グラブ:ベトナムで6,000基のEV充電スタンド建設を計画

2026年6月2日

配車サービス・生活アプリ大手のグラブは、2027年までにベトナム全国で計6,000基の「共有型電気自動車(EV)用充電スタンドの網を構築する計画を提案している。2026年5月31日、同社グループのチーフ・ピープル・オフィサーであるチン・イン・オン(Chin Yin Ong)氏が、デジタル経済、スマートシティ、持続可能な交通モデルの推進に合わせた戦略的ビジョンとして明らかにした。

【インフラ整備提案の背景とドライバーの課題】

グラブ・ベトナムの外部関係担当ディレクターであるダン・トゥイ・チャン氏が2025年8月の座談会で指摘した通り、同社の提携ドライバーがEVへ移行する上での最大の障壁は、充電インフラの不足である。

現行の課題: ドライバーの間では、給油が3〜5分で済むのに対し、EVは「充電時間が長い」「1回の充電での航続距離が短い」「公衆充電スタンドやバッテリー交換所の数が少ない」「電力網が不安定」「メンテナンス・修理コストが高い」といった懸念が根強い。
インフラ補完の必要性: チャン氏は、公衆充電インフラの整備と電力網の安定化が急務であると主張。特に、政府の支援を受けて建設される充電スタンドについては、特定の自動車メーカー専用とせず、複数のブランドが共同で利用できる「高い公共性(相互運用性)」を担保する必要性を強調している。

【多角的なモビリティ戦略と事業コミットメント】

グラブは充電インフラの整備に加え、ベトナム市場において以下の包括的なソリューションの導入および共同研究を提案している。

多機能交通連携: グラブのアプリ内に公共交通機関の情報を統合し、ユーザーが複数の移動手段をシームレスに組み合わせて利用できるスマート交通システムを推進する。
新技術の実証実験(サンドボックス): 自動運転車や配送ロボットといった次世代技術の導入に向けた試験運用のメカニズムを研究する。
デジタル人材育成と地域振興: 同社のオンライン学習プラットフォームを通じたデジタルスキルの向上支援や、周辺地域へのベトナムのイメージ発信を行う。

【グラブ・ベトナムの業績動向】

ベトナム市場における同社の業績は、右肩上がりの安定した成長を維持している。

財務データ(売買高・売上高): グラブの報告書によると、ベトナム国内における売上高は2023年の1億8,500万米ドルから、2024年には2億2,800万米ドル、2025年には2億5,500万米ドル(約6兆7,100億ドン)へと拡大した。3年間で売上高は約38%増加しており、同社にとってベトナムが極めて重要な成長市場であることが示されている。

サングループ、タイの商業施設開発最大手と戦略的提携:ベトナムで「ショッピング観光」の開拓へ

2026年5月28日

2026年5月28日、トー・ラム書記長兼国家主席のタイ公式訪問の枠組みにおいて、ベトナムの不動産・観光大手サングループと、タイの複合商業施設開発最大手セントラル・パッタナー(セントラルグループ傘下)が戦略的協力国際覚書(MOU)を締結した。両社はベトナムの主要都市および観光地において、国際基準を満たす次世代の高級商業施設や複合施設の共同開発を目指す。

【提携の背景と開発計画の対象地域】

セントラル・パッタナーは、バンコク中心部のアジア有数の商業コンプレックス「セントラルワールド」をはじめ、タイ国内で45の商業施設、53の住宅プロジェクト、11のオフィスビル、13のホテルを運営するリーディングカンパニーである。同社は商業施設を単なる購買の場ではなく、文化・エンターテインメント・観光の目的地へと昇華させ、観光客の滞在期間延長や消費額増加を促すビジネスモデルに強みを持つ。

今回のMOUにより、両社はベトナムの以下の3つの戦略的拠点において、ランドマークとなる大規模な複合商業・エンターテインメント施設を展開する計画である。

■ ダナン市: ハン川沿いにおいて、都市の新たなライフスタイルや体験の中心となる大規模な商業・エンターテインメント複合施設を開発。
■ ホーチミン市: 将来の新たな成長極として期待される市内東部および新金融中心地区において、大規模な商業施設群を展開。
■ フーコック島: 単なるリゾート地から、地域の新たな「ショッピングパラダイス」への転換を目指し、高級商業・体験統合型センターを開発。

【「ショッピング観光」の潜在力と量から質的成長への転換】

本提携の主たる狙いは、ベトナム市場において未開拓である「ショッピング観光」市場の開拓にある。世界的にショッピング観光は急成長しており、国際観光客の旅行支出の30%〜50%を占める重要な要素となっている。

■ ベトナム観光の課題と目標: ベトナム観光業は2025年に国際観光客数2,100万人超を記録し、2026年年初4ヶ月間でも約880万人を迎えるなど急成長を続けている。一方で、「観光客数は多いものの消費額が低い」という課題を抱えており、今後の長期目標として、観光産業を「量の成長」から「質の成長(消費額の拡大)」へと転換させることが至上命題となっている。
■ 次世代商業施設の役割: 両社が目指す次世代の商業施設は、単にブランド品を購入する場にとどまらず、ハイレベルなエンターテインメントショーの鑑賞、独自の建築空間、ローカルと国際色を融合した飲食、大規模なフェスティバルなどを包括した「総合体験型拠点」である。これにより、国際的な富裕層や国内の消費欲の高い層を呼び込み、主要観光地における観光収入の大幅な底上げを図る。

サムスン、ベトナムに初の半導体テスト工場を建設へ:投資額15億ドル

2026年5月28日

ロイター通信によると、韓国のIT大手サムスン電子は、約39兆ドン(約2,340億円)を投じ、ベトナム北部のタイグエン省に同社初となる半導体テスト工場の建設を計画している。本戦略プロジェクトは2026年3月に当局の承認を得ており、ハノイの北約60キロメートルに位置する工業団地で既に実際に建設が開始されている。

【プロジェクトの概要】

新工場は2027年11月の正式稼働を予定しており、人工知能(AI)インフラの急拡大に伴う世界的なメモリ半導体の供給不足に対応する役割を担う。

■ 主要生産品目と設計能力: 環境ライセンス申請書類によると、本拠点は「レガシーチップ(成熟世代の半導体)」と呼ばれる従来型のメモリ半導体に特化する。年間の設計生産能力は、DRAMが1,533億ギガビット(Gb)、NANDフラッシュメモリが2,556億Gbに達する見込みである。
※ DRAM / NAND: いずれもメモリ半導体の主要種類。DRAMはデータを一時的に記憶する高速メモリ、NANDは電源を切ってもデータが消えない大容量ストレージ向けメモリ。
■ レガシーチップ需要の背景: ハイエンドのAI向けサプライチェーンの核心部ではないものの、世界の大手半導体メーカーがデータセンター向けの次世代AIチップに生産能力を集中させているため、これら従来型メモリは世界的に深刻な供給不足に陥っている。
■ 長期的な展望: サムスンは本プロジェクトで得られた利益から、将来的に25億ドル規模の第2工場へ再投資する長期計画も有している。

【ベトナムの半導体後工程における位置づけ】

タイグエン省にある既存のスマートフォン・タブレット製造複合体(コンプレックス)の隣接地では、2026年4月からすでに重機や数百人規模のエンジニア・作業員による本格的な建設工事が進められている。

■ 後工程のエコシステム構築: 半導体産業は、回路を形成する「前工程」と、組み立て・パッケージング・検査(テスト)を行う「後工程」に分かれる。今回の投資拡大により、労働集約型かつ高度な技術を要する後工程分野におけるベトナムの重要性がさらに高まる。
■ 最大の外資企業としての地位: ベトナムへの累計投資額が230億ドルを超えるサムスンは、同国最大の外資系投資企業としての地位を堅持している。新工場の設立は、インテル、アムコア・テクノロジー、ハナ・マイクロンなどの多国籍大手がすでに拠点を構えるベトナムの「半導体後工程エコシステム」をさらに補完・強化するものと期待されている。

次世代の海外直接投資の誘致における国内企業の役割:グローバルサプライチェーンへの参入加速

2026年5月13日

2026年5月13日に開催された「ベトナム発展の橋渡フォーラム2026」において、次世代の海外直接投資(FDI)誘致における国内企業の重要性が議論された。単なる外資の受け入れではなく、国内企業がグローバルサプライチェーンに深く関与し、外資と内資が「共創」する成長モデルへの転換が急務となっている。


【現状と課題:100万社対100社の壁】
参入数の少なさ: ベトナムには約100万社の国内企業が存在するが、多国籍企業(MNCs)と直接取引を行う「ティア1(1次サプライヤー)」はわずか約100社に留まっている。
生産性と技術の低迷: 国内企業の労働生産性はタイの約半分、マレーシアの4分の1の水準である。また、60〜70%の企業がいまだに旧式の技術を使用しており、国際基準の管理能力やデジタル化に対応できていない。
・外資系衛星企業の増加: 大手外資企業の進出に伴い、その母国から中小規模の「外資系衛星企業」が共に進出する傾向があり、国内私企業が参入する余地をさらに狭めている。

【次世代FDI誘致の転換点】 
グエン・ヴァン・タン副首相は、今後のFDI誘致の方向性について以下の通り強調した。
選択基準の刷新: 安価な労働力や優遇措置に頼るモデルから脱却し、「技術」「付加価値」「環境保護」、そして「国内企業との連携」を主要な評価基準とする。
・新たな優位性の構築: 投資家は、制度の質、政策の安定性、グリーンエネルギー、データインフラ、および革新能力を重視するようになっている。

【解決策としての「共創」】
国内企業の自力更生: 外資の働きかけや国の支援を待つだけでなく、企業自らが管理能力と技術水準を向上させ、国際的な厳格な基準(品質、納期、データセキュリティ等)を満たす必要がある。
エコシステムの形成: 単独企業での対応ではなく、国内企業間の連携を強め、部品供給からロジスティクスまでを網羅した「国内サプライチェーン」として外資に提案できる体制を構築する。
・政策的支援: 政府は、国内企業がティア1、ティア2サプライヤーへと昇格できるよう、支援メカニズムを整備し、外資企業に対しては国内企業への技術移転や基準共有を促す。

日本の西鉄、ベトナムで低価格住宅を大量供給へ

2026年5月5日

日本の大手鉄道会社である西日本鉄道株式会社(西鉄)は、ベトナムの不動産大手ナムロン・グループ(Nam Long Group)と提携し、2035年までに合計約2万2,000戸の住宅を供給する計画を発表した。日本の建設技術と品質管理体制をベトナム市場へ導入し、都市部における深刻な住宅不足の解消を目指す。


【提携の枠組みと事業内容】
合弁事業の設立: 西鉄は、ナムロン傘下の住宅開発部門である「ナムロンADC(Nam Long ADC)」の株式49%を取得し、合弁会社を運営する。西鉄は経営への参画とともに、設計、建築技術、品質管理などのノウハウを供与する。
製品ターゲット: 中所得者層向けの低価格住宅「EHome」および社会住宅「EHomeS」を中心に展開する。価格帯は、集合住宅で約12億ドン(約720万円)、戸建住宅で約25億ドン(約1,500万円)を想定している。
事業目標: 2030年までに事業規模を80%拡大させ、2035年までに2万2,000戸以上の引き渡しを目指す。


【今後の市場展開】
ベトナムでは年間約10万戸の住宅需要がある一方で供給が追いついていない状況である。この需要ギャップに対し、ナムロンADCはこれまでに南部を中心に1万戸以上の住宅を供給してきた実績を持つ。2026年からは、これまでの南部地域に加え、北部市場のハイフォンやハロンへの進出を計画しており、供給網を全国へ拡大する方針である。

ベトナム・日本:協力の柱を拡大し、2030年までの新目標を設定

2026年5月2日

2026年5月2日、ベトナムのレ・ミン・フン首相と訪越した日本の高市早苗首相はハノイで会談を行い、両国の「包括的戦略的パートナーシップ」を深化させ、2030年に向けた経済・貿易面での具体的目標の達成で一致した。


【経済・貿易の目標設定】
両首脳は、経済協力を二国間関係の主軸と位置づけ、以下の目標を掲げた。
数値目標: 2030年までに日本からベトナムへの年間投資額50億ドル、二国間貿易額600億ドルの達成を目指す。
・エネルギー・農業協力: タインホア省のニソン製油所への原油供給安定化、気候変動対策、メコンデルタにおける「100万ヘクタール低排出稲作プロジェクト」の支援、および農産品(ベトナム産ザボンと日本産ブドウ)の市場開放で合意した。

【技術・人材・地域協力】
技術分野では、AI、半導体、宇宙開発等のハイテク産業での技術自立支援に向け、科学技術合同委員会を2026年中に再始動する。また、高度人材育成や「日越大学」プロジェクトの深化、地域交流の活性化、査証(ビザ)手続きの簡素化を通じた観光交流の倍増(2030年目標)を図る。


【国際・地域問題での連携】
国際協力の枠組みにおいて、ベトナムが議長を務める2026年のTPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)および2027年のAPEC首脳会議に向けた緊密な連携を確認した。

IMF予測:ベトナム、2026年から2031年に購買力平価(PPP)ベースで東南アジア第2位の経済規模へ

2026年4月22日

国際通貨基金(IMF)の最新予測によると、ベトナムの購買力平価(PPP)ベースの国内総生産(GDP)は、2026年から2031年にかけてタイやその他の周辺諸国を追い抜き、インドネシアに次ぐ東南アジア第2位の経済規模になる見通しである。

【予測される経済成長の軌道】
・2026年の節目: ベトナムのPPPベースGDPは2兆250億ドルに達すると予測されている。これはタイ、マレーシア、フィリピン、シンガポールを上回り、東南アジアではインドネシアに次いで「2兆ドルクラブ」に入る唯一の国となることを意味する。
タイとの格差拡大: 2031年までに、ベトナムのPPPベースGDPはタイを5,000億ドル以上上回ると予測されており、地域内第2位の地位を確固たるものにする。
・インドネシアとの差の短縮: インドネシアとの規模の差も急速に縮まっており、2026年の約39%から、2031年には約46%まで肉薄する見込みである。
・シンガポールとの比較: 人口規模と成長の勢いにより、2031年にはシンガポールの経済規模の約2.2倍に達すると計算されている。

【背景と専門家の分析】
ホーチミン市銀行大学のグエン・アイン・ヴー博士は、この予測を妥当であると評価している。
成長の推移: 2006年当時、タイの名目GDPはベトナムの3倍以上の開きがあった。しかし、長期間にわたるベトナムの堅調な成長により、2024年にはその差はわずかなものとなっている。
・経済指標の解釈: PPPは世界の価格基準を用いて生活費を比較し、通貨の実際の購買力を算出する指標である。経済規模の拡大は、ベトナムの地域内における地位を強化し、次段階の拡大への強固な基盤となる。

【留意点:生活水準の課題】
経済規模(総GDP)でタイを上回ることは、必ずしも全体的な開発水準で追い抜いたことを意味しない。
1人当たりGDPの差: 生活水準をより正確に反映する1人当たりGDPでは、依然としてタイが優位にある。2024年時点で、PPPベースの1人当たりGDPはタイが2万4,710ドルに対し、ベトナムは1万6,385ドルである。
・人口構成の影響: ベトナムの人口が1億人を超えているのに対し、タイは約7,000万人である。ヴー博士は、これを「世帯収入が同じでも、家族数が多いほど1人当たりの生活水準は低くなる」という家族の構造に例え、今後の課題を指摘している。

ベトナムにおけるAIブームと管理・セキュリティへの「二重」の圧力

2026年4月22日

ベトナムはデジタルトランスフォーメーション(DX)において高い適応力を示し、AI(人工知能)の活用が急速に進んでいる。しかし、この技術の台頭は、投資効率の管理不足やサイバーセキュリティリスクの増大という新たな課題を企業に突きつけている。専門家は、受動的な防衛から、データに基づいた能動的な管理戦略への転換を促している。

【AI導入における課題と戦略:投資効率と管理の完成度】
アビームコンサルティング・ベトナム(ABeam Consulting:日本に本社を置くグローバルコンサルティングファーム)の織田遼平総支配人は、日本のAI活用が労働力不足の解消を目的とするのに対し、ベトナムでは人間の能力を補完するツールとしての側面が強いと指摘する。
・管理体制の遅れ: 技術水準は国際基準に近いものの、運用管理の成熟度が追いついていない。特に製造業において、AI統合による効率化の余地が大きく残されている。
・投資の最適化: 目的が不明確なトレンド追随型の投資による資源の浪費が懸念されている。企業は「純粋なベトナム製AI」の開発などを通じて、コスト最適化と国内市場へのカスタマイズを両立させる必要がある。
・法人向けAIの重要性: 情報漏洩を防ぐため、個人向けAIと、セキュリティ制御が強化された法人向け(エンタープライズ)AIを明確に区別して運用することが推奨される。

【深刻化するサイバーセキュリティリスク】 
AIの普及に伴い、サイバー攻撃はより巧妙化している。
脅威の現状: カスペルスキー(Kaspersky:世界的に有名なサイバーセキュリティソリューションの提供企業)のデータによると、ベトナムでは年間2380万件以上のオンライン攻撃が記録され、国内企業の約34%がサプライチェーン攻撃の標的となっている。
攻撃の高度化: 標的型攻撃やAIを悪用した攻撃、モバイルデバイスの脆弱性を突く攻撃が増加し、財務的損失やブランド毀損のリスクが高まっている。

【主動的な防衛策:セキュリティ運用センターの構築と法的遵守】
従来の断片的な防衛策から、統合的な「能動的防衛」への移行が不可欠である。
次世代セキュリティ運用センターの導入: AIを統合したセキュリティ運用センターの構築により、脅威の検知・対応を自動化し、リアルタイムの脅威インテリジェンスを活用する体制が求められる。
コンプライアンス: ベトナムの個人データ保護法の施行に伴い、データ管理は戦略的優先事項となった。セキュリティ運用センターはデータの監視と法的遵守を担保する役割も担う。
具体的対策: ホワイトハッカーによるシステム診断、事案発生時の事業継続計画の策定、および従業員へのフィッシング訓練を通じた意識向上が推奨される。

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