2026年6月9日
ベトナム政府は2026年6月8日、バッテリー式電気自動車(BEV)の初回登録料を免除する期間を2030年12月31日まで延長する新政令(第202/2026/NĐ-CP号)を公布した。本政令は2027年3月1日より施行され、現行の優遇措置を定めた政令(第51/2025/NĐ-CP号)に替わって適用されるものである。
【政策の背景と変遷】
環境汚染の低減、EVシフトの推進、および関連投資の誘致を目的に、政府は段階的に登録料の優遇措置を講じてきた。
■ 政令第10/2022/NĐ-CP号: 2022年3月1日から3年間は初回登録料を0%とし、その後2年間は同定員のガソリン車・ディーゼル車の50%相当に減免すると規定。
■ 政令第51/2025/NĐ-CP号: EVの普及をさらに後押しするため、登録料0%の適用期間を2027年2月末まで延長。
■ 新政令(第202/2026/NĐ-CP号): これまでの免除政策が消費者、製造・流通業者、および環境改善に一定の効果を上げたことを踏まえ、免除期間を2030年末までさらに延長する。なお、対象となるBEVの分類基準は、建設大臣の規定に準拠する。
【グローバル市場の動向と政策の狙い】
財務省によると、世界のEV市場は規模・速度ともに急成長しており、2024年の販売台数は1,700万台(シェア20%超)を突破、2025年には2,000万台(同25%超)を超える見通しである。走行車両数の増加に伴い、公共充電ステーションなどのインフラも急速に拡大している。
■ 初期費用の引き下げ: 世界的に化石燃料車の規制とクリーンエネルギー車への移行が進む中、利用者の初期費用(導入コスト)のハードルを下げることが普及の鍵となっている。多くの国で登録時の税制優遇が一般的な手法として採用されている。
■ グリーン交通への転換: ベトナム政府は本政令により、経済的な負担を軽減してEVの発展を促すとともに、企業の生産投資の促進、供給機会の活用、および消費者の利用喚起を図る。これにより、国家の「グリーン交通」への移行政策を実効化し、有害な排気ガスの抑制を進める構えである。
2026年6月8日
ホーチミン市保健局は、市内の健康診断活動をリアルタイムで監視・管理するデジタルダッシュボードの運用を正式に開始した。これは同市保健セクターのデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略における重要な一歩であり、従来の定期報告に伴うタイムラグを解消し、データに基づく迅速な政策決定やリソース配分、さらには国民の生涯電子健康記録(PHR)の構築を目指すものである。
【データ駆動型医療への転換とダッシュボードの機能】
従来の保健管理は各医療機関からの定期的な書面報告に依存していたが、デジタル管理への移行により、医療行政の仕組みが根本から変わる。
■ リアルタイムのデータ統合: 市内の病院、地域の医療センター、保健所、移動型健康診断チームからのデータが直接システムに反映される。
■ モニタリングと分析: 日々の健康診断受診者数、各地域の進捗状況、受診者の属性だけでなく、スクリーニング検査で発見された異常値、健康リスク因子、疾病傾向が継続的に集計・分析される。
■ データに基づく意思決定: 受診率が低い地域をリアルタイムで特定し、人員補強や広報活動の強化といった対策を即座に講じることが可能となる。
【国家規模のデータ連携と生涯電子健康記録の構築】
本取り組みは、中央政府が推進する全国規模のデジタルインフラ構想とも連動している。
■ 全国的なデータ連携: 保健省は、各地の保健所から地方、そして国家の電子身分証明システム「VNeID」へと健康診断データをデータ連携させる方針を示している。
■ 生涯電子健康記録: ダッシュボードを通じて蓄積されたデータは、ホーチミン市デジタル市民アプリやVNeID上の「電子健康手帳」の基礎となる。受診歴、検査結果、予防接種歴、既往歴がデジタル化され、国民自身による健康管理や医師の診療支援に活用される。
■ 医療モデルの高度化: 蓄積された大規模データベースは、疫学分析や政策立案、さらには人工知能を用いた疾病予測や精密医療の基盤となる。
【民間企業の参入と医療アクセスの格差是正】
医療DXの推進は公的機関にとどまらず、民間のテクノロジー・リテール企業が国家のデジタル識別基盤(VNeID)を活用する動きも活発化している。
■ 官民エコシステムの形成: 民間企業が展開するデジタル医療拠点を通じて、データ連携やオンライン服薬指導、デジタル健康サービスの提供が進んでいる。
■ 医療格差の縮小: この官民のデジタルネットワークにより、遠隔地の住民でも基盤的な健康データの記録や医療相談、医薬品の入手が容易になり、大病院へ移動する負担が軽減される。慢性疾患の増加と若年化が進む中、医療セクターは「治療中心」から「地域コミュニティでの継続的な予防・保健管理」へのシフトを加速させている。
2026年6月5日
ファム・ジャ・トゥック常務副首相は、ハノイ駅(レ・ズアン通り)からゴックホイ駅への鉄道機能の移転案を巡り、輸送能力、社会的コスト、交通渋滞、およびベトナム鉄道総公社(VNR)の事業や雇用に与える影響を厳格に評価・比較するよう建設省およびハノイ市人民委員会に指示した。本件は、大手民間企業からの国道1A号線拡張工事に伴う移転提案を受けたものである。
【政府の指示内容と懸念事項】
現行のハノイ駅から約14km離れたゴックホイ駅へのターミナル機能の移転について、接続インフラの整備が十分に進んでいない段階での移行には慎重な評価が求められている。
■ 多角的な影響評価: 副首相は、旅客・貨物輸送の維持、社会的コスト(利便性の低下に伴う経済損失)、周辺の交通渋滞への影響を精査するよう命じた。また、インフラ未整備のまま移転した場合のVNRの経営基盤や従業員の雇用維持に対する救済措置(適切な解決策)の提示を義務付けた。
■ 投資方式の最適化と透明性: 移転に伴うインフラ整備を官民連携(PPP方式)で行う場合、投資家の選定は法的規定を遵守し、公開・透明性を担保することで、国家資産の損失や浪費を防ぐよう強調した。
※PPP方式:Public Private Partnership方式(公共施設等の建設、維持管理、運営等を行政と民間が連携して行うこと)
【背景と民間企業からの提案】
今回の評価指示は、ビングループが2026年内の国道1号線拡張工事の用地確保を目的に提出した、ハノイ駅の移転および鉄道インフラ整備に関する提案が端緒となっている。
■ 代替インフラの建設提案(PPPおよびBT方式):
ハノイ駅移転を可能にするための「ゴックホイ仮設貨物・旅客駅」の建設。
国道1A号線の用地開放に向けた、ゴックホイ〜プースエン間(軌間1,000mm)の現行路線の移設。
東部外郭環状線(ゴックホイ〜キムソン間)における標準軌(1,435mm)および狭軌(1,000mm)の鉄道建設。これにより現行のゴックホイ〜エンヴィエン間を代替し、ハノイ都市鉄道(メトロ)1号線の着工へ向けた土地確保を目指す。
※ BT方式: Build-Transfer方式(建設後譲渡方式)
【移転による運航への影響】
移転が実現した場合、南部方面への旅客列車はハノイ中心部から離れたゴックホイ駅発着となり、貨物列車はトゥオンティン駅およびゴックホイ駅から東部外郭環状線を経由するルートへと変更される。
2026年6月4日
人工知能(AI)は世界経済や金融市場、企業の競争力を再定義する「リセット」をもたらしている。ベトナム証券大手SSIが主催した討論会において、国際投資家や専門家は、ベトナムが基本モデルの開発で米中と直接競合するのではなく、金融やEC、ロジスティクス分野などの「活用領域」や「デジタルインフラ開発」に注力することで、迅速に経済価値を創出できるとの見解を示した。
【世界的な潮流とサプライチェーンの再編】
野村インターナショナル・アセット・マネジメントのブラッドリー・ワーデン氏によると、AIは従来のIT技術(PCやスマホ)のような単なる効率化ツールにとどまらず、推論・分析・意思決定の自動化という新たな能力を持つ。
■ 構造転換と市場の二極化: 現在はGPU、半導体、データセンター、電力などの基盤構築への巨額投資の段階だが、プログラミング開発期間の大幅短縮など、すでに具体的な生産性向上が実証されている。これにより、従来は市況サイクルに左右されやすかった半導体やストレージなどのインフラ産業が再び主役に躍り出ており、市場は今後「真のAI受益企業」と「期待先行型」へと明確に二極化する見通しである。
【ベトナムの強みと戦略的アプローチ】
ベトナムは、AIの「アプリケーションの社会実装」と「国内インフラの整備」において大きな優位性を持つ。
■ 活用領域への集中: SSIのチーフエコノミストであるファム・リュウ・フン氏は、ベトナムが大規模な基盤モデル開発で大国と競合する必要はないと指摘。むしろ、金融、Eコマース、ロジスティクス、消費財セクターにおけるAIの実装(サービスのパーソナライズ、業務自動化、リスク評価など)にこそ巨大な余地があり、これが最も早く経済的価値を生み出すルートであるとした。 (※実際にSSIの事例では、プログラミングへのAI導入から6ヶ月で開発生産性が2〜3倍に向上している。)
■ インフラ・エネルギー分野への波及: 金融機関や機密データを扱う組織では、セキュリティやデータ規制の観点から国外サーバーの利用が制限されるケースが多い。このため、ベトナム国内のデータセンター、GPU、電力、およびデジタルインフラを備えた工業団地を開発する企業に、極めて大きな投資機会が到来している。
2026年6月1日
ベトナム財務省は、「民間経済を国民経済の最も重要な原動力とする」主旨の中央執行委員会決議第68号の施行1年目における実績報告書をまとめた。本決議の導入以降、市場への新規参入・営業再開企業数の大幅な増加、証券市場の活況、輸出入の過去最高更新など、民間経済部門がマクロ経済指標の改善と国家予算収入の拡大に大きく寄与していることが明らかとなった。
【市場参入企業の急増と民間資本の拡大】
2025年5月の決議採択以降、ビジネスへの信頼感が回復し、民間部門の参入が加速している。2026年5月18日時点で、ベトナム国内の総稼働企業数は106万2,000社を超えた。
■ 2025年の実績: 新規設立および営業を再開した企業数は前年比27.4%増の約29万7,500社に達した。民間部門から経済に投入された追加登録資本金は、77.8%増の約6,400兆ドンと推計される。
■ 2026年1〜4月期の動向:新規設立企業数は前年同期比50.7%増の7万7,817社(登録資本金:約730兆ドン)を記録。営業再開企業(4万1,000社超)を合わせた総市場参入・再入企業数は約12万社(32.8%増)となり、回復基調を維持している。
【証券市場の活況と時価総額の過去最高更新】
経済の回復に加え、フロンティア市場から新興市場への格上げに向けたロードマップの進展を背景に、証券市場への資金流入が加速している。
■ 株価指数と売買代金: ベトナム株価指数(VN-Index)は上昇を続け、2026年5月15日には1,925ポイント付近に達した。2026年初頭からの1営業日あたり平均売買代金は約32.7兆ドンと、前年平均比で12.1%増加した。 ■ 時価総額と口座数: 2026年4月末時点の株式市場全体の時価総額は約10,500兆ドンに達し、過去最高を更新した。これは2025年のベトナムGDPの約82%(5,240億ドル換算)に相当する。また、投資家口座数は2024年末比で29%以上増加し、約1,300万口座に迫っている。
【輸出入総額が過去最高を記録:Top 15の貿易強国へ】
2025年の輸出入総額は9,300億ドル(2024年は7,863億ドル)に達し、過去最高を更新。ベトナムは世界の貿易強国トップ15入りを果たした。
■ 貿易収支: 輸出額は前年比17%増の4,750億ドルを記録し、10年連続の貿易黒字(200億ドル以上の出超)を達成した。これにより外貨準備高の積み増しと為替・マクロ経済指数の安定化がもたらされた。
■ 2026年1〜5月期の動向: 輸出入総額は前年同期比で約25%増の3,450億ドル超と推計され、大口の関税対象輸出額も24.3%増(610億ドル)と堅調である。これに伴い、税関歳入は年間予算枠の47.1%に相当する212.3兆ドン(15.3%増)に達した。
【国家財政への貢献と構造転換】
民間部門(国営以外)の生産・経営活動の活性化は、国家予算収入を直接的に押し上げている。
■ 2025年の歳入実績: 非国営セクターからの国家予算歳入は502.6兆ドンに達し、当初予算対比で135.7%を達成した。なかでも小規模事業者および個人事業主からの歳入は前年比36.3%増となり、2021〜2025年中での最高伸び率を記録した。
■ 2026年1〜5月期の進捗: 同セクターからの歳入は、現時点で年間予算法定枠の67.9%を消化し、前年同期比で43.6%増と大幅なプラス成長を維持している。
■ 長期的効果: 決議第68号の浸透により、短期的・定量的な指標の改善にとどまらず、大手民間グループによる国家戦略インフラプロジェクトへの投資参画が促されるなど、民間経済の質的構造転換が進んでいる。
2026年5月28日
ロイター通信によると、韓国のIT大手サムスン電子は、約39兆ドン(約2,340億円)を投じ、ベトナム北部のタイグエン省に同社初となる半導体テスト工場の建設を計画している。本戦略プロジェクトは2026年3月に当局の承認を得ており、ハノイの北約60キロメートルに位置する工業団地で既に実際に建設が開始されている。
【プロジェクトの概要】
新工場は2027年11月の正式稼働を予定しており、人工知能(AI)インフラの急拡大に伴う世界的なメモリ半導体の供給不足に対応する役割を担う。
■ 主要生産品目と設計能力: 環境ライセンス申請書類によると、本拠点は「レガシーチップ(成熟世代の半導体)」と呼ばれる従来型のメモリ半導体に特化する。年間の設計生産能力は、DRAMが1,533億ギガビット(Gb)、NANDフラッシュメモリが2,556億Gbに達する見込みである。
※ DRAM / NAND: いずれもメモリ半導体の主要種類。DRAMはデータを一時的に記憶する高速メモリ、NANDは電源を切ってもデータが消えない大容量ストレージ向けメモリ。
■ レガシーチップ需要の背景: ハイエンドのAI向けサプライチェーンの核心部ではないものの、世界の大手半導体メーカーがデータセンター向けの次世代AIチップに生産能力を集中させているため、これら従来型メモリは世界的に深刻な供給不足に陥っている。
■ 長期的な展望: サムスンは本プロジェクトで得られた利益から、将来的に25億ドル規模の第2工場へ再投資する長期計画も有している。
【ベトナムの半導体後工程における位置づけ】
タイグエン省にある既存のスマートフォン・タブレット製造複合体(コンプレックス)の隣接地では、2026年4月からすでに重機や数百人規模のエンジニア・作業員による本格的な建設工事が進められている。
■ 後工程のエコシステム構築: 半導体産業は、回路を形成する「前工程」と、組み立て・パッケージング・検査(テスト)を行う「後工程」に分かれる。今回の投資拡大により、労働集約型かつ高度な技術を要する後工程分野におけるベトナムの重要性がさらに高まる。
■ 最大の外資企業としての地位: ベトナムへの累計投資額が230億ドルを超えるサムスンは、同国最大の外資系投資企業としての地位を堅持している。新工場の設立は、インテル、アムコア・テクノロジー、ハナ・マイクロンなどの多国籍大手がすでに拠点を構えるベトナムの「半導体後工程エコシステム」をさらに補完・強化するものと期待されている。
2026年5月18日
国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の2026年版報告書によると、ベトナムのレアアース埋蔵量は350万トンに達し、米国の190万トンを上回る。資源の大部分は西北部(ライチャウ省、イエンバイ省など)に偏在し、ドンパオ(Đông Pao)、ナムナムセ(Nam Nậm Xe)、バクナムセ(Bắc Nậm Xe)、イエンフー(Yên Phú)などの主要鉱山で経済価値が確認されている。
しかし、これらを管理・採掘する国内企業の経営状況やコンプライアンスには極めて厳しい現実が露呈している。
【主要鉱山と管理企業の現状】
・ドンパオ鉱山:ライチャウ・ヴィミコ・レアアース
ベトナム最大のレアアース鉱山(鉱区面積11平方キロメートル超、酸化物換算の資源量500万トン超)を管理する。しかし、市場環境の悪化、精錬技術の不足、資金調達の難航を理由に、未だ商業採掘の条件を満たしていない。親会社である国営ベトナム鉱産総公社の2025年財務諸表の開示情報によると、同プロジェクトはすでに投資登録証明書を回収され、投資活動の停止処分を受けている。
・バクナムセ・ナムナムセ鉱山:フンハイ建設
バクナムセ鉱山は総資源量750万トン超(風化鉱床は116万トン)を擁する。フンハイ建設は当局から採掘・処理プロジェクトの投資主導権を承認され、2023年には環境影響評価(EIA:Environmental Impact Assessment)の手続きを進めた。同社は2026年1月の登記変更により、従来の筆頭株主の保有株が個人3名に均等に分割されている。
【違法採掘と密輸:企業の不祥事】
・イエンフー鉱山:タイズオン・グループ
2018年より採掘を開始した。しかし、2023年10月に違法採掘および会計規定違反の容疑で警察当局に摘発された。同社経営陣は、1,100万キログラム超のレアアース鉱石および約1億5,300万キログラムの鉄鉱石(総額約6,320億ドン相当)を不正に採掘・販売し、帳簿外で280億ドンの不当利益を得て国家に損害を与えたとされる。同社トップには、資源採掘違反や環境汚染などの罪で計14年6ヶ月の禁錮刑が言い渡された。
・ベトナム・レアアース
ベトナムで唯一レアアース精錬工場を運営する企業。同社は自社鉱山を保有していないため、原料を100%海外(豪州、ロシア等)からの輸入に依存していた。しかし、上述のタイズオン・グループから350万キログラムのレアアース鉱石を密かに買い取り、中国製原料を添加して高純度の酸化レアアース(TREO 95%以上)に精錬。その後、日本、オーストリア、中国などの企業へ不正に出荷した(総額約3,800億ドン相当)。同社トップには、密輸罪および会計規定違反の罪で計16年の禁錮刑が言い渡された。 ※TREO(Total Rare Earth Oxides): 全レアアース酸化物。鉱石や製品中に含まれるレアアース酸化物の総含有量を示す指標。
2026年5月14日
ベトナムのメディア・娯楽市場が大きな転換期を迎えている。Statistaの調査(2024年5月〜2025年7月)によると、ベトナムのSpotifyユーザーの83.1%が国内アーティストの楽曲を選択しており、この割合はアメリカ、日本、韓国を上回る世界トップ3に位置する。この強力なローカル志向を背景に、2025年には国内企業が獲得可能な市場規模が24億ドル(約60兆ドン)に達すると予測されている。 ※Statista:世界中の統計データ・市場調査・業界分析を提供する企業
【市場構造の変化と「ファン経済」の成熟】
・地産地消の加速: 視聴者が国内アーティストを優先することで、広告、著作権、コンサート、スポンサー料などの資金が国内エコシステム内に留まる好循環が生まれている。
・直接消費の拡大: Z世代やミレニアル世代を中心に、無料コンテンツから「体験」への投資へとシフトしている。コンサートチケットや関連グッズマーチャンダイズへの支出が増加しており、韓国型に近い「ファン経済(Fandom Economy)」が形成しつつある。
・独立系プロダクションの台頭: アーティスト自身が設立した独立系レーベルが、コンテンツ制作からファンコミュニティ管理までを主導し、多角的な収益化を実現している。
【主要企業の動向】
Yeah1 (YEG)
広大なメディアエコシステムを活用した「視聴トラフィックと広告収入」を軸としたモデルである。収益の約86%をメディア・広告活動が占めており、大規模なリアリティショーをフックに視聴データを集め、それを広告枠やブランドスポンサーシップへ転換することに長けている。2026年は、コンサート回数を絞る一方で、KOL/KOC(Key Opinion Leader/Key Opinion Consumer:インフルエンサー)のマネジメントやゲーム事業など、デジタルプラットフォーム上での多角的な収益化を強化する方針である。
DatVietVAC
「コンテンツIP(知的財産)と直接課金」に重きを置くモデルを展開している。同社はフォーマットの自社開発を推進しており、利益の80%をコンテンツ制作・流通部門から生み出している。特に「ファン経済」を巧みに利用し、コンサート、高額なアーティストグッズ、独占配信プラットフォームなど、ファンが直接支出するD2C(Direct to Consumer:消費者直接販売)チャネルでの収益力が圧倒的である。ROE(自己資本利益率)40.8%という極めて高い経営効率が、その優位性を裏付けている。
DatVietVACは、従来の放送枠販売から、ファンから直接収益を得る「D2C」モデルへの転換を強めている。知的財産を中核としたビジネスモデルは、銀行融資に頼らない資金調達手段としてIPOを視野に入れており、2030年には売上高5兆ドンを目指す構えである。