国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の2026年版報告書によると、ベトナムのレアアース埋蔵量は350万トンに達し、米国の190万トンを上回る。資源の大部分は西北部(ライチャウ省、イエンバイ省など)に偏在し、ドンパオ(Đông Pao)、ナムナムセ(Nam Nậm Xe)、バクナムセ(Bắc Nậm Xe)、イエンフー(Yên Phú)などの主要鉱山で経済価値が確認されている。
しかし、これらを管理・採掘する国内企業の経営状況やコンプライアンスには極めて厳しい現実が露呈している。
【主要鉱山と管理企業の現状】
・ドンパオ鉱山:ライチャウ・ヴィミコ・レアアース
ベトナム最大のレアアース鉱山(鉱区面積11平方キロメートル超、酸化物換算の資源量500万トン超)を管理する。しかし、市場環境の悪化、精錬技術の不足、資金調達の難航を理由に、未だ商業採掘の条件を満たしていない。親会社である国営ベトナム鉱産総公社の2025年財務諸表の開示情報によると、同プロジェクトはすでに投資登録証明書を回収され、投資活動の停止処分を受けている。
・バクナムセ・ナムナムセ鉱山:フンハイ建設
バクナムセ鉱山は総資源量750万トン超(風化鉱床は116万トン)を擁する。フンハイ建設は当局から採掘・処理プロジェクトの投資主導権を承認され、2023年には環境影響評価(EIA:Environmental Impact Assessment)の手続きを進めた。同社は2026年1月の登記変更により、従来の筆頭株主の保有株が個人3名に均等に分割されている。
【違法採掘と密輸:企業の不祥事】
・イエンフー鉱山:タイズオン・グループ
2018年より採掘を開始した。しかし、2023年10月に違法採掘および会計規定違反の容疑で警察当局に摘発された。同社経営陣は、1,100万キログラム超のレアアース鉱石および約1億5,300万キログラムの鉄鉱石(総額約6,320億ドン相当)を不正に採掘・販売し、帳簿外で280億ドンの不当利益を得て国家に損害を与えたとされる。同社トップには、資源採掘違反や環境汚染などの罪で計14年6ヶ月の禁錮刑が言い渡された。
・ベトナム・レアアース
ベトナムで唯一レアアース精錬工場を運営する企業。同社は自社鉱山を保有していないため、原料を100%海外(豪州、ロシア等)からの輸入に依存していた。しかし、上述のタイズオン・グループから350万キログラムのレアアース鉱石を密かに買い取り、中国製原料を添加して高純度の酸化レアアース(TREO 95%以上)に精錬。その後、日本、オーストリア、中国などの企業へ不正に出荷した(総額約3,800億ドン相当)。同社トップには、密輸罪および会計規定違反の罪で計16年の禁錮刑が言い渡された。 ※TREO(Total Rare Earth Oxides): 全レアアース酸化物。鉱石や製品中に含まれるレアアース酸化物の総含有量を示す指標。
