ベトナム不動産市場、海外大手の投資が加速

2026年7月11日

ベトナムの不動産市場において、日本、シンガポール、マレーシアなどの外国企業による投資や地元デベロッパーとの共同開発が活発化している。市場の淘汰が進む中、ベトナム企業の用地確保能力・市場理解力と、外資の資金力・プロジェクト管理能力を組み合わせた提携が主流となっている。新土地法などの法整備による透明性の向上が、さらなる資金流入を後押ししている。

1. 相次ぐ外資による大型案件と資本提携

多くのアジア系デベロッパーやファンドが、数十億米ドル規模の投資を相次いで実行している。

日越共同開発の進展: 日本の大和ハウスグループ傘下のコスモスイニシア、桧家グループ、コテラスパートナーズの日本企業がベトナムのTTCapitalと合弁を組み、ホーチミン市南部で総投資額2兆ドン超(約123億円超)、1,400戸規模の分譲マンションプロジェクト「TT Genesis」を展開する。また、西日本鉄道(西鉄)はナムロン・グループの既存子会社株式49%を取得し、2035年までに低中所得者向け住宅を中心に22,000戸を供給する計画を発表した。このほか、ファットダット不動産とロッテの提携も進んでいる。

シンガポール勢の動向: ケッペル・ランドはカンディエンの2つのプロジェクトに49%出資し、戸建てや高層マンションを共同開発する。カピタランドはベカメックスIDCからビンズオン省の都市開発プロジェクトの一部を約5億3,300万米ドル(約853億円)で買収し、将来的にベトナム国内の資産価値を50億〜70億米ドル規模へ引き上げる方針を掲げている。

マレーシア・米国勢の参入: ガムダ・ランドはこれまでに総投資額50億米ドル(約8,000億円)を超える6つの大型案件を成立させた。UOAグループは6,800万米ドル(約109億円)でホーチミン市内の好立地を買い取り、米国のトランプ・オーガニゼーションもKBCと提携してフンイエン省での高級ゴルフ場複合施設の開発に着手した。

2. 外資誘致の背景と好まれるセグメント

外資がベトナム市場を選好する背景には、構造的な強みと法改正の恩恵がある。

優位性と優先領域: 政治の安定性、高い経済成長率、実需層による旺盛な住宅需要が評価されている。投資対象としては、実需向けの中級マンションや、産業用不動産など、持続可能な長期成長が見込める分野が優先されている。
法整備による後押し: サヴィルズ・ベトナムによると、改正土地法、住宅法、不動産事業法の整備が進んだここ2年間でM&A活動が加速しており、法的な不確実性が解消されたことが投資家の安心感につながっている。

3. 市場への影響とベトナム企業への提言

外資の本格参入は市場の基準を引き上げる一方、国内企業に財務改善を迫る契機となっている。

市場の二極化と淘汰: 資本力があり適切に投資された大型プロジェクトが生活水準を向上させる一方、財務基盤の弱い地場中小企業に対する淘汰圧力が強まっている。
M&A成功に向けた提言: 専門家は、ベトナム企業が外資を呼び込むための必須条件として、①法的手続きの完了、②国際基準に準拠した資産査定(評価)、③柔軟な取引構造の設計、④国際監査を通じた財務の透明性とコーポレート・ガバナンス(企業統治)の確立、の4点を挙げている。

ベトナム公安相、ヤマトホールディングスにザビン空港への投資検討を要請

2026年7月8日

ベトナムのルオン・タム・クアン公安相は、日本のヤマトホールディングスに対し、建設中のザビン国際空港における倉庫・貨物輸送システムへの投資機会の評価、および同空港の運用開始後に向けたベトナム側パートナーとの協力モデルの模索を要請した。ザビン国際空港はハノイ中心部から約40kmに位置するバクニン省に建設中であり、地域をリードする航空輸送拠点への発展を目指している。

1. ハイテク物流分野における協力を評価

クアン公安相は、長尾裕代表取締役社長率いるヤマトホールディングスとの会談において、同グループのベトナムでの取り組みを高く評価した。

● AIラボの設立:ヤマトホールディングスがベトナムのIT大手FPTグループと協力し、ベトナム国内に人工知能(AI)ラボを設立する計画を称賛。
● ハイテク産業への応用:同ラボを通じて、サプライチェーン管理や輸送調整におけるAI・ビッグデータ技術の研究開発を進め、特に半導体などのハイテク産業に特化した物流サービスの展開を目指す。

2. 投資拡大の要請とベトナム市場の潜在力

ベトナム政府は、同国のマクロ経済的優位性を背景に、ヤマトグループによるさらなるインフラ投資を期待している。

● 拠点整備の推進:主要経済地域における大規模な物流センター、金融ハブ、および先進技術を導入した現代的な物流インフラの整備。
● 巨大な市場規模:人口1億人を抱え、世界で最も急成長している電子商取引市場の一つであるベトナムは、物流産業において極めて高い潜在力を有している。

3. 高度人材の採用と今後の展望

二国間の経済連携を深めるため、労働力分野におけるアプローチも提案された。

● ベトナム人エンジニアの登用:規律と高い専門能力を備えた優秀なベトナム人労働者を優先的に採用し、同グループのグローバル展開へと参画させることを提案。
● 日本側の姿勢:ヤマト側は、重要な協力プロジェクトの継続的な調査・実施を通じて、日越両国の関係強化に貢献していく意向を示した。

ハノイ市、2026年の開発目標達成に向け取り組みを加速:下半期にGRDP成長率11%を目指す

2026年7月8日

ハノイ市共産党委員会のチャン・ドゥック・タン書記は、2026年の経済社会目標を完全達成するため、下半期に革新と強い意志を持って取り組むよう指示した。市は2026年通年の域内総生産(GRDP)成長率目標である「11%以上」を据え置き、下半期に開発を加速させる方針である。

1. 2026年の主要経済社会目標

ハノイ市が掲げる今年度の主な開発目標は以下の通りである。

● 経済成長と貿易:GRDP成長率11%の達成、および輸出額12%増。
● マクロ経済の安定:インフレ率を4.5%未満、都市部の失業率を3%未満に抑制。
● 社会開発・医療:訓練済み労働者の割合を75.8%へ引き上げ、全市民への年1回以上の無料定期健康診断・疾病スクリーニングの提供。

2. 2026年上半期の経済実績

上半期、ハノイ市は以下の経済指標を達成し、回復基調を維持した。

● 域内総生産:GRDP成長率は前年同期比8.22%増。
● 国家予算歳入:約410兆ドン(約156億米ドル)に達し、年間目標の62%以上を達成。
● 公共投資:実行額は約64兆ドン(約25億米ドル)となり、首相から割り当てられた計画の53%以上を完了。
● 産業全般:工業、商業、サービス、観光業が順調に回復し、投資環境も改善。

3. 行政改革と中長期的な開発枠組み

第16期国会および各級人民評議会(2026-2031年任期)の選挙を経て、政治体制の刷新とインフラ整備が進められた。

● 行政区画の再編:行政効率化の一環として、村および居住グループの数を5,473から2,729へ半減。
● 首都法の施行:2026年7月1日付で「2026年首都法」を施行し、包括的な決議・決定パッケージを迅速に適用。
● 長期ビジョンの策定:ハノイ市の100年都市計画を発表し、将来的な発展に向けた新しい制度的枠組みと長期的な空間ビジョンを確立。

4. 幹部刷新と責任追及の徹底

タン書記は、トー・ラム党総書記・国家主席の指導指示に基づき、質の高い幹部陣の構築を強調した。

● 責任回避の排除:ミスを恐れて挑戦を避ける、または他部署に責任を転嫁するリーダーや管理職は直ちに更迭する方針を示した。
● イノベーションの保護:厳格な責任追及の一方で、公益のために主体的かつ革新的に行動する幹部は保護・奨励される。評価は具体的な成果、実質的な効率性、および市民の満足度に基づいて行われる。
● 今後の課題:上半期に一定の成果を上げたものの、市の潜在能力や競争優位性を十分に活かしきれておらず、一部のボトルネックの解消や企業・市民からの要望への対応に遅れが見られる点が課題として挙げられている。

ハノイ市、2027年までに3つのスマート病院を建設へ

2026年6月29日

ハノイ市保健局のグエン・チョン・ジエン局長は、2026年6月29日に開催された「ハノイ市包括計画100年ビジョン公表・投資促進会議」の席上、同市におけるスマート医療のロードマップを明らかにした。市は科学技術、イノベーション、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を新たな成長原動力とする「決議第57号」に基づき、2027年までに3つのスマート病院を構築するほか、ドローンを活用した医療搬送などの最先端技術の導入を進める。


1. 医療DXと先端技術の導入計画
ハノイ市保健局はスマート医療アーキテクチャの枠組みを構築中であり、以下の先端技術の導入を具体化している。
救急・搬送のスマート化: スマート院外救急指揮システムのほか、検体や救急機器を搬送するための無人航空機の活用を推進する。
AIの活用と国際連携: 複雑な疾患の診断・治療に人工知能を導入する。同時に、先進的な医療技術の移転・受け入れに向けた国際協力を強化する。
・法改正による権限委譲: 「首都法」の改正に伴い、従来は保健省が管轄していた「外国人医師への免許交付」や「各医療機関における高度専門技術の評価・承認」の権限がハノイ市に委譲された。これにより、医療分野全体における技術導入とDXの迅速化が可能となる。

2. スマート病院のロードマップと投資規模
短期的目標として、市が管理する全病院での「ペーパーレス化(電子カルテ等の完全導入)」を完了させる。
2026〜2027年までに3大病院をスマート化:
・ザンポン病院
・ハノイ腫瘍病院
・タインニャン病院
各病院に対し、スマートシステム構築のため4,000億〜5,000億ドン(約24.0億〜30.0億円)の投資を予定している。すでに日本、中国、台湾、フランスなどのパートナー企業がモデル構築のコンサルティングや協業に参画している。
2030年までにスマート医療アーキテクチャの枠組みを完成させ、包括的な医療DXを達成することを目指す。

3. 100年ビジョンに基づく医療インフラの配置
ハノイ市が策定を進める「100年ビジョン都市計画」に対応し、医療ネットワークの再整備を行う。
成長極との連動: 市が設定した「9つの成長極」の発展方向に合わせ、公立・私立の医療システムを統合的に配置する。                                                  ※成長極:都市開発の核となる開発拠点
職住・都市空間との同期: 新たな都市空間の拡大と同期した医療インフラを整備することで、既存の都心部医療機関の過密状態を緩和し、長期的な住民の保健医療ニーズに対応する。

※ 2026年6月30日時点のベトナムコンバンクの公示為替レートに基づき一括計算。
1 JPY = 166.60 VND

ハノイ市、都市開発マップを再描画:メトロと賃貸住宅を一体とした統合型開発戦略へ

2026年6月26日

ハノイ市は、人口増加、住宅価格の高騰、都心部への過度な集中といった都市課題に対し、公共交通機関と住宅政策を同一の戦略に組み込む新たなアプローチを開始した。市内で同時に着工された5路線の都市鉄道(メトロ)と3件の賃貸用社会住宅(ローコスト住宅)プロジェクトは、単なるインフラ整備にとどまらず、都市空間を拡張し、都心部への依存度を低減させ、持続可能な都市基盤(都市エコシステム)を再構築するための網羅的な施策として期待されている。


1. メトロ網を骨格とした都市形成(TODモデリング) ※TOD:Transit-Oriented Development
ハノイ市は、個別路線ごとの整備から、大規模な公共交通ネットワークの形成へと舵を切った。
 大規模ネットワークの構築: 総延長300km超、ノイバイ国際空港、ハノイ駅、および主要な周辺都市を結ぶ5つのメトロ路線が同時着工された。総投資額は概算で1300兆ドン(約7.79兆円)に達する。
 公共交通指向型開発(TOD)の導入: 従来の自動車・バイク依存型の都市拡大から、メトロ駅周辺に高密度な住宅、学校、病院、商業施設、雇用機会を配置するTODモデルへの移行を目指す。                
 周辺都市・成長極との連結: ベトナム国家大学ハノイ校、ホアラックハイテクパーク、および周辺の衛星都市を結ぶことで、主要な未来の成長極へ住民を誘導し、持続可能な旅客需要の確保と都市の分散化を同時に実現する。
 自発的拡大の抑制と課題: 専門家は、海外(ソウル、東京、シンガポール、ロンドンなど)の先進事例を挙げ、メトロ沿線の土地利用規制を厳格に管理しなければ、インフラ先行による都市の断片化や局所的な超過密を引き起こすリスクがあると指摘している。


2. 賃貸住宅政策による居住機会の最適化と都心集中緩和
メトロによる「空間の拡大」に呼応し、同時に着工された賃貸用社会住宅プロジェクトは、都市のセーフティネットとして機能する。
 アクセシビリティの平準化: メトロ網の拡張により、不動産価値の基準が「都心の立地」から「交通接続性」へとシフトする。これにより、郊外や衛星都市の居住価値が向上し、都心部の地価高騰や不動産バブルの抑制につながる。
 定住と柔軟性の確保: 賃貸住宅は、地方からの流入労働者、工業団地の労働者、若年層の起業家などに対して、初期の住居コストを抑え、ライフステージに応じた移動の柔軟性を提供する。
 格差の縮小: 公共交通機関と社会インフラが均等に配置されることで、職住近接が実現し、医療・教育・雇用へのアクセスにおける地域格差が縮小する。


2026年6月26日時点のベトナムコンバンクの公示為替レートに基づき一括計算。
1 JPY = 166.94 VND

ベカメックスIDC:2026〜2030年の中期投資計画を公表

2026年6月24日

工業団地開発大手のベカメックスIDCは、2026年定時株主総会の補足資料を公表し、2026〜2030年の中期開発計画を明らかにした。同期間中の総投資額は127兆2,970億ドン(約7,614億円)に上り、3,000ヘクタールを超える新世代工業団地、交通インフラ、デジタルトレードセンター、再生可能エネルギー、社会住宅の開発を推進する。また、2025年度の配当率を14%とする計画も合わせて提示された。


1. 2026〜2030年の中期投資
総投資額127兆2,970億ドンの内訳は、自己資本から12兆2,340億ドン(約731.8億円)、外部調達資金から36兆3,160億ドン(約2,172.3億円)などを充当する。

主な投資セクターは以下の通り。
・新世代工業団地(FS段階)
・投資方針承認済みの工業団地
・主要交通インフラプロジェクト
・ビンズオン省の集中型デジタルトレードセンター
・社会住宅(ソーシャルハウジング)
・再生可能エネルギー


工業団地セクターでは、生産施設の移転や都市再開発の需要に対応するため、3,000ヘクタール以上の規模で開発を展開する。具体的には、バウバン工業団地拡張フェーズ2およびカイチュオン工業団地の2プロジェクトが進められており、法的手続きが完了して営業活動が本格化する2026年末から2030年にかけて、同セクターの売上高は段階的に拡大する見通しである。

交通インフラセクターでは、ホーチミン市のトゥドーモット~チョンタイン高速道路、国道13号線、ホーチミン首都圏外郭環状道路4号線、ミーフロックータンヴァン道路などの主要案件に参画する。インフラ関連の総投資額約3,901.8億円のうち、同社が建設・設置工事(約2,086.7億円)を担い、政府が立ち退き・用地収用(約1,815.1億円)を実施する。

また、中長期の戦略インフラとして、チョンタインーバウバンーアンビンーカイメップ間の高架貨物・旅客鉄道計画にも言及している。

2. 財務目標
中期計画期間中、売上高および税引後利益の年平均成長率10%の維持を目指す。
売上高を2026年の約493.5億円から2030年には約721.9億円へ拡大。税引後利益は約137億円から約200.6億円への成長を計画。

※2026年6月25日時点のベトナムコンバンクの公示為替レートに基づき計算。
1 USD = 26,456 VND
1 JPY = 167.15 VND
(算出レート:1 USD = 158.24 JPY)

ホーチミン市、都市鉄道開発にPPP方式を導入:2030年までに200km整備へ

2026年6月15日

ベトナム・ホーチミン市は、国家予算や政府開発援助のみに依存する従来の鉄道投資モデルから脱却し、官民連携方式(PPP方式:Public Private Partnership)を活用して民間資金を呼び込む戦略を進めている。市は交通結節点開発(TOD:Transit-Oriented Development)を軸とした都市空間の再構築を目指しており、2030年までに約200km、2045年までに網羅的な都市鉄道(メトロ)網を完成させる計画である。これを実現するため、リスク分担や周辺土地開発といった新たな利益配分方法の構築が急務となっている。
【背景と民間企業の参入動向】
2024年12月に開業したメトロ1号線(ベンタイン~スオイティエン間)に続き、市は2035年までに総延長355kmのメトロ網を整備する目標を掲げている。2030年までの優先6路線(総投資額推計190億米ドル超)に対し、国内主要企業がPPPや直接投資による参画・研究を表明している。

主な民間企業の提案・進捗動向:
タコグループ(Thaco): メトロ2号線(ベンタイン-トゥーティーム間)を2026年4月に着工。トゥーティーム-ロンタイン間鉄道も同年7月に着工予定。
・ビングループ(Vingroup): ベンタイン-カンゾー間のメトロ投資を研究中。
・ソビコグループ(Sovico)およびマステライズグループ(Masterise): それぞれメトロ4号線、3号線へのPPP方式等での参画を提案。
ベカメックス(Becamex): バウバン-カイメップ間の国家鉄道投資案を研究中。

【収益性の課題と打開に向けた3つのボトルネック】
都市鉄道は高速道路のような直接の料金徴収による投資回収が難しく、運賃収入だけでは建設・運営・保守コストを賄えない。専門家は、PPP投資を現実化するために以下の3点の実効的な解決を提唱している。
・リスク分担メカニズムの構築: 開業初期の需要不足による減収分を政府が補填、または運営費を補助するリスク配分制度。
TODによる収益多角化: 駅周辺の商業・オフィス・住宅開発権を民間投資家に付与し、鉄道事業の赤字を補填する仕組み。
適切な財務管理と利益率の設定: 鉄道投資に対する適正な目標利益率を明確にし、民間資金をコントロールする。

【制度的優位性と今後の提言】
ホーチミン市は、国会決議(決議第98号および決議第188号)により、土地収用やTOD開発に関する多くの特権的な制度を認められている。
土地収用の分離: 民間投資家が最も懸念する遅延リスクを避けるため、市が公的資金または地方債を用いて「クリーンな土地」を確保した上で、民間側に引き渡す方式が推奨されている。
海外事例の導入: シンガポールや香港のように、鉄道整備に伴う開発利益を民間側が回収・還流できるモデルを容認することで、企業の初期投資負担を軽減し、公共交通としての持続可能性を担保することが求められている。

ベトナム政府、2026-2030年デジタル経済・社会発展プログラムを承認:データとAIを軸に新生産様式へ

2026年6月12日

ベトナム政府は、デジタルプラットフォーム、データ、および人工知能(AI)を基盤とした動的なデジタル経済の構築を目指す「2026〜2030年デジタル経済・社会発展プログラム(政令第1033/QĐ-TTg号)」を承認した。本プログラムは、新たな生産様式を確立して成長モデルを刷新し、労働生産性の向上と持続可能なグリーン成長を推進するとともに、安全で誰もが利用しやすいデジタル社会の実現を目的としている。


2030年までの主要な数値目標】
デジタル経済:
GDP寄与度: デジタル経済の付加価値比率をGDPの約30%に引き上げる。
企業支援: 最低50万社の中小企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する。
産業育成: 先進国水準のデジタル技術企業を最低5社育成し、データ取引プラットフォームを最低5つ実用化する。
その他: キャッシュレス決済額をGDPの30倍に拡大し、高等教育におけるSTEM分野の定員比率を40%に高める。                                       ※STEM分野:Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4つの理系学問領域の総称
デジタル社会:
通信インフラ: 光ファイバーブロードバンド(速度1Gb/s)の世帯カバー率を100%にし、5G(速度100Mb/s以上)の人口カバー率を99%にする。
デジタルID・決済: 14歳以上の全市民への電子身分証明アカウント付与、15歳以上の銀行口座保有率95%以上、18歳以上のデジタル署名保有率70%以上を達成する。
人材育成: 労働年齢層の最低1,000万人次に対して基本的なデジタル能力向上のトレーニングを実施する。


【重点的な施策とタスク】
目標達成に向け、以下の項目を含む15の主要施策が提示された。
法制度・統計の整備: データ経済の発展や新たな経済モデルに対応するサンドボックスの導入、デジタル経済の統計・測定手法の確立。                                 ※サンドボックス:プログラムを安全に実行・検証するための外部から隔離された仮想的な領域
デジタルインフラの刷新: 国が戦略的・公共的なデジタルインフラ投資を主導し、5G、低軌道衛星インターネット、AI対応のクラウドやデータセンターインフラを拡充する。
共通プラットフォームの構築: 国内企業が主導するデジタルエコシステムを構築し、リアルタイムデータシステムの形成やAPIの開放を進める。
データ経済の活性化: 国家および分野別のデータベースを拡充し、官民のデータ連携を促進。データ資産の所有権や価値分配に関する政策を整備し、データ取引所や越境データフローの試験運用を行う。
・AI活用の推進: 各省庁・分野でAIを用いた重点課題の解決を図り、中小企業のAI導入を支援する。ただし、AI倫理、安全、およびプライバシー保護の原則を厳守する。
サイバーセキュリティの強化: 設計・開発段階から安全性を担保する「セキュリティ・バイ・デザイン」を導入し、AIやブロックチェーンなどの新技術に対する安全基準を策定する。
包括的な人材・市民の育成: 高度デジタル人材の育成、VNeIDの機能拡張、およびデジタル技術が社会・文化に与える負の影響の制御。                           ※VNeID:ベトナムにおけるデジタル身分証明システム(ベトナム版マイナンバー)

1 2 3 4