ベトナム、休眠企業の解散に高額負担

2026年9月2日

ベトナムでは会社設立に300万~500万ドン程度で済む一方、長年休眠状態にある企業の解散費用が1億ドン近くに達する事例がある。税務上の未処理事項と複雑な手続きが主な要因である。

1.休業中も義務が累積

休業期間の延長手続きを行わず、申告などを放置した企業では、税務上の負担が積み上がる場合がある。

ハノイのある企業は2019~2020年ごろから売上や請求書の発行がないものの、解散費用は7,500万~1億ドンと見積もられた。会計サービス費3,500万ドンに加え、事業ライセンス料の追徴や申告遅延の罰金などが3,000万~4,000万ドンに上るという。

2.過去の書類確認が障壁

弁護士によると、取引や未納税が少ない小規模企業でも、義務を履行したことを証明するため、多くの書類を準備する必要がある。長期休眠企業では過去の資料収集や照合が難しく、解散手続きが滞りやすい。

3.手続き簡素化を提案

弁護士らは、関係機関が期限内に税務・財務上の義務を確定する仕組みを提案している。確定できない場合は自己申告を基に手続きを進め、後日判明した義務は所有者が負担する案である。

支払い能力のない長期休眠企業について、追徴や罰金を免除する特例を求める意見もある。いずれも提案段階であり、企業の退出促進と登録情報の整理が目的である。

フンイエン省、ベトナムの新たな産業集積地を目指す

2026年8月28日

ベトナム北部のフンイエン省は、大規模な工業団地計画、物流網、高度人材へのアクセスを基盤に、ハイテク産業と高付加価値型の外国直接投資(FDI)の誘致を進めている。

1.国内最大規模の工業用地を計画

省計画では、計9,588.63ヘクタールの工業団地30カ所を整備し、2030年以降にさらに5カ所、2,460ヘクタールを追加する方針である。

2021~2030年(2050年までのビジョンを含む)の省・市計画案によると、将来の工業用地は計1万5,798ヘクタールで、全国最大となる見通しである。計画が実施されれば、生産拠点の拡大と国際的なサプライチェーンへの参入が進む可能性がある。

2.物流、人材、投資選別が基盤

フンイエン省はハノイ南東部に位置し、ハノイ―ハイフォン高速道路、国道5号線、環状4号線を通じて、ラックフェン国際港やノイバイ国際空港へ接続できる。

また、低廉な労働力への依存から脱却し、半導体、ハイテク、精密製造などを優先する方針である。行政手続きの改善、ESG(環境・社会・企業統治)基準の導入、自由経済区構想も進めている。

ハノイに近いため、地元の技術労働者に加え、専門家や技術者を確保しやすい点も特徴である。

3.工業団地は複合型へ移行

新規工業団地では、賃貸用地、完成済み工場、倉庫、保税倉庫などを一体的に整備する動きがある。専門家・労働者向け住宅、サービス施設、緑地などを併設し、企業の操業と人材定着を支援する構想である。

今後の競争力は、工業用地の規模だけでなく、交通インフラ、環境対応、人材供給、運営効率を備えた持続可能な生産環境を構築できるかに左右される。

ベトナム、9月から経済分野の新制度を施行

2026年8月26日

ベトナムでは2026年9月、暗号資産、外国貿易、賃金、税制、商品取引、工業クラスター、外国為替などに関する新規定が順次施行される。企業には新規定への対応と業務手続きの見直しが求められる。

1.暗号資産市場の違反処分

9月1日から、暗号資産口座情報の違法な収集・売買などに対し、組織には最大2億ドン(約118万円)、個人には最大1億ドン(約59万円)の罰金を科す。顧客確認やマネーロンダリング対策の不備も処分対象となり、営業停止、免許取消、違法利益の返還を命じる場合がある。

2.外国貿易手続きの改正

9月5日から、一時輸入・再輸出、通過貨物、外国企業向け委託加工などの規定を改める。一部の許可権限を省級人民委員会へ移管し、有効な申請書類の受理後5営業日以内に審査する。

3.賃金違反への罰則強化

9月10日から、賃金の遅配、未払い、不足払いに対し、企業には最大1億ドン(約59万円)の罰金を科す。最低賃金を下回る場合は最大1億5,000万ドン(約89万円)となる。企業は不足額と遅延利息も支払わなければならない。

4.税務文書と商品取引制度を整理

9月12日から、現行法と重複する税務関連の通達22件と決定3件を廃止する。9月15日からは、商品取引所の最低資本金を1兆5,000億ドン(約89億円)、外国投資家の出資比率を49%以下とする。

5.工業クラスター管理を改正

9月15日から、工業クラスターの面積を5~75ヘクタールとし、ハイテク型や環境配慮型などを制度化する。設立・拡張の審査期間は20営業日に短縮される。                                  ※工業クラスター:中小企業向けの小規模産業用地で、省級政府が管理する制度

6.外国為替・行政処分を明確化

9月19日から、外国金融機関はベトナム国内の口座を利用し、書面合意に基づく国際決済や送金を行える。銀行には証憑確認やマネーロンダリング対策が求められる。9月26日からは、税関、警察、専門監査機関などの行政処分権限も明確化される。

※2026年8月26日のベトコムバンクの売却レート(1円=169.23ドン)に基づく概算である。

ベトナム、蓄電池と送電網の高度化でエネルギー転換を加速

2026年8月24日

ベトナム電力局と国際エネルギー団体は、再生可能エネルギーの導入拡大、電力網の近代化、技術力強化に向けた協力覚書を締結した。急増する電力需要に対応し、安定供給と2050年のネットゼロ達成を両立させる方針である。

1.過去最高の電力需要と送電制約

2026年6月末の猛暑時、全国の最大電力需要は5万8,000MWを超えた。冷房需要の急増で送電網への負荷が高まる一方、送電容量の不足により、日中には太陽光・風力発電の出力制御が発生し、夕方の需要ピーク時には供給力が不足するという課題がある。

2.2030年までに蓄電容量16.3GWを目指す

両者は、技術協力、調査研究、人材育成、知識共有を進める。重点分野は以下の通りである。
・蓄電池システム(BESS:Battery Energy Storage System)の導入促進
・送電網の近代化・デジタル化
・再生可能エネルギーの系統統合
・直接電力購入契約の運用基盤整備
・公正で包括的なエネルギー転換
電力開発計画に基づき、2030年までにBESSを最大16.3GWへ拡大する。日中の余剰電力を蓄え、需要ピーク時に供給することで、出力制御と系統混雑を抑える狙いである。

3.AIで電力網の運用を最適化

人工知能(AI)を用いて電力需要をリアルタイムで予測し、蓄電池の充放電や送電配分を最適化する。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、AIは再生可能エネルギーの予測誤差を最大45%削減し、系統障害の継続時間を30~50%短縮できる。今後は制度整備と技術導入を並行して進め、電力供給の安定性とエネルギー安全保障を強化する必要がある。

海外就労契約終了後の不法滞在、最大1億ドンの罰金

2026年8月21日

ベトナム人海外労働者は40以上の国・地域で約86万人に上り、日本、台湾、韓国が主要な受け入れ先である。
・一般労働者または短期訓練修了者:全体の85~90%
・専門技術を持つ労働者:10~15%
主な就労分野は、製造、加工、建設、機械、農業、漁業、家事労働である。

ベトナム人海外就労者に関する違反行為への処分を定めた政令第283号が、9月10日に施行される。

1.海外就労者に対する処分

外国の使用者と労働契約を直接締結して海外で働く場合、契約を登録し、常住地の地方当局による確認書を取得する必要がある。
・居住地の人民委員会による契約登録確認書を取得せずに海外就労した場合:罰金500万~1,000万ドン(約2万9,500~5万9,000円)
・労働契約または職業訓練契約の終了後、脅迫や強制を受けていないにもかかわらず帰国せず、不法滞在した場合:罰金8,000万~1億ドン(約47万2,200~59万円)

後者は、刑事責任を問われない場合に適用される。

2.無許可の仲介行為も処分対象

海外就労支援の資格を持たない組織・個人が、次の行為を行った場合も8,000万~1億ドンの罰金対象となる。
・海外就労に関する情報提供、広告、相談
・労働者の募集または金銭の徴収
・海外での不法滞在を目的とした強要、勧誘、誘惑、詐欺
・海外就労者派遣事業の許可証の偽造

3.派遣企業の支店には最大2億ドン

派遣サービス企業の支店が、本社から委任された業務範囲または委任期間を超えて労働者を海外に派遣した場合、法人には1億8,000万~2億ドン(約106万2,400~118万円)の罰金が科される。

企業は罰金に加え、違法に徴収した金銭と、それに相当する利息を労働者へ返還しなければならない。

※日本円換算額は、ベトナム外商銀行の売却レート(1円=169.42ドン)に基づく概算である。

ベトナム、全地点に12桁の固有識別コードを付与へ

2026年8月19日

ベトナム政府は、地点識別に関する政令を公布した(第326/2026/NĐ-CP号)。2026年9月1日から、各地点に全国共通の固有コードを付与し、国家電子身分証明アプリ「VNeID」上で公開情報を確認できる仕組みを導入する。


1.各地点に唯一の識別コード
地点識別コードは、地点識別データベースが生成する12桁の数字である。一つの地点に一つのコードを割り当て、全国での重複を防止する。コードは長期的に維持され、各種データベースとの連携や情報共有に使用される。

道路など線状の施設については、起点、終点、交差点、行政区域との境界などを基準に地点を特定する。

2.全国統一データベースを構築
地点識別データベースは、全国で集中管理される国家データベースである。国家データベースおよび分野別データベースの情報を継承し、関係機関がデータの確認、標準化、収集、同期を行う。

主な登録情報は以下のとおりである。
・地点識別コード、識別対象、住所、アクセス経路、郵便番号
・国家座標系VN-2000または世界測地系WGS-84による座標(位置情報を数値で示す測地基準)
・土地使用権証明書に関する情報
・使用中、使用停止、移転、構造変更などの稼働状況
・地点の構造、名称、三次元地理空間情報、識別標識
・管理機関、所有者および利用者に関する情報
地点識別制度は、既存の行政機関の管理権限を代替するものではなく、国防、安全保障、国家機密および個人・組織の権利を保護しながら運用される。

ベトナムの「AI主権」、電力インフラの自立が鍵

2026年8月17日

ベトナムがAI分野で自立性を確保するには、半導体や大規模言語モデルだけでなく、安定的かつ持続可能な電力供給体制の構築が不可欠である。AI主権は、実質的にエネルギー主権から始まる。


1.AIを支えるのは巨大な電力インフラ
ベトナムが米国や中国と、汎用AIモデルの開発規模や先端半導体の供給網で競争することは容易ではない。一方、エネルギー分野では主体的な戦略を構築できる。AIは仮想的な「クラウド」だけに存在するものではなく、データセンター内の物理的な計算設備で稼働する。大量の演算処理と24時間体制の冷却には、安定した電力が必要である。

ベトナムでは現在、41カ所のデータセンターが稼働し、総設備容量は約221MWに達する。今後の大型施設の建設により、電力需要はさらに増える見通しである。重要なのは発電量だけでなく、停電や変動のない電力を継続的に供給できるかどうかである。

2.海洋資源でAI設備を冷却
熱帯気候のベトナムでは、データセンターの冷却が大きな課題である。冷却設備は施設全体の電力消費量の30~40%を占める場合があり、運用コストを押し上げる。
長い海岸線を活用し、次の技術を検討する必要がある。
・海水を利用した冷却システム
・海底データセンター
・洋上風力発電との直接連携
海底データセンターはすでに海外で商用化されており、洋上風力と組み合わせる事例もある。ベトナムでも単一の電源に依存せず、洋上風力、原子力、小型モジュール炉などを組み合わせた電源構成が求められる。

3.「海外企業のサーバー置き場」を避ける
目標は、外国企業向けに設備を貸し出すだけの拠点になることではない。データセンターを国内の研究、人材育成、産業応用と結び付け、自国の技術力に転換する必要がある。
そのための優先課題は以下の三点である。
・安定的で適正価格の電力を国家AI戦略の中核に位置付ける。
・沿岸地域で電源、データセンター、光ファイバーを一体的に整備する。
・海外投資を選別し、国内人材の育成、研究開発、AI活用への貢献を条件とする。

ベトナムのAI主権は、強固な電力網と、それを国内の技術力へ転換する政策にかかっている。

2030年までに向けた海運シェアと物流コストの課題解決

2026年8月12日

ベトナムは、共産党第14期中央委員会第3回総会で、海運経済を軸とした海洋強国の実現に向けた戦略目標を設定した。(「決議第20-NQ/TW号」(2026年7月28日付)、「決議第218/NQ-CP号」(同年8月7日付)による)

1. 2030年に向けた数値目標と現状
・自国船隊のシェア拡大: 輸出入貨物の自国船隊による輸送シェアを現在の5〜8%から20%へ引き上げる。現状はヨーロッパ・北米・北東アジア向けの遠洋航路の大部分を外航船会社に依存している。
・物流コストの削減: 現在高水準にある物流コストをGDP比12%未満に削減し、国家競争力を強化する。

2. 輸出入輸送シェア達成への施策
・商習慣の是正: 国際商取引条件として従来の「FOB輸出/CIF輸入」から「CIF輸出/FOB輸入」への転換を促し、自国船会社への貨物割り当てを拡大する。                                                                                                  
・金融・税制支援: 長期適正金利融資パッケージを導入し、大型コンテナ船、ケミカルタンカー、ガス輸送船などの専用船導入および国際海事機関の環境基準適合を支援する。
・海運アライアンスの形成: 中小規模が多い自国船会社の連携やアライアンス形成を促進し、水産・繊維・農産物などの主要輸出産業との長期輸送契約を推進する。

3. 物流コスト削減への施策
・内陸水路輸送の活用: 物流コストの50〜60%を占める輸送費を削減するため、陸上輸送から低コストな内陸水路へシフトする。交通インフラ投資に占める水路関連予算割合を現在の約2%から5〜7%へ引き上げる。
・デジタル化とトラック・船舶の空荷輸送の削減: 運送管理システムや倉庫管理システム、AIの活用により復路の空荷率(コストを40〜50%押し上げる要因)を低減する。また、5〜6カ所の現代的物流センターの開発を進める。

制度・インフラ・企業の3つの柱を一体的に強化することで、自国海運の自立性を高め、経済全体の競争力向上を図る方針である。

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