主要な海上・航空ルートに位置し、広範な自由貿易協定網と9,300億ドルを超える輸出入規模を擁するベトナムは、物流を新たな経済成長の「テコ」として位置づけている。政府が策定した「ベトナムロジスティクスサービス開発戦略(2025〜2035年、2050年見通し)」では、同産業を単なる後方支援サービスではなく、「国家競争力の中核要素」と定義し、従来の単なる貨物中継地から「サプライチェーンの組織・統括拠点」への転換を目指している。
【新戦略の目標と地域連携・階層化モデル】
新戦略に基づき、ベトナムは2025〜2035年のロジスティクス産業の成長率を年12〜15%に設定し、物流コストの対GDP比を12〜15%へ引き下げることを目指す。また、今後10年間で世界規模のロジスティクスセンターを約5カ所形成する計画である。
投資の分散を防ぐため、商工省は従来の単独開発から「階層化および地域連携モデル」への移行を推進しており、国・地域・地方・専門分野ごとの最適化を図っている。
■ 北部(ハイフォン・クアンニン地域): ラックフエン深海港およびクンミンーラオカイーハノイーハイフォン経済回廊と結びついた、国家・国際級ロジスティクスセンターを開発。
■ 南部(東南部地域): ホーチミン市とドンナイ省を核とし、カイメップ・チーバイ港、ロンタイン国際空港、および南部工業団地網を統合した大規模センターを形成。 ■ 専門ロジスティクス:農産物、コールドチェーン、Eコマース、および製造・加工業に特化した物流システムの開発。
【「ハード」と「ソフト」のインフラ統合とデジタル化】
近年のロジスティクスは単なる倉庫業ではなく、製造・輸出入活動の戦略的インフラとみなされている。そのため、高速道路や港湾、鉄道、インランドデポ(ICD)といった「ハードウェア」だけでなく、以下の「ソフトウェア(デジタルインフラ)」の同期的な統合が求められている。
■ 企業・税関・港湾・国境検問所を相互に接続する「データ連携システム」
■ 倉庫管理、トレーサビリティ(生産履歴追跡)、電子決済の共通プラットフォーム
【国際競争とグリーン・デジタル転換への圧力】
ベトナムの新戦略の背景には、シンガポール、韓国、中国沿岸部の主要物流拠点との直接的な競争がある。多国籍企業が製造拠点を東南アジアへ移転するなか、物流対応能力がベトナムの「製造業の中心地」としての地位を左右する。
■ グリーン・ロジスティクスの義務化: 主要な輸出市場や国際投資家は、炭素排出量、運用データ、サプライチェーンの透明性に対して厳格な基準を求めている。このため、商工省は「デジタル転換」と「グリーン転換」の2大プログラムを推進している。
■ 国内企業の課題: ベトナムの物流企業の多くは中小規模であり、資金、技術、管理能力に限界がある。一方で、外資系企業はベトナム国内の物流インフラやテクノロジーへの投資を急速に拡大している。
■ 法整備の動き: 商工省は競争力を支えるため、ロジスティクス事業に関する政令第163号の改正を進めており、センターの格付け基準の策定や、デジタル・グリーン物流の法的回廊(メカニズム)の整備を急いでいる。
