ベトナムは4年以内に「ユニコーン企業」を新たに3社創出する目標を掲げる

2026年4月8日

ベトナム政府は2026年4月5日、スタートアップ国家戦略(政令第86/NQ-CP号)を正式に発出した。

現在、ベトナムには4,000社以上のスタートアップと2社のユニコーン企業が存在するが、2030年までに企業価値10億ドル以上のユニコーン企業を最低5社(現在より3社増)創出することを目指すというものです。                                             ※ユニコーン企業:未上場で企業価値が10億米ドル以上と評価されるスタートアップ企業


【2030年および2045年に向けた主要目標】
政府はイスラエルや韓国、シンガポールの成功事例を参考に、科学技術とデジタルトランスフォーメーション(DX)を土台とした以下の数値を設定した。

2030年までの目標:
ユニコーン企業: 最低5社を形成
・ベンチャーキャピタル(VC)市場: 市場規模を15億ドルに拡大
・企業数: 500万の経済主体を形成し、うち1万社をスタートアップとする
・教育・インフラ: 全高等教育機関での起業教育導入、全国300拠点以上のイノベーションセンター設置
・世界ランキング: グローバル・イノベーション・指数(GII)で世界トップ40位以内を目指す  ※GIIは各国のイノベーション力を評価する国際指標で、世界知的所有権機関(WIPO)が毎年公表

2045年までのビジョン:
・企業価値1億ドル以上の企業を最低100社創出
・VC市場規模を100億ドルに拡大
・イノベーション・スタートアップ分野で世界トップ30位入りを果たす


【戦略的ソリューション】
ビジョン実現のため、政府は以下の3つの柱を推進する。
革新的な法的枠組みの構築: 行政手続きの100%デジタル化を推進。また、新技術のための「サンドボックス(規制のサンドボックス制度)」や、再起業を容易にする「簡素化された破産手続き」などの特区制度を試行する。                                      ※規制のサンドボックス制度:新技術・新サービスの実証を一定期間既存規制の適用外または緩和のもとで行う制度
人材育成とエコシステムの整備: 初等教育から大学まで起業家精神を教育課程に組み込む。また、共通インフラやデジタルプラットフォームを構築し、コミュニティ全体の起業環境を整える。
資金調達の円滑化と国際統合: 国・地方・大学レベルでのベンチャーキャピタル基金を育成。知的財産を担保とした信用保証や直接的な財政支援メカニズムを構築し、ベトナム企業をグローバルバリューチェーンへ組み込む。

レ・ミン・フン新首相が就任:制度の完備を最優先事項に掲げる

2026年4月7日

2026年4月7日午後、国会においてレ・ミン・フン(Le Minh Hung)氏が新首相に就任し、宣誓を行った。フン新首相は就任演説の中で、制度の構築と整合的かつ包括的な完備を新政府の最優先事項とし、国家開発のためのあらゆる資源を解放することを表明した。                    ※「制度の完備」は、法制度・行政手続き・政策運用の一体的整備を指す表現


【5つの重点的な施策方針】 
新首相は、2026-2031年任期における政府の運営について、以下の5つの柱を提示した。

「現代的・奉仕型」政府への変革と制度の抜本的改革 
制度構築を「最優先の任務」と位置づけ、行政手続きを徹底的に簡素化する。社会的なあらゆる資源を解き放つため、法規制の「ボトルネック」を即座に解消することを約束した。また、政府組織を「精鋭・簡素・強力」なものに再編し、各閣僚には「現代的な管理思考」による柔軟な運営を求めた。

歴史的な経済成長目標(GDP 10%以上)
2026年から2031年までの期間において、平均GDP成長率10%以上の維持を「発展への命令」として掲げた。これを達成するため、科学技術、イノベーション、DX(デジタルトランスフォーメーション)を主要な動力源とし、戦略的な自主性を高める。
・インフラと環境: グリーン転換と気候変動への適応を推進し、国家経済が主導権を握りつつ、民間経済を最も重要な原動力として位置づける。

徹底した分権化と公務員の質的向上
2025年7月からの地方自治体新体制(2段階制)の運用を加速させる。2026年を「地方公務員の質的向上の年」とし、行政の役割を「管理」から「奉仕・創造」へ転換する。「地方ができることは地方に任せる」という原則の下、分権を推進し、草の根レベル(社・坊)での自律性を促す。          ※「社・坊」はそれぞれ農村部・都市部の基礎自治単位を指す

社会基盤と人間への投資
「人間への投資こそが最も持続可能な投資」とし、教育の抜本的改革、ハイテク人材の育成、天才の重用を強調した。公衆衛生システムの強化に加え、「誰一人取り残さない」社会保障政策や、ベトナム文化のアイデンティティ確立も重要課題とした。                           ※「天才の重用」は高度人材・トップ人材の積極登用政策を指す表現

清廉な政治と責任の明確化: 汚職防止と浪費の撲滅を継続し、行政の規律を厳格化する。特に「責任逃れ」や「無関心」な姿勢を厳罰に処す一方で、「公共の利益のために敢えて行動し、責任を負う公務員」を保護するメカニズムを実質的に運用し、公務員の士気を高める。

フン首相は、ホー・チ・ミン主席の「政府は国民のためにあり、国民の利益に奉仕することのみを目的とする」という教えを強調、ベトナムを飛躍的な発展と繁栄の段階へと導く決意を表明した。

2026年残り3四半期におけるベトナムの成長シナリオ

2026年4月6日

ベトナム統計総局(GSO)によると、2026年第1四半期のGDP成長率は7.83%を記録した。これは世界経済が不安定な中では明るい数字であるが、政府目標の9.1%には届かなかった。これを受け、目標達成には残り3つの四半期で10.5%以上の高成長を維持する必要がある。

【今後の成長シナリオと目標値】
目標達成に向けた各四半期のGDP成長率予測は以下の通りである。
・第2四半期: 10.5%(工業・建設業が12.6%増と牽引)
・第3四半期: 10.6%
・第4四半期: 10.74%
このシナリオは、輸出の加速、国内購買力の回復、および半導体やグリーン経済といった新産業の貢献を前提としている。

【成長を後押しする主な原動力】
公共投資の拡大: ロンタイン国際空港や高速鉄道などの巨大インフラプロジェクトが「呼び水」となり、物流コストの削減とFDI(外国直接投資)の誘致を促進する。
内需の活性化: 給与制度改革や消費刺激策により、1億人規模の国内市場の購買力を引き出し、サービス業や電子商取引を支える。
・柔軟な財政・金融政策: ガソリン税の調整や価格安定基金の活用により、コストプッシュ型インフレを抑制し、企業の利益率、収益性を下支えする。
・デジタルトランスフォーメーション(DX)とAI: AIや自動化の導入により、労働集約型から知識集約型モデルへ転換し、全要素生産性(TFP)を向上させる。
・自由貿易協定(FTA)の活用: FTAを最大限に活用し、電子部品やグリーンテキスタイルなどの主力製品をグローバルバリューチェーンの上位へとシフトさせる。

年間で2桁成長を目指すという歴史的な挑戦に対し、ベトナム政府は法的障壁の撤廃と公共投資の執行加速を急いでいる。中東情勢の沈静化と原油価格の安定が、目標達成のための重要な外部要因となる。

ベトナムへの外国投資資金、引き続き流入の見通し

2026年4月3日

UOB(ユナイテッド・オーバーシーズ銀行:シンガポールに本拠を置き、東南アジア全域で広範なネットワークを持つ大手金融グループ)の市場調査・グローバル経済部門責任者であるスアン・テック・キン氏は、2026年後半にかけて米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利下げにより米ドル高が落ち着き、ベトナムへの外国投資流入に好影響を与えると予測している。

【為替とマクロ経済の展望】
金利動向: FRBは2026年6月と第3四半期にそれぞれ0.25%の利下げを行い、政策金利を3.25%まで引き下げる見通しである。
・為替相場: 中東情勢による一時的な変動はあるものの、ドン(VND)相場の中長期的展望は安定している。UOBは2026年のベトナムのGDP成長率を7.5%と予測しており、強固なマクロ経済基盤が通貨を支えている。
・金融政策: ベトナム国家銀行(中央銀行)は、2026年を通じて政策金利を4.5%に据え置くと予想される。


【FII(外国間接投資)と市場の格上げ】
ベトナムの証券市場は、2026年9月にMSCIやFTSEラッセル(いずれも世界的な株価指数を提供する指数会社で、各国市場の分類は機関投資家の投資判断に大きな影響を与える)によって「エマージング・マーケット(新興市場)」に格上げされる期待が高まっている。                   ※格付けは、「先進国市場」「新興市場」「フロンティア市場」の3層に分類
長期資金の流入: 格上げが実現すれば、これまでの短期的な投機資金から、より大規模で長期的な投資資金へと質的な変化を遂げる。
・国際金融センター(VIFC): ベトナム国際金融センターの設立により、ドバイのような国際基準の投資環境を整備し、新たな成長エンジンとしての役割が期待されている。

【FDI(外国直接投資)の戦略的優位性】
ベトナムはサプライチェーンの脱中国(チャイナ・プラス・ワン)の流れを受けて、引き続き製造業を中心にFDIを引きつけている。
投資サイクル: 2025年〜2026年の実行資本の伸びは、過去5年間にわたる投資家の戦略的判断の結果である。
重点分野: 従来の製造・加工業に加え、小売、観光、サービス業への関心が高まっている。
構造転換: 単純な組み立て・加工から、半導体、フィンテック、高付加価値なハイテク産業への転換が加速している。

ホーチミン市の「データクリーンアップ」:戦略的資産の保護に向けた取り組み

2026年3月25日

ホーチミン市は現在、強力なデジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として、大規模な「データクリーン化」キャンペーンを展開している。市はデータを単なる蓄積情報ではなく、国の「戦略的資産」と位置づけ、情報の孤立状態を打破し、共有データ倉庫の構築を目指している。         ホーチミン市デジタルトランスフォーメーションセンター(HCMC-DXCENTER)のヴォ・ティ・チュン・チン所長に詳細を聞いた。

【データ主導の意思決定と行政サービス】
今回のキャンペーンは住民、土地、企業登記の3つの基盤分野に焦点を当てている。
行政の効率化: データのクリーン化と連結により、住民が何度も書類を提出する手間を省き、教育や都市計画などの分野でデータに基づいた正確な意思決定(エビデンスに基づく政策立案)を可能にする。
政府の役割変化: 紙ベースの管理からデータガバナンスへと移行し、市民へのサービス品質を向上させる。

【サイバーセキュリティと「能動的防御」】
共有データの集中管理に伴い、サイバーセキュリティが最優先課題となっている。ベトナム共産党事務局が発行した「指令57号(57-CT/TW)」に基づき、市は以下の対策を講じている。
能動的防御: 事後対応ではなく、システム設計段階からセキュリティを組み込む「セキュリティ・バイ・デザイン」を導入し、リスクを早期に特定・排除する。
階層管理と権限分離: 各機関が職務に必要なデータのみにアクセスできるよう厳格なアクセス制御を行い、すべての活動ログを監視する。

【今後の展望:国産技術と人材育成】
市は、データセキュリティの自主・自立を掲げ、国内のIT企業(Made in Vietnamソリューション)との連携を強化している。また、データの商用化を見据えたサンドボックス(実証実験)の構築や、デジタルスキルの普及活動を通じて、住民一人ひとりがデータ保護の重要な担い手となるエコシステムの形成を目指している。

「1人当たりGDP 6,000ドル」の節目を控えるベトナム:資金はどのチャネルに流入するか?

2026年3月22日

2026年証券市場発展会議において、TCBS(ベトナム大手民間銀行テクコムバンク傘下の証券会社)のグエン・ティ・トゥ・ヒエン総局長は、ベトナムが間もなく迎える「一人当たりGDP 6,000ドル」という節目に注目した。

現在、ベトナムの資産運用市場には43の運用会社が存在し、運用資産残高(AUM:Asset Under Management)は800兆ドン(約4.8兆円)を突破。2014年比で7倍超、年平均成長率(CAGR)約20%という急成長を遂げている。一方で、対GDP比の運用資産割合は約6%にとどまり、タイやマレーシア等の近隣諸国と比較しても、依然として膨大な「キャッチアップ」の余地を残している。

ヒエン総局長は、タイやマレーシアの先例を引き合いに、この水準を超えると金融資産への投資比率が最大4倍に急増する傾向を指摘した。これは、従来の短期的な投機スタイルから、専門家を通じた中長期的な資産運用へと国民の投資行動が抜本的に変化する「爆発的ポイント」になると予測される。

【成長に向けた課題と提言】
業界のさらなる発展に向け、以下の3点が重要視されている。
金融教育の推進: 個人が金融商品を正しく理解し、ポートフォリオを多様化できるよう、官民およびメディアが一体となった教育が必要である。
・税制優遇の拡充: 任意年金基金などの長期投資チャネルを活性化させるため、現在月額300万〜500万ドン程度(約1.8万〜3万円程度)となっている所得税控除枠の引き上げが提案されている。
・商品ラインナップの拡充: インデックスファンドやETFの展開を加速させ、投資家の選択肢を広げる必要がある。

【今後の展望】
SSIアセットマネジメントのグエン・ゴック・アイン総局長は、同業界を高い成長性を秘めた「スタートアップ」や「ユニコーン」に例えた。法整備が進む中、今後はIPO(新規株式公開)への参画やデリバティブ商品の拡充を通じ、同業界がベトナム経済における中長期的な資金供給の柱(メインチャネル)となることが期待されている。

「成長の勢いを維持する」ための課題解決

2026年3月20日

中東地域での紛争長期化により、世界経済およびベトナム経済への不透明感が増している。主なリスクとして、原油価格の高騰によるインフレ圧力、為替(VND/USD)への負荷、そして物流(ロジスティクス)や観光への悪影響が懸念されている。

BIDV研究機関のCan Van Luc博士らは、投資家や消費者の心理的慎重さが投資の遅延や受注減を招き、GDP成長を押し下げる可能性があると指摘する。中東情勢がさらに悪化する「ネガティブ・シナリオ」では、輸出成長率が最大2ポイント減少すると予測されている。                (※BIDVベトナム投資開発商業銀行)

【成長の原動力】
こうした逆風の中でも、ベトナム経済を支える主要な柱は以下の3点である:
製造・加工業の躍進: 2026最初の2ヶ月の工業生産指数(IIP)は前年同期比10.4%増と好調を維持。特に製造・加工業が牽引役となっている。                           (※IIP=Industrial Production Index:工業生産の動向を示す指標)
・外資(FDI)と国内投資: FDI実行額は前年同期比8.8%増(32.1億ドル)を記録。新設・再開企業数も大幅に増加しており、民間・公共投資の両面で生産能力の拡充が進んでいる。          (※FDI=Foreign Direct Investment:海外からの直接投資)
政府の機動的な施策: 首相による輸出促進の公電や、ガソリン価格の管理、サプライチェーン断絶の防止など、インフレ抑制と成長維持の両立を図る対策が急ピッチで進められている。        (※「公電」は政府が各機関に出す公式指示文書)

【地方自治体の動き】
ホーチミン市をはじめとする各自治体では、独自の成長シナリオを策定している。
・ホーチミン市: 公共投資の早期実行や内需拡大により、域内総生産(GRDP)成長率10%以上の達成を目指す。
・クアンニン省・ゲアン省: 公共投資を「成長の呼び水」と位置づけ、デジタル経済や再生可能エネルギーなどの新成長エンジンを模索している。

結論として、 外部環境の不確実性は高いものの、製造業の強みと積極的な投資誘致、そして政府の柔軟な政策運営により、2026年の高い成長目標達成に向けた取り組みが続いている。

ベトナム、120ヘクタールのデジタル技術区を建設へ―160億ドルの巨大プロジェクト(ロンタイン国際空港に隣接)

2026年3月18日

ドンナイ省人民委員会は、ロンタイン(Long Thanh)県における「ロンタイン集中デジタル技術区(縮尺1/2,000:実施計画レベル)」の区画整理計画タスクを承認した。本プロジェクトは、総面積約119ヘクタール(計画面積117ヘクタール)に及び、約9,500人から10,500人の雇用創出が見込まれている。

本計画は、以下のような構成および建設基準が定められている。
・機能分画: 「デジタル技術産業エリア」と「付帯サービス提供エリア」の2グループで構成される。
・建設規定: 最大建ぺい率は40%、緑地・交通・技術インフラ面積は21%以上を確保する。建物の高さ制限は原則45m以下とするが、特殊な建築物については個別検討される。

【主な目標】
・IT・デジタル技術の拠点化: 情報技術(IT)センターを形成し、デジタル技術の開発・応用、R&D(研究開発)、技術転送、およびスタートアップ育成のインフラを整備する。
・投資誘致と競争力強化: 内外資および先端技術を誘致し、ITを重点経済セクターへと引き上げる。国際標準の労働環境を構築することで、高度人材を確保し、ベトナム企業の競争力を高める。
・輸入代替と多産業への波及: 輸入製品に代わるデジタル製品・サービスを創出し、通信、金融、航空、電子商取引(EC)などの発展を促進する。

1 2 3