2026年7月1日、ベトナムにおいて「2025年デジタル・トランスフォーメーション法」および「2025年ハイテク法(改正)」が正式に施行された。
両法は、デジタル政府・デジタル経済・デジタル社会の推進に向けた統一的な法枠組みを規定すると同時に、戦略的技術およびコア技術の研究開発(R&D)を促進し、ベトナムの技術的自立能力および国際競争力を高めるための「二重のテコ」として機能することが期待されている。
1.2025年デジタル・トランスフォーメーション法:初の統一的法枠組みの確立
従来のデータ分散やプラットフォームの相互接続性不足といったボトルネックを解消し、国家規模での包括的なデジタル化を統制する。
・全主体の包括的規律: 政府機関、組織、企業、個人のデジタル活動を一元的に調整する原則と国家調整メカニズムを確立。
・データの同期・相互接続の義務化: デジタル・システム、データベース、デジタル・サービスの構築において、国家デジタル総合アーキテクチャ枠組みおよび国家データ管理枠組みへの準拠を義務付け、分散投資や局所的な囲い込みを是正する。
・市場の健全性・安全性の確保: システムやデータへの不正アクセス、不正なデータ採掘、デジタル技術を悪用した詐欺、市場独占・競争制限など、5つの禁止行為グループを規定。
・財政資金の長期的コミットメント: 国家の科学技術・イノベーション・DX予算(国家予算総支出の最低3%)のうち、最低1%を毎年DX分野に確約・配分する。
2. ハイテク法(改正):戦略的テクノロジーの法制化とR&D重視への転換
デジタル国家の基盤となる技術力そのものの向上と、持続可能な発展のための構造改革を目指す。
・戦略的技術・コア技術の定義: 国家の自立能力や長期的な競争優位性に直結し、国防・安全保障に関わる「戦略的技術」「コア技術」「戦略的技術製品」「戦略的技術企業」の概念を初めて法制化。技術リストは固定せず、発展段階に応じて定期的に更新される。
・実質的なR&D優遇措置: 単なる低コスト(減税等)による投資誘致から、実質的なR&D投資、コア技術の移転、研究成果の商業化を評価する仕組みへ転換。R&D要件を満たす企業に最高レベルの優遇措置を適用する。外資系投資に対しては、コア技術の移転と国内企業との連携を優先する。
・行政手続きの簡素化: 従来の「ハイテク企業認定証」を廃止し、基準に基づく「企業による自主評価メカニズム」へと移行。
・公共調達による市場創出: 国家予算を使用する公共調達(入札、投資、リース)において、国内のハイテク・戦略的技術製品・サービスを優先的に採用。国家が「最初の顧客」となることで、国内の技術エコシステム拡大を支援する。
・技術のローカライズ推進: 技術の解読、技術ノウハウの購入、輸入依存度の高いコア技術の部品・製品の代替製造に対する特有の支援メカニズムを構築。
3. 高度技術人材の誘致と「研究リスク」の許容
イノベーションを加速させるため、人的資本の拡充と研究環境の柔軟性を担保する制度が盛り込まれた。
・専門家への優遇措置: 研究者、高度技術専門家、在外ベトナム人、および外国人専門家に対し、税制、労働環境、研究インフラへのアクセス、知的財産権保護の面で優遇措置を供与する。
・R&Dにおける失敗の許容: 科学技術研究や技術開発に潜む不確実性や失敗のリスクを許容する「免責・容認メカニズム」を導入。これにより、研究者が大胆なイノベーションに挑戦できる環境を醸成する。
