ベトナムのメディア・娯楽市場が大きな転換期を迎えている。Statistaの調査(2024年5月〜2025年7月)によると、ベトナムのSpotifyユーザーの83.1%が国内アーティストの楽曲を選択しており、この割合はアメリカ、日本、韓国を上回る世界トップ3に位置する。この強力なローカル志向を背景に、2025年には国内企業が獲得可能な市場規模が24億ドル(約60兆ドン)に達すると予測されている。 ※Statista:世界中の統計データ・市場調査・業界分析を提供する企業
【市場構造の変化と「ファン経済」の成熟】
・地産地消の加速: 視聴者が国内アーティストを優先することで、広告、著作権、コンサート、スポンサー料などの資金が国内エコシステム内に留まる好循環が生まれている。
・直接消費の拡大: Z世代やミレニアル世代を中心に、無料コンテンツから「体験」への投資へとシフトしている。コンサートチケットや関連グッズマーチャンダイズへの支出が増加しており、韓国型に近い「ファン経済(Fandom Economy)」が形成しつつある。
・独立系プロダクションの台頭: アーティスト自身が設立した独立系レーベルが、コンテンツ制作からファンコミュニティ管理までを主導し、多角的な収益化を実現している。
【主要企業の動向】
Yeah1 (YEG)
広大なメディアエコシステムを活用した「視聴トラフィックと広告収入」を軸としたモデルである。収益の約86%をメディア・広告活動が占めており、大規模なリアリティショーをフックに視聴データを集め、それを広告枠やブランドスポンサーシップへ転換することに長けている。2026年は、コンサート回数を絞る一方で、KOL/KOC(Key Opinion Leader/Key Opinion Consumer:インフルエンサー)のマネジメントやゲーム事業など、デジタルプラットフォーム上での多角的な収益化を強化する方針である。
DatVietVAC
「コンテンツIP(知的財産)と直接課金」に重きを置くモデルを展開している。同社はフォーマットの自社開発を推進しており、利益の80%をコンテンツ制作・流通部門から生み出している。特に「ファン経済」を巧みに利用し、コンサート、高額なアーティストグッズ、独占配信プラットフォームなど、ファンが直接支出するD2C(Direct to Consumer:消費者直接販売)チャネルでの収益力が圧倒的である。ROE(自己資本利益率)40.8%という極めて高い経営効率が、その優位性を裏付けている。
DatVietVACは、従来の放送枠販売から、ファンから直接収益を得る「D2C」モデルへの転換を強めている。知的財産を中核としたビジネスモデルは、銀行融資に頼らない資金調達手段としてIPOを視野に入れており、2030年には売上高5兆ドンを目指す構えである。
