現金決済でも免税にはならない

2026年9月28日

現金決済や取引の分割、振込名義・内容の変更によっても、事業者の納税義務は変わらない。ハノイの一部店舗では現金払いを求めたり、銀行振込の場合に商品代金とは別に「税金」として追加料金を求めたりする事例が確認されている。

専門家によると、個人・世帯事業者は決済方法にかかわらず、実際の売上を申告し、規定に従って請求書を発行する必要がある。複数口座への分割入金や取引内容の変更も、税務当局によるデータ照合の対象となり得る。

2025年6月1日からは、年商10億ドン以上で消費者向けに商品・サービスを直接提供する対象事業者に、税務当局とデータ連携するレジ発行型電子請求書の利用が拡大された。請求書には商品名、数量、単価、決済額、発行時点などが記録され、売上管理に活用される。

また、商品販売時の請求書発行時点は、代金の受領の有無にかかわらず、商品の所有権・使用権を買い手に移転した時点である。実際の取引額より低い金額を請求書に記載して申告所得を過少計上し、脱税に該当する場合は、追徴課税に加えて脱税行為として処分される可能性がある。請求書を発行しない場合の行政処分も、違反件数に応じて定められている。

現金中心の取引は税務面だけでなく、事業者の売上・資金流入の履歴にも影響する。銀行は信用審査で取引データを活用するため、明確な入出金記録が少ない場合、融資時の売上・資金実態の証明が難しくなる可能性がある。

税務当局は現在、電子請求書、申告売上などのデータ連携とリスク分析を進め、売上の未申告や請求書上の過少計上など、不自然な取引の把握を強化している。

データ安全保障法案、データ主権保護に向け審議

2026年9月25日

ベトナム国会常務委員会は9月23日、データ安全保障法案について審議した。データがデジタル経済・デジタル政府の基盤となる一方、サイバー攻撃やデータの窃取・漏えいなどのリスクが高まっており、政府は統一的な法的枠組みの整備が必要としている。

法案では、データの安全保障リスクを段階的に分類し、リスクに応じて管理する仕組みを導入する。国会側は、既存のサイバーセキュリティ法における情報システムの5段階の安全レベル、データ法の5段階の分類との整合性を確保するよう求めた。

越境データ移転については、国防・安全保障や国家主権に直接関係するデータの国外移転を厳格に管理する方針である。法案ではレベル4のデータは一部で原則として国外移転を禁止し、レベル3のデータは移転を制限するとしているが、データの重要度だけでなく、移転行為そのもののリスクも評価して管理することが提案された。

暗号技術については、公安省が研究・開発する「セキュリティ暗号」を既存の国家機密保護用暗号に代わるものではなく、特定の状況で補完する予備的な暗号技術として位置付ける案が示された。また、量子コンピューターによる暗号解読リスクを踏まえ、2035年までの耐量子暗号への移行計画も盛り込まれている。

法案は、データの収集、処理、保存、利用、共有、廃棄までのライフサイクル全体を対象とし、AIアルゴリズムのガバナンスも規定する方向である。一方、企業の営業秘密や商業データを保護しながら、国家による監視・緊急措置に対する権力統制を確保する必要性も指摘された。

国会常務委員会は、データ安全保障法、サイバーセキュリティ法、データ法、個人データ保護法の適用範囲と優先順位を明確化し、規制の重複を避けるよう求めた。また、企業のコンプライアンスコストを抑えるため、同等の国際的なセキュリティ認証を認める仕組みの検討も求めている。法案は修正後、国会第2会期での審議・採択に向けて提出される予定である。

ベトナム・米国、相互貿易協定の最終合意に接近

2026年9月23日

ベトナムのトー・ラム書記長・国家主席は9月21日、ニューヨークで米通商代表部のジェミソン・グリア代表と会談した。両国の交渉団は相互貿易協定をめぐる協議で大きく前進し、最終的な合意に近づいていると確認された。

トー・ラム氏は、経済、貿易、投資が両国関係の重要な柱であり、企業や国民双方の利益に直結すると指摘した。ベトナムはこれまで、米国製品の購入拡大などを通じて貿易の均衡化に取り組んできた。

グリア代表は、ベトナム側の取り組みを評価し、両国の交渉団が多くの努力を重ね、立場の隔たりを縮小してきたと述べた。

両国は複数回の交渉を行い、2025年10月には「相互的、公正かつ均衡の取れた貿易協定の枠組みに関する共同声明」を発表することで合意した。同声明では、非関税障壁、デジタル貿易、サービス、投資、知的財産、持続可能な発展、サプライチェーンの強靱化などが主要な協議項目として示されている。

2025年の両国の貿易総額は約1,725億ドル(約26兆3,500億円)に達し、ベトナムの対米輸出は1,530億ドル超(約26兆円)、米国からの輸入は193億ドル(約3兆2,900億円)となった。2026年1~8月の貿易総額は1,374億ドル(約22兆1,000億円)に達し、ベトナムの対米輸出は1,220億ドル(約20兆7,000億円)、前年同期比23.2%増、米国からの輸入は154億ドル超(約2兆6,300億円)、同26.8%増となった。

※円換算は、ベトコムバンクの為替レート1 JPY=170.43 VNDを基に算出した。

両国は今後、相互の利益の均衡、対話、情報共有を維持し、貿易関係の安定と長期的な発展を目指す。ベトナムは米企業の国内での生産・事業拡大を促すとともに、米国製品のベトナム市場への参入を引き続き促進する方針である。

原子力発電事業、法整備と人材育成が急務

2026年9月22日

科学技術省のレー・スアン・ディン副大臣は9月21日、カインホア省で開かれた原子力発電に関するセミナーで、ベトナムが原子力発電計画を進めるには、法的枠組みの整備、人材育成、国内の関連産業の発展を早急に進める必要があると述べた。

同副大臣は、原子力発電は安定した電力供給、高い設備利用率、低い炭素排出量という特徴があり、再生可能エネルギーの比率が高まる電力システムを支える役割を持つと説明した。2024年末には国会が、8年間停止していたニントゥアン原子力発電計画の再開方針を決定している。

同氏によると、原子力発電は単なるエネルギー事業や技術選択ではなく、安全保障、人材、インフラ、資金、規制などを含む長期的な国家規模のプログラムである。そのため、国際基準に沿って慎重かつ透明性のある準備を進める必要がある。

現在の最優先課題は、原子力発電所の全ライフサイクルを対象とする法制度、規則、技術基準の整備である。各機関の権限と責任を明確化するとともに、規制当局が審査、許認可、監督を行える専門性と十分な資源を確保することが求められる。

人材育成も重要な課題である。2025年5月に承認された人材育成計画では、2030年までにニントゥアン1号・2号原子力発電所の運営などに必要な約4,000人を確保し、そのうち2,000人以上を大学・大学院レベルとする目標が設定されている。国内外の専門家を活用し、研究機関や大学による独立した技術支援体制を構築することも必要とされる。

また、建設、機械、技術サービスなどのサプライチェーンに国内企業が参加できる環境を整え、国内の原子力関連産業を段階的に形成することも課題となっている。

ニントゥアン1号はベトナム電力公社、2号はベトナム国家産業エネルギーグループ(ペトロベトナム)が投資主体となり、それぞれ2基の原子炉を建設する計画である。カインホア省では用地取得や住民移転への対応が進められており、共用インフラとして道路、港湾、給水、送電、デジタル、医療などの整備も求められている。

セミナーでは、中央政府、地方政府、投資主体の役割分担を明確にし、安全文化の確立、最新技術の導入、国際的な知見の活用を重視すべきだとの意見も示された。

ハノイ、レアアース精製の規制サンドボックスを開始

2026年9月16日

ハノイ市は2026年9月、レアアース酸化物を半工業規模で生産する実証事業を承認した。規制サンドボックス(管理された環境で新技術を試験する制度)を活用し、研究成果の実用性と安全性を検証する。将来は半導体など高度技術産業向け材料の国内供給につなげる方針である。

1.純度95%超の酸化物を試験生産

実施主体は、ベトナムの鉱山建設・技術コンサルティング会社である。ハノイ市ホアラック・ハイテクパーク内の1,000平方メートルの施設で、TREO(総レアアース酸化物)純度95%超の製造技術を試験する。

試験期間は18カ月で、工場改修、試運転、稼働率30%から100%への段階的引き上げ、設備撤去、原状回復の5段階で実施する。設備の約80%は実施企業が自社で対応するとしている。

2.原料と製品利用を厳格に制限

使用できる原鉱石は、ライチャウ省ドンパオ鉱山から合法的に調達する最大100トンである。処理能力は1時間当たり100キログラム、運営人員は化学物質・放射線安全などの研修を受けた35人である。

試験で得た製品は分析、検査、技術改良にのみ使用でき、販売、流通、譲渡は禁止される。現地での採掘や恒久的な工業施設の建設も認められない。

3.排水・排ガス処理を検証

企業側によると、初期設備費の約50%を排ガス処理と閉鎖循環型の排水処理システムに充てる。湿式製錬工程では水の80%超を再利用し、重晶石、蛍石、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムなどの副産物も回収する計画である。

実証では、製品純度だけでなく、回収率、設備の安定性、化学物質・放射線安全、廃棄物、環境基準への適合性を確認する。

4.実証データを制度整備に活用

設備設置と原料搬入後、最初の精製品は6~7カ月後に生産する見通しである。その後、研究チームは軽レアアースの分離技術を改良する計画である。

レアアースは電子、エネルギー、防衛、スマート機器などに使われる。今回の実証結果は、商業化の可否を直ちに決めるものではないが、深加工技術の評価と、関連する政策、技術基準、安全・環境管理手順の整備に用いられる。

ベトナム、外資企業の上場促進で投資資金の循環へ

2026年9月14日

ベトナムでは外国直接投資(FDI)が経済や輸出を支える一方、外資企業の株式市場参加は限定的である。質の高い外資企業の上場を促し、既存投資を新たな生産投資へ循環させる仕組みが課題となっている。

1.上場外資企業は約10社

ベトナム国家証券委員会によると、上場・取引登録企業約1,600社のうち、外資企業は約10社にとどまる。2025年末の資本金合計は12兆6,290億ドンで、市場全体の0.15%にすぎない。直近の新規上場も2017年であり、その後約10年間、新たな外資企業の上場はない。

2.投資許可時の条件が障壁

外資企業は上場前に、投資優遇と引き換えに約束したインフラ整備、事業継続期間、株式譲渡制限などの履行状況を確認する必要がある。さらに、資本・株主構成の変更、税制優遇期間の納税義務、外国為替、複層的な所有構造など、投資法、企業法、証券法にまたがる問題が生じる。

2025年施行の政令により、新規株式公開(IPO)と上場申請の同時処理や、承認後の取引開始期間の短縮が可能になった。しかし、証券手続き以外は複数機関との個別調整が必要で、判断基準や所要期間の不確実性が残る。

3.市場高度化とFDI政策の転換

FTSE Russellは、ベトナム株式市場を2026年9月21日から「フロンティア市場」から「第2次新興市場」へ格上げし、2027年9月まで段階的に移行する予定である。一方、IPO市場の回復は一部企業に限られている。

政府のFDI政策も、投資額の量的拡大から、生産性向上や国内経済への波及効果を重視する方向へ移っている。

4.上場で三つの資金効果

外資企業が上場すれば、企業は増産向けの自己資本を調達できる。創業投資家は一部資金を回収して別事業へ再投資でき、株式市場には実体経済を反映する企業が加わる。

必要なのは上場基準の緩和ではなく、共通手順、事前相談制度、明確な回答期限を整備し、手続きの予見可能性を高めることである。半導体、人工知能、データセンター、エネルギーなど長期資金を要する産業では、銀行融資に加え、資本市場を通じてFDIを次の投資へ循環させる仕組みが重要となる。

ベトナム政府、電子・半導体部品の国産化を促進

2026年9月9日

ベトナム政府は、電子・半導体産業の輸出拡大に伴う部品輸入の急増を受け、国内サプライチェーンの強化に乗り出す。ファム・ザー・トゥック副首相は、裾野産業の育成と行政手続きの改善を関係省庁に指示した。

1.電子関連の貿易赤字600億ドル

2026年1~8月のコンピューター、電子製品、携帯電話・部品の輸出額は、前年同期比51%増の推定1,010億ドルであった。携帯電話部品の輸出は約120億ドルとなり、最終組立から部品製造への移行が進んでいる。

一方、コンピューター、電子製品・部品の輸入額は68%増の1,610億ドルに達し、貿易赤字は約600億ドルとなった。輸入品の中心は、集積回路、メモリー、プロセッサー、ディスプレー、プリント基板などの生産用部材である。

2.国内部品産業の育成を要請

会合では、裾野産業の未発達が電子産業の主要課題として指摘された。ベトナムは世界的なFDIシフトやAIインフラ需要拡大の恩恵を受ける一方、国内企業は輸入部材への依存度が高い。業界側は投資優遇策の強化や裾野産業関連規制の見直しとともに、「2026〜2035年裾野産業発展プログラム」の実施により現地調達率を高め、輸入依存を減らすよう求めた。

ベトナム電子産業協会のグエン・バン・ドン会長は、プリント基板、基板実装、精密加工、ケーブル、コネクター、センサーなどを供給する国内企業の育成策を提案した。

同協会は、外資系企業が調達需要や技術基準、取引先の選定手順を共有し、ベトナム企業の国際サプライチェーン参加を支援する必要があるとした。

3.優遇制度と輸入手続きに課題

Intel Products Vietnamの代表者は、投資優遇措置が複数の法律に分散し、利用しにくいと指摘した。統一的な運用指針と、電子・半導体産業に対応できる国内供給業者のデータベース整備を求めた。

Hanyang Digitech Vinaの代表者は、品質、安全性、省エネ、環境基準を満たすことを条件に、同一企業グループ内で移管する中古生産設備の輸入手続き簡素化を要請した。

4.国産化と調達先分散を推進

トゥック副首相は、国内需要が大きく、国産化の可能性が高い部品・材料を優先対象とするよう指示した。政府は国内供給業者と国内外の電子・半導体企業を結ぶ事業も整備する。

併せて、通関手続きのデジタル化、自由貿易協定の活用、輸出市場と生産資材の調達先の分散を進める方針である。

ベトナム、生産性と技術を軸に経済構造転換へ

2026年9月3日

ベトナムは2045年の高所得国入りに向け、安価な労働力と外資に依存する成長から、生産性、技術、イノベーションを重視する経済への転換が課題である。世界的な供給網再編とデジタル化、脱炭素化がその機会となる。

1.生産規模の拡大から高付加価値化へ

2025年の国内総生産は8.02%増、貿易総額は前年比18.2%増の約9,300億7,000万ドル(約144兆円)となった。一方、外資系企業が輸出の約70%を占め、国内企業は組立や低付加価値の部品生産に偏る。 ※円換算額は、べトコムバンクの2026年9月3日の提示売却レート(1ドル=26,270ドン、1円=169.64ドン)に基づく概算である。

中国以外にも生産拠点を分散する動きや、人工知能(AI)の普及、欧州連合の炭素国境調整メカニズムへの対応を踏まえ、研究・設計を含む生産の高度化が求められる。

2.国内企業の競争力を強化

記事は、外資誘致の成果を投資額や案件数だけでなく、現地調達率、技術移転、生産性、国内企業の国際供給網への参加で評価すべきだと提言する。

多国籍企業と国内供給業者の連携を強め、半導体、AI、ロボット、バイオ技術、先端素材などの産業育成につなげる考えである。

3.デジタル化と脱炭素化を推進

クラウド、データ基盤、サイバーセキュリティ、人材への継続投資が必要である。AI活用が大企業に集中すれば、生産性格差が広がるため、中小企業への普及も重要となる。

2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ目標に向けた再生可能エネルギーや循環経済の発展は、新産業の育成と欧米市場への輸出維持を支える。

4.人材育成と制度改革が基盤

人口構成上の優位性の縮小を見据え、大学改革、産学連携、海外のベトナム人人材の活用が必要である。透明で予見可能な法制度と行政のデジタル化も、投資家の信頼と資源配分の効率を左右する。

記事が示す優先課題は、生産性・革新重視の政策評価、戦略技術の育成、民間企業の資金調達・知的財産保護、行政運営の改善、教育・生涯学習・社会保障への投資の五つである。

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