2026年7月28日
ベトナム政府は、農業・環境分野の行政手続きおよび事業条件を削減・簡素化する「10関連法改正案」を8月初旬の国会臨時会へ提出する。38の行政手続き削減、13の手続き簡素化、40の事業条件削減を柱とし、2024年比で計904日の手続き期間短縮と約1,899億ドン(約11.45億円 )のコンプライアンスコスト削減を見込む。
1. 規制緩和と地方分権の主な内容
本草案は、植物保護・検疫法、種苗法、畜産法、獣医法、水産法、水利法、堤防法、水資源法、気象水文法(国家的な気象・水象観測と防災に関する基本法)、地質・鉱物法の10法を対象とする。
・事前審査から事後点検への移行: 農薬登録証の有効期間を5年から10年へ延長し、家畜種苗の輸入管理を事前審査から事後点検へ移行する。種苗の流通における事業者・個人の自主公表を容認し、漁船の新造・改造施設に関する規制を廃止する。
・地方への大幅な権限委譲: 希少家畜遺伝資源の国際交換承認、獣医薬(ワクチン含む)製造適合証明の発行、鉱山閉鎖計画の承認などの権限を中央省庁から省級人民委員会へ移管する。河川敷プロジェクトの治水・堤防安全承認も省級人民委員会主席へ委任される。
2. 国会・専門委員会からの指摘と実務上の課題
国会常務委員会および専門委員会は改革の方針を高く評価しつつも、以下の実務リスクに注意を促している。
・国際基準との整合性: GMP/GMP-WHO基準(医薬品の製造・品質管理に関する国際基準)を満たす獣医薬製造施設の認定権限を地方へ移管することについて、WHO等の国際機関は一元的な国家管理体制のみを承認するため、輸出の技術的障害となる懸念が指摘された。また、戦略鉱産の分権化による資源流出リスクの評価も求められている。
・地方の執行能力と負担: 事後点検への移行に伴い、地方の監察・検査体制への負担が増大する。QRコード等を活用した自動追跡システムと予算の確保が不可欠とされる。
・独自規制発生の防止: 全国統一の技術基準が未整備のまま分権が進むと、自治体ごとに基準の解釈が異なり、独自の許認可が創出されるリスクがある。法律施行の少なくとも3ヶ月前までに中央省庁が技術基準を公布することが提案された。
国会常務委員会は、本法案を簡易手続きにて審議・可決することに同意した。政府は指導政令の策定段階において、地方の実行能力に応じたリソース配分を行い、国際条約との整合性を確保しながら投資環境の改善を目指す方針である。
※ベトコムバンク2026年7月28日の公表レート「1 JPY = 166.01 VND」に基づいて換算
2026年7月26日
ベトナム政府は、国会に対し「ハノイ首都圏第5環状道路建設プロジェクト」の投資方針承認を求める提案書(第442/TTr-CP号)を提出した。本プロジェクトは、ハノイ市を含む7省市を通過する全長約349kmの完全6車線高速道路整備計画であり、概算総投資額は約288兆2,680億ドン(約1兆7,364億円)に達する。2030年までの部分完成・2031年供用開始、2035年までの全線完成を目指す。
1. プロジェクトの全体概要と資金構造
本道路は、ハノイ市イエンバイ地区を起終点とし、ハノイ市、ニンビン省、フンイエン省、ハイフォン市、バクニン省、タイグエン省、フート省の7地方自治体を接続する。
● 事業規模と用地: 計画規格は6車線の高速道路であり、概算用地需要は約4,010.6haである。
● 資金調達と役割分担: 公共投資方式を基本とする。中央政府予算は高速道路本線の用地徴用および建設に充てられ、地方政府予算は併設道路、緑化帯、歩道の整備および用地徴用を担う。
2. 企業立ち退き支援策
政府はプロジェクトの迅速な推進に向け、10の特例政策の適用を要求している。このうち8項目は過去の国家重要案件で適用実績のあるものであり、特に注目される新規の2政策の概要は以下の通りである。
● 企業向け用地補償の特例(第9の政策): 用地回収により操業継続が困難となった製造企業に対し、移転先工業用地の用地徴用およびインフラ整備を地方自治体が実施し、その費用を本プロジェクトの補償・再定住コンポーネントに計上することを認める。
● 投資形態変更の柔軟化(第10の政策): 公共投資として承認された後も、建設省大臣または省級人民委員会主席の決定により、国会への再承認手続きを経ることなく官民連携方式への変更・民間資金動員を可能とする。
3. 段階的投資シナリオと優先整備区間
建設準備に約3年、施工に2〜3年を要することを見込み、政府は2つの段階的投資プランを比較検討した。
● 案1/区間別優先投資案(政府推奨): 2026〜2030年の期間において、中央予算(約59兆7,000億ドン/ 約3,596億円)を優先度の高い東部区間(タイハ橋〜バクザン・ランソン高速JCT間、約116km、事業費約77兆ドン/ 約4,638億円)の完全6車線化建設に集中投入する。早期供用による投資効果が見込めるため、政府はこちらの案を推奨している。
● 案2/項目別優先投資案: 2026〜2030年に全線の用地徴用(約49兆8,510億ドン)を先行完了させる案だが、道路が早期に形成されず土地の空き地化や資金の非効率化を招くリスクが指摘された。
4. 今後のスケジュール
2026年の投資主張承認、2026〜2027年の実現可能性調査承認および用地回収を経て、2027年末の着工、2030年の東部区間完成・2031年供用開始を目指す。残る区間については2031〜2035年に資金調達を行い、2035年までに全線の環状線を完成させる計画である。
※2026年7月23日時点のレートで換算
(1 JPY = 166.01 VND、1 USD = 26,520 VND)
2026年7月21日
ホーチミン市人民委員会のグエン・ヴァン・ドゥオク主席は、都市部の交通渋滞緩和と持続可能な環境保全を目的として、市内中心部に位置する港湾群の移転ロードマップおよび具体策の検討を建設局に指示した。本施策は、同市が長年進めてきた「港湾エリアの空間再定義」の一環であり、エネルギーインフラ整備や水上不法占有住宅の移転など、都市再開発政策とあわせて推進される。
1. 中心部港湾の移転ロードマップと空間再定義
都市部の物流集中による渋滞を回避するため、港湾機能の段階的な郊外移転と再開発が進められている。
● 移転の主導体制: 市建設局が主導し、ベトナム建設省と連携して中心部からの港湾移転に向けた適切なロードマップを策定する。
● 既存港湾の機能転換: ニャーロン・カンホイ港エリアなどでは、すでに商業物流機能からの転換が進められている。同跡地は、公園や公共スペース、サービス施設、ホー・チ・ミン博物館の拡張用地として再開発される。
● 貨物拠点の集約: 今後の貨物取扱・物流機能は、ヒエップフオック、カットライ、およびカイメップ・チーバイ大水深港群などの郊外・隣接拠点へ集約・移行する。
2. エネルギーインフラおよび都市再開発支援の並行推進
港湾移転に加え、同市はエネルギーおよび都市環境の基盤強化策を同時に取りまとめている。
● エネルギーインフラ整備: 市商工局は、都市開発法案への盛り込みに向けたエネルギーインフラ特有の政策を検討する。また、第8次国家電力開発計画の調整に伴う風力発電プロジェクトの追加・発電容量の増強や、ロンソン地区における「エネルギー備蓄センター」建設案(8月取りまとめ予定)を進めるとともに、投資家の誘致を支援する。
● 水辺環境の改善と中央資金申請: 財務局および農林環境局は、河川・運河沿いの不法住宅移転および都市整備事業に関し、中央政府予算からの資金支援を財務省・農林環境省へ要請する。
● 国有資産の整理: 中央政府機関が同市内で管理・所有する土地・不動産施設について、首相指示に基づいた再配置・適正処理を推進する。
2026年7月21日
技術移転法を細則化するベトナム政府政令第101号(101/2026/ND-CP)において、規制対象となる技術の名称に「Euro4」や「Euro5」といった製品の「排気ガス基準」が使用されている。これに対し、ベトナム自動車製造業者協会、ベトナム二輪車製造業者協会、および国内メーカーの専門家から、製品の品質基準と製造技術そのものが混同されており、法的な不透明感から技術移転や事業展開に著しい支障をきたすとの懸念が相次いでいる。
1. 規制における混同と技術的差異
政令101号の附録II(譲渡制限技術)および附録III(譲渡禁止技術)では、Euro4/Euro5相当の排気ガス基準を満たす自動車・二輪車・エンジン等の製造・組み立て技術が指定されている。しかし専門家らは、排気ガス基準は最終製品に対する環境要求であり、製造技術そのものを指すものではないと指摘する。
● 排気ガス基準の定義: Euro3〜6はEUが定めた排出ガス(CO、NOx、PM等)の上限値(製品のアウトプット)であり、製造ライン、ノウハウ、個別技術を記述したものではない。これは「5つ星安全基準」を自動車の製造技術と呼ぶのが不適切であるのと同様である。
● 構造の複雑性と技術の多角性: 自動車(約2.5万〜3万部品)や二輪車(約3,000〜5,000部品)は、多数の専門サプライヤーによる多様な技術の集合体である。排気ガス基準の達成は、燃焼最適化、高圧燃料噴射、EGR/SCRなどの技術の「統合・チューニング」によるものであり、「Euro5製造技術」という単一の技術取引は存在しない。既存ラインのジグ変更や高規格エンジンの採用のみで対応できるケースも多い。
2. あいまいな記述がもたらす実務上の法的リスク
実務においては単一の「Euro5技術移転」ではなく、個別技術のアップデートが継続的に行われるため、規定のあいまいさが査定現場での不透明感を生んでいる。
● 行政手続きの二重化: ECUソフトウェアの更新や触媒の変更といった通常の改定であっても、当局から「Euro5技術の移転」とみなされる恐れがある。結果として、技術移転の許可申請と製品の排気ガス適合認証という、同一目的のための「二重の手続き」を強いられる。
● 予見可能性の欠如と投資減退: 法的境界線が不明確な場合、企業は新規プロジェクトや技術導入を躊躇・遅延させ、技術の現地化ではなく完成車・ユニットの輸入へ切り替えるリスクがある。これは国内裾野産業の育成方針と逆行する。
3. 技術管理と製品管理の「二元分離」に向けた提言
業界団体および専門家は、政令101/2026/ND-CPの改訂において、管理軸を「技術」と「製品」で明確に切り分けることを強く求めている。
● 技術評価の適正化: 技術移転の制限・禁止は、製品の排出ガス基準ではなく、設備の耐用年数、自動化レベル、エネルギー消費効率、精度制御力、次世代への拡張性といった「技術・設備の客観的性能」に基づいて判定すべきである。
● 製品管理の既存枠組み活用: 流通する車両の環境適合性については、登録総局傘下の原動機付道路交通手段排気ガス試験センター等による現行の型式指定・品質認証制度で管理すれば十分である。
2026年7月15日
トー・ラム総書記兼国家主席は、国家海洋産業の発展に関する会議を主宰し、ベトナムを海洋強国とするための基本方針を示した。同氏は、造船および海運・港湾・物流を一体としたエコシステム思考による開発を強調し、安易な政府補助金の復活や乱開発を否定しつつ、戦略的な自主能力の向上と厳格な実行規律を求めた。
1. 基本理念:戦略的自立とエコシステム型開発
海洋産業を国家の安全保障および経済の根幹と位置づけ、以下の原則に沿って再構築する。
● 自主能力の維持: 船舶の設計・新造・修理・改造や技術支援を自国で担える中核的能力を維持し、サプライチェーンの分断や市場変動などの緊急事態に主体的に対応できる体制を整える。
● 体系的な開発: 個別の工場や地方単位での乱開発を避け、船隊、内陸水路、港湾、物流、関連産業、およびライフサイクル全体のサービスを連結した一つのエコシステムとして育成する。
● 開発を主導する政府の役割: 国家は制度整備と市場設計に専念し、企業自身が自己責任のもとで競争する。非効率な運営を政策で隠蔽したり、かつての「抱え込み・補助金」体制へ逆行したりすることは許されない。
2. 短期的な最優先課題と市場の開放
足元のボトルネックを解消し、既存の産業リソースを最大限に活用するため、以下の具体的措置を講じる。
● 国家プログラムの策定: 政府党委員会に対し、2035年までの国家海洋産業および海洋工学発展プログラム(2050年ビジョン)の速やかな策定を指示。
● 包括的な実態調査の実施: 業界全体の能力を網羅的に再評価し、維持・アップグレード・転換・処理すべき資産や技術データを明確に分類する。
● 専用の金融メカニズムの構築: 長期・高リスクという造船業の特性に適合した財務・与信・保証制度を創設する。ただし、赤字補填や新たな不良債権の創出、過去の不正行為の追認は厳禁とする。
● グリーン改造とライフサイクルサービス: 短期的には、環境基準への適合に向けた船舶のグリーン改造や修理・メンテナンスを重点分野とし、キャッシュフローの確保と熟練技術者の流出防止を図る。
3. 中長期的な目標:近代的かつ持続可能な海洋産業エコシステム
単なる生産能力の維持から、国際競争力を持つ先進的な船隊、港湾、物流、関連産業を一体化したエコシステムへの転換を図る。
● 軍民両用技術の応用: 防衛産業における造船・海洋工学技術を、適切にコントロールしながら民間の商業分野へ波及・応用させる。
● 地域特性に応じたクラスター形成: 地域の強みを活かし、専門化された海洋産業クラスターを全国的なネットワークと接続する形で整備する。
● 外資誘致の刷新: 単なる投資誘致から、技術移転、現地サプライヤーの育成、および高度人材の育成に寄与する連携モデルへと移行する。
2026年7月14日
2026年7月14日、ベトナム財務省のグエン・ドゥック・チー次官率いる代表団は東京で日本の金融庁および証券取引等監視委員会と会談した。本会合は、ベトナム「改正証券法案」の起草に向け、日本の証券市場管理や新商品開発の知見を吸収することを目的に行われた。
1. ベトナム証券市場の現状と市場昇格目標
・市場の成長: ベトナムの株式時価総額はGDP比80%を超え、重要な中長期の資金調達チャネルとして定着している。
・新興市場への昇格: 現在、FTSE(英国の株価指数・市場分類会社)によるフロンティア市場から「新興国市場(エマージング・マーケット)」への格上審査を進めており、外資誘致に向けた法整備を急いでいる。
2. 日本の「サンドボックス制度(新たな金融商品・サービスを試験的に実証できる制度)」と人材育成の知見
ベトナム側は、新商品・サービスの導入を視野に、日本の先進的な監督・試験制度に関心を示した。
● 金融庁の対応と提言: 金融庁の岡田大・政策立案担当副長官は、投資家保護と金融システムの安定・安全確保を最優先としつつ、金融イノベーションを促進する日本のサンドボックス制度について説明した。
● 伴走型の支援体制: 日本のサンドボックス制度下では、実験プロジェクトであっても現行法の枠組みを遵守する必要があり、規制当局は事業のアイデア構築段階からガイダンスや支援を提供し、企業に伴走する役割を果たす。
● 高度人材の育成: 専門知識と高い倫理観を備え、投資家の信頼を獲得できる人材を育成するためには、規制当局、金融機関、および民間セクターが長期にわたり緊密に連携する必要があることが共有された。
3. 高度技術に関わる協議
会合の後半および同日の別日程では、最新技術の規制や市場インフラに焦点を当てた具体的な議論が行われた。
● 高度技術・アセットへのアプローチ: 双方の専門家は、サンドボックスの法的根拠や成功モデルの法制化プロセスに加え、AIやデジタル資産を活用した金融サービスへの規制、アルゴリズム取引の監視メカニズムについて意見を交わした。
● 関連機関との連携: ベトナム代表団は同日、日本取引所グループを訪れ、アルゴリズムやAIなどの新技術を用いた取引監視規則や電子取引インフラの構築について協議した。また、日本証券業協会とも会合を持ち、証券専門職の能力向上、証券会社によるサービスの多様化、および顧客向け新技術の応用に関する管理政策について議論を重ねた。
2026年7月13日
ベトナム建設省は、改正住宅法案の最新草案において、分譲マンションの使用期限を設計図書および権限のある機関による実態調査の評価結果に基づいて確定する方針を提案した。この提案は、ハノイ市やホーチミン市における数千棟規模の老朽化マンションの建て替え促進を目指すものであるが、専門家からは住民の権利保障や土地使用期限との整合性を巡り、多様な意見が出されている。
1. 建設省によるマンション使用期限に関する提案内容
提出された改正住宅法案の第88条に基づき、マンションの使用期限は以下の仕組みで管理される方針である。
● 使用期限の決定: マンションの使用期限は「設計上の耐用年数」に基づき決定され、権限のある機関による最終査定文書に明記される。期限の起算日は、竣工検査が完了し、使用が開始された時点とする。
● 安全性検査の実施: 設計上の使用期限に達した場合、または期限前であっても災害・火災や構造的な破損・傾き等により崩壊の危険がある場合、省級人民委員会は品質評価・安全検査を指示しなければならない。 ※省級人民委員会:省または中央直轄市の行政当局
● 強制解体と住民の再居住権: 危険性が確認されたマンションは強制解体となる。解体後の土地が住宅開発計画に適合している場合は「現地での再居住」が認められ、住宅建設が不許可のエリアである場合は、金銭補償または近隣地域での代替再居住地が手配される。
2. 専門家が指摘する課題と代替案
本提案に対し、業界の専門家からは実務上の観点から懸念と提言がなされている。
● 設計寿命と実質寿命の乖離: ホーチミン市不動産協会のレ・ホアン・チャウ会長は、設計寿命を基準として一律に義務付けるべきではないと主張する。同氏は、1996年に一級建築物として建設されながら、わずか30年で傾斜や亀裂が生じて全住民が避難を余儀なくされたホーチミン市内のマンションを例に挙げ、「設計寿命と実態が必ずしも一致しない」と指摘した。その上で、建設用地の使用期限とマンションの使用期限を紐づける方式への転換を推奨している。
● 老朽化対策への期待と再居住の保証: ベトナム不動産協会のグエン・ヴァン・ディン副会長は、建設省によるマンション使用期限の見直し提案が数千棟にのぼる既存の老朽化マンション改修に向けたボトルネックを解消する一助になると評価する一方、住民への速やかな代替再居住地の確保・制度設計の整備が不可欠であると強調している。
2026年7月11日
ベトナムの不動産市場において、日本、シンガポール、マレーシアなどの外国企業による投資や地元デベロッパーとの共同開発が活発化している。市場の淘汰が進む中、ベトナム企業の用地確保能力・市場理解力と、外資の資金力・プロジェクト管理能力を組み合わせた提携が主流となっている。新土地法などの法整備による透明性の向上が、さらなる資金流入を後押ししている。
1. 相次ぐ外資による大型案件と資本提携
多くのアジア系デベロッパーやファンドが、数十億米ドル規模の投資を相次いで実行している。
● 日越共同開発の進展: 日本の大和ハウスグループ傘下のコスモスイニシア、桧家グループ、コテラスパートナーズの日本企業がベトナムのTTCapitalと合弁を組み、ホーチミン市南部で総投資額2兆ドン超(約123億円超)、1,400戸規模の分譲マンションプロジェクト「TT Genesis」を展開する。また、西日本鉄道(西鉄)はナムロン・グループの既存子会社株式49%を取得し、2035年までに低中所得者向け住宅を中心に22,000戸を供給する計画を発表した。このほか、ファットダット不動産とロッテの提携も進んでいる。
● シンガポール勢の動向: ケッペル・ランドはカンディエンの2つのプロジェクトに49%出資し、戸建てや高層マンションを共同開発する。カピタランドはベカメックスIDCからビンズオン省の都市開発プロジェクトの一部を約5億3,300万米ドル(約853億円)で買収し、将来的にベトナム国内の資産価値を50億〜70億米ドル規模へ引き上げる方針を掲げている。
● マレーシア・米国勢の参入: ガムダ・ランドはこれまでに総投資額50億米ドル(約8,000億円)を超える6つの大型案件を成立させた。UOAグループは6,800万米ドル(約109億円)でホーチミン市内の好立地を買い取り、米国のトランプ・オーガニゼーションもKBCと提携してフンイエン省での高級ゴルフ場複合施設の開発に着手した。
2. 外資誘致の背景と好まれるセグメント
外資がベトナム市場を選好する背景には、構造的な強みと法改正の恩恵がある。
● 優位性と優先領域: 政治の安定性、高い経済成長率、実需層による旺盛な住宅需要が評価されている。投資対象としては、実需向けの中級マンションや、産業用不動産など、持続可能な長期成長が見込める分野が優先されている。
● 法整備による後押し: サヴィルズ・ベトナムによると、改正土地法、住宅法、不動産事業法の整備が進んだここ2年間でM&A活動が加速しており、法的な不確実性が解消されたことが投資家の安心感につながっている。
3. 市場への影響とベトナム企業への提言
外資の本格参入は市場の基準を引き上げる一方、国内企業に財務改善を迫る契機となっている。
● 市場の二極化と淘汰: 資本力があり適切に投資された大型プロジェクトが生活水準を向上させる一方、財務基盤の弱い地場中小企業に対する淘汰圧力が強まっている。
● M&A成功に向けた提言: 専門家は、ベトナム企業が外資を呼び込むための必須条件として、①法的手続きの完了、②国際基準に準拠した資産査定(評価)、③柔軟な取引構造の設計、④国際監査を通じた財務の透明性とコーポレート・ガバナンス(企業統治)の確立、の4点を挙げている。