り、国家発展の礎となる」という趣旨の24語のモットーを掲げ、全政治システムと社会の総力を挙げた取り組みを呼びかけた。
2026年3月9日
財務省は、燃料供給の多様化と国内市場の安定化を目的として、輸入税率を調整する新たな政令草案を提出した。その要旨は以下の通りである。
政令案の背景と緊急性:中東情勢の緊迫化やホルムズ海峡の封鎖リスクにより、エネルギー価格の乱高下と供給網寸断の懸念が高まっている。これを受け、財務省は簡素化された法的手続きに基づき、燃料および関連原材料の最恵国待遇(MFN)輸入税率を0%に引き下げる政令の制定を提言した。
供給源の多様化と安全保障: 現在、ベトナムの燃料輸入は主にFTA締結国(ASEANや韓国)に依存している。本政令により非FTA諸国からの輸入障壁を取り払うことで、地域的な供給不足が発生した際でも代替調達を容易にし、国家エネルギー安全保障を強化する狙いがある。
具体的な減税対象と経済的影響
・10%→0%: 無鉛ガソリン、燃料調合用成分(ナフサ、リフォーメート等)。
・7%→0%: ディーゼル、重油、航空燃料、灯油。
・3%・2%→0%: キシレン、コンデンセート等の製造用原材料。
本措置により約1兆240億ドンの減収が見込まれるが、マクロ経済の安定と二桁成長の達成を優先する。
適用期間:本政令は署名日から施行され、2026年4月30日まで有効とする。状況に応じた延長の可能性も残されている。
2026年3月5日
ファム・ミン・チン首相は、ホーチミン市とロンタイン国際空港を結ぶ鉄道プロジェクトを「緊急指令」に従って実施することに同意した。本決定は、空港開港に合わせた交通インフラ整備の整合を図ることを目的としている。
【主要事項】
・実施主体の選定: 首相は、ドンナイ省人民委員会に対し、ホーチミン市および交通運輸省と連携してプロジェクトを速やかに展開するよう指示した。
・投資形式と透明性: 投資方式の選定にあたっては、関連規定を遵守し、汚職やネガティブな事象を回避し、国家の利益を最優先することを強調した。
プロジェクト概要:
・名称: Thu Thiem ー Long Thanh鉄道(トゥーティエム ー ロンタイン鉄道)
・規模: 全長約38km(一部資料では約42km)、設計速度80km/h
・投資額: 約40兆5000億ドン(約2,400億円)を上回る見込み
・スケジュール: 2026年6月30日までに着工し、空港の運用開始に合わせた完成を目指す
本鉄道は、既存の高速道路の過密を緩和し、ロンタイン国際空港とベトナム最大の経済都市であるホーチミン市を直結する極めて重要な「背骨」としての役割を担う。政府は、従来の手続きを簡略化し、異例の速さで本プロジェクトを推進する構えである。
2026年3月2日
ベトナムが2026年から2030年にかけて掲げる「高く、持続可能な成長」という目標と、それを実現するために必要な制度改革の主なポイントは、以下の通りである。
・成長モデルの転換
従来の「資本・安価な労働力・資源依存型」の成長モデルから脱却し、科学技術・イノベーション・デジタル化を基盤とする新たな成長モデルへ移行する必要がある。
・制度改革の重要性
法律や規制の改正が頻繁で、かつ重複や不整合が多い現状は、企業が長期的な戦略を策定するうえで大きな障害となっている。これを改善するため、一貫性のある法制度の構築と、より高い透明性の確保が求められる。
・科学技術投資の拡大
2030年までに社会資源の60%以上を科学技術分野に投入することを目標としている。その実現には、企業の研究開発(R&D)投資を促進するための具体的かつ実効性のある政策が不可欠である。
・土地管理と都市計画
土地利用における透明性と公平性を確保し、利益相反や不平等を防止することが重要である。これにより、社会的安定の維持と投資環境の改善が期待される。
・金融市場の安定化
突発的な政策変更を回避し、企業が安心して資金調達を行える安定的な金融環境を整備する必要がある。特に、企業債券市場の健全な発展は、銀行依存型の資金調達構造を是正するうえで重要な鍵となる。
・中小企業支援の強化
経済の大部分を占める中小企業が、資金や技術へより円滑にアクセスできるよう、支援策を一層強化する必要がある。
単なる数値目標としての成長を追求するのではなく、制度改革の深化、科学技術の推進、資源配分の公平性の確保、そして金融市場の整備を通じて、ベトナムが持続可能な発展を実現し、国際的地位のさらなる向上を目指す姿勢が強く打ち出されている。