2026年10月8日
ベトナム商工省(MOIT)は、競争的な電力市場の発展に向け、ベトナム電力グループ(EVN)から国家送電総公社(EVNNPT)を早期に分離し、省庁の管理下に移管する方針を示した。10月7日に開催された記者会見にて、商工省電力局のブイ・クオック・フン副局長が明らかにした。なお、給電指令を担う国家電力系統・市場運用会社は、既にEVNから分離され、商工省の管理下に移管されている。
発電部門と国家戦略発電総公社の設立構想
発電部門についてフン副局長は、再編計画に基づき、EVN傘下の発電総公社5社の株式会社化と国家資本の撤退を継続すると述べた。
同時に、当局は「国家戦略発電総公社」の設立を検討しており、当面はEVN傘下に置く。長期的にはソンラやホアビンなどの多目的戦略水力発電所や、将来の原子力発電プロジェクトを同公社に組み込む予定である。
配電・小売部門の段階的な分離
配電および小売部門については、現在EVN傘下の電力総公社5社に混在している両活動を段階的に分離する。初期段階で配電と小売の費用を分離し、その後、組織と所有権の分離を実施する方針である。
フン氏は、各機関の財務能力やリスク管理能力を確保し、競争的な電力卸売・小売市場の発展基盤を構築するためには、再編をロードマップに沿って実行する必要があると強調した。
電源および電網開発の現状と課題
同記者会見では、電源および電網の開発が計画より遅れていることも報告された。最初の9か月の実際の電源容量増加は約3.5%にとどまり、目標の6.6%を下回っている。
電力局の幹部によれば、第8次国家電力マスタープラン(PDP8)およびその調整版では、需要を満たす電源と電網の計算がなされている。しかし、多くのプロジェクトの実際の進捗は、投資家の選定、土地収用や立ち退き、電力売買契約の交渉、価格メカニズムなどの手続きによって影響を受けている。
フン氏によると、電気料金を含む一部の政策が、民間や海外投資家にとって十分に魅力的なものではないという。その一方で、電源プロジェクトへの資金需要は非常に大きく、国家、民間、国際投資家からの資源動員が強く求められている。
電力供給確保に向けた今後の解決策
これに対し商工省は、2027〜2030年の電力供給確保に向けた解決策の全体報告書を政府に提出した。解決策の1つとして、PDP8の継続的な調整、および供給ニーズに応じた電源・電網の再構築を挙げている。
また、同機関は10月17日開幕予定の国会に電気法改正案を提出し、電源・電網投資の障壁を取り除くためのメカニズムを設ける方針である。同時に、計画に盛り込まれたプロジェクトの実施、特に投資手続きや土地収用・立ち退きにおいて地方自治体の責任を強化することを提案している。
2026年10月7日
ベトナム民間最大手ビングループは10月6日、鉄道車両・インフラ世界大手の仏アルストムと、車両供給および技術移転に関する契約を締結した。ハノイ市の都市鉄道(メトロ)網向けに次世代型「メトロポリス」計200編成を導入する計画で、そのうち117編成をベトナム国内で製造・組み立てる方針である。
契約内容と車両スペック
導入される車両は5両編成の次世代モデルで、安全性と省エネ性能を追求した設計となっている。
・軽量化と高積載: 車体にアルミニウム合金を採用し、軸重低減により軌道への負荷軽減と省エネを実現。幅広設計で車内空間と収容力を最大化した。
・高水準の自動運転: 最高レベルの完全自動無人運転に対応。回生ブレーキとディスクブレーキを併用し、減速時のエネルギー回収と安全性を両立する。
・生産体制の分担: 先行する83編成はフランスのバランシエンヌ工場で製造。残り117編成については、アルストムが重要部品の供給や技術移転、設備導入を支援し、ビングループが国内での組み立て・生産を担う。
国内鉄道産業の自立とハノイのインフラ構想
本契約は単なる車両調達にとどまらず、ベトナム国内における鉄道製造能力の構築を目的としている。長期的には、製造や組み立てから保守管理に至るまで、グローバルな鉄道産業バリューチェーンへの参入を見据える。
ハノイ市は2045年までの都市マスタープランにおいて、計18路線・総延長約979kmにおよぶ東南アジア有数の規模のメトロ網整備を掲げている。子会社ビンホームズを通じてハノイのメトロ事業の総合請負業者を務めるビングループは、先進技術の国産化を進めることで、首都の交通渋滞緩和や環境改善に貢献するとともに、将来の高速鉄道計画も見据えた国内鉄道産業エコシステムの基盤づくりを目指す。
2026年9月30日
ベトナム・ハティン省のヴンアン経済区で、産業、港湾、物流を中心とする新たな投資余地の拡大が進んでいる。政府は2026年8月5日、2050年までを見据えた同経済区の基本計画修正を承認した。
修正計画では、既存の約2万2,781haを対象に、工業、港湾、物流サービス向けとして1,800ha超の土地を追加確保する。ヴンアン経済区は、沿岸型の複合経済区として、ハティン省および周辺地域の成長拠点、工業・エネルギーの重要拠点、同省南部の都市拠点として位置付けられている。
計画承認後、ハティン省経済区管理委員会は8月11日に計画を公表し、具体化に向けた実施計画の策定を進めている。対象地域では、土地管理や建設秩序の確保、主要インフラ整備に向けた用地取得・立ち退きが重点課題となっている。
計画修正を受け、加工・製造業、港湾、物流分野では大型投資案件も浮上している。特に、ビングループが3カ所の工業団地に加え、ソンダウン港湾後背地の物流・サービスセンターを整備する計画を提案しており、同センターの敷地面積は417.81ha、想定投資額は約40兆ドンである。
さらにハティン省は、ヴンアン経済区を約7万2,998haまで拡張する案を政府に提出している。これは同省の2021~2030年の省計画および2050年までの長期方針との整合を図るものである。
今後は、詳細なゾーニング計画の策定と、地域交通、港湾、物流、技術インフラなど基盤施設の整備を優先する。行政手続きの簡素化や投資案件の選定も進め、規模が大きく、技術水準が高く、付加価値の高い事業の誘致を図る方針である。ヴンアン経済区では、計画の具体化とインフラ整備を通じ、産業・港湾・物流を軸とした開発が本格化する段階に入っている。
2026年9月22日
科学技術省のレー・スアン・ディン副大臣は9月21日、カインホア省で開かれた原子力発電に関するセミナーで、ベトナムが原子力発電計画を進めるには、法的枠組みの整備、人材育成、国内の関連産業の発展を早急に進める必要があると述べた。
同副大臣は、原子力発電は安定した電力供給、高い設備利用率、低い炭素排出量という特徴があり、再生可能エネルギーの比率が高まる電力システムを支える役割を持つと説明した。2024年末には国会が、8年間停止していたニントゥアン原子力発電計画の再開方針を決定している。
同氏によると、原子力発電は単なるエネルギー事業や技術選択ではなく、安全保障、人材、インフラ、資金、規制などを含む長期的な国家規模のプログラムである。そのため、国際基準に沿って慎重かつ透明性のある準備を進める必要がある。
現在の最優先課題は、原子力発電所の全ライフサイクルを対象とする法制度、規則、技術基準の整備である。各機関の権限と責任を明確化するとともに、規制当局が審査、許認可、監督を行える専門性と十分な資源を確保することが求められる。
人材育成も重要な課題である。2025年5月に承認された人材育成計画では、2030年までにニントゥアン1号・2号原子力発電所の運営などに必要な約4,000人を確保し、そのうち2,000人以上を大学・大学院レベルとする目標が設定されている。国内外の専門家を活用し、研究機関や大学による独立した技術支援体制を構築することも必要とされる。
また、建設、機械、技術サービスなどのサプライチェーンに国内企業が参加できる環境を整え、国内の原子力関連産業を段階的に形成することも課題となっている。
ニントゥアン1号はベトナム電力公社、2号はベトナム国家産業エネルギーグループ(ペトロベトナム)が投資主体となり、それぞれ2基の原子炉を建設する計画である。カインホア省では用地取得や住民移転への対応が進められており、共用インフラとして道路、港湾、給水、送電、デジタル、医療などの整備も求められている。
セミナーでは、中央政府、地方政府、投資主体の役割分担を明確にし、安全文化の確立、最新技術の導入、国際的な知見の活用を重視すべきだとの意見も示された。
2026年9月15日
工業団地開発を手掛けるキンバック都市開発総公社は、ベトナム北部フンイエン省で、トランプ・オーガニゼーションと総投資額15億ドル規模のゴルフ複合施設を開発している。同社は工業団地事業に加え、観光・サービス、高度技術分野へ事業領域を広げる方針である。
1.工業団地からサービス業へ
キンバックのダン・タイン・タム会長は9月15日の企業向け討論会で、同社が国内30カ所以上で工業団地を展開していると説明した。
同会長によると、同社の工業団地は年間約100億ドルの外国直接投資を呼び込み、約7万5,000人の新規雇用を生み出している。ただし、これらは同社側が示した数値である。
タム会長は、製造業中心の開発には限界があるとして、継続的な収入が見込める観光・サービス分野へ投資を広げる考えを示した。
2.ゴルフを核に観光開発
ゴルフ複合施設は、フンイエン省の歴史都市フォーヒエン周辺で建設中である。計画はゴルフ場単体ではなく、紅河沿岸の観光、サービス、関連開発を組み合わせた複合事業を想定する。
タム会長は、文化や自然環境を観光資源として活用し、外貨収入と雇用の創出につなげる方針だと説明した。
3.「AI City」構想も提案
同社はフンイエン省で、ベトナム商工会議所と「AI City(人工知能都市)」の整備を提案している。構想の中心は、新世代データセンターを含む「AI Factory」であり、人工知能を住宅や都市サービスに組み込む計画である。現時点では提案・試験段階であり、具体的な投資額、規模、事業日程は示されていない。
タム会長は、同社が衛星通信サービスStarlinkのベトナム国内パートナーに選ばれたと述べた。AI関連施設には高速で安定した通信回線が必要なため、AI Cityの通信基盤として活用する考えである。
同社は今後、既存の工業団地を基盤としながら、観光、データセンター、AI関連都市開発へ事業を多角化する方針である。
2026年9月8日
ベトナムの第8次国家電力開発計画によると、ラムドン省は風力、太陽光、新エネルギーの開発余地が大きい地域である。省西部では、農業と組み合わせた屋根置き太陽光発電を中心に、電源の多様化が進んでいる。
1.クージュットで太陽光発電が拡大
ラムドン省のクージュット地区には、農業生産向け屋根置き太陽光発電設備が38件、総設備容量136MWp(メガワットピーク)の太陽光発電所が2カ所ある。
2026年上半期、再生可能エネルギーは、同地域の工業・手工業分野の推定生産額9,000億ドン超に大きく寄与した。クージュット地区人民委員会のゴー・クオック・フォン主席は、行政機関と連携し、太陽光発電事業の課題解決を進める方針を示した。
2.農業と自家発電を組み合わせ
ダクミル地区では、畜産施設の屋根に太陽光発電設備を設置する事例がある。地元住民のグエン・タン・フン氏によると、自家発電により畜産と従業員の生活に必要な電力を確保し、猛暑期の投入費用を削減できるという。
同地区人民委員会のグエン・クオック・ズン主席は、電力網への接続率は100%である一方、遠隔地や新たな集中生産地域では追加投資が必要だと説明した。既存の電力網を補完するため、適切な地域で太陽光発電を促進する考えである。
クージュットとダクミルを含むラムドン省西部の28地区では、太陽光をはじめとするグリーンエネルギーの開発余地がある。各自治体は、屋根置き太陽光発電や公共照明の利用を促すとともに、事業手続き上の問題への対応を進めている。
3.電源と送電網の一体整備が課題
2021~2030年の省計画改定案では、電源、送電網、関連インフラを一体的に整備し、経済成長とエネルギー安全保障に対応する。
対象分野は、風力、太陽光、バイオマス発電、グリーン水素・アンモニアである。ただし、事業の導入には、電力系統の受入能力と送電容量を考慮する必要がある。屋根置き太陽光については、自家消費型の普及を優先する方針である。
2026年8月30日
ベトナムでは都市鉄道とTOD(公共交通指向型開発)の整備が進み、住宅の評価基準は、購入価格や中心部までの距離だけでなく、移動時間と交通費を含む「生活の総コスト」へ広がりつつある。ただし、メトロ付近の全物件が同様に恩恵を受けるわけではない。※TOD: Transit- Oriented Development
1.大都市圏で鉄道網を拡張
ハノイでは約18路線、総延長約979キロの都市鉄道網を計画している。既存路線に加え、ニョン―ハノイ駅線は2027年12月の全線開業を予定し、新たな5路線も2030年までの基本完成を目指す。
ホーチミン市と周辺地域では約28路線、約1,100キロを計画する。1号線は開業済みで、2号線は着工している。2026年末までには計約138.8キロの4事業も着工予定である。
高速鉄道では、ハノイ―クアンニン線とベンタイン―カンゾー線が2028年末の運行開始を予定している。
2.物理的な近さだけでは不十分
TODの効果を決めるのは、駅までの距離ではなく、実際の移動のしやすさである。物件が駅から500メートルでも、歩道、横断設備、バス接続が不足すれば利便性は限定される。
評価には次の要素が重要である。
・駅への徒歩アクセス
・バスなど他の交通手段との接続
・周辺の雇用、学校、商業、生活サービス
・毎日の移動経路との適合性
・都市空間と歩行環境の質
3.郊外住宅に選択肢が拡大
公共交通の利用により燃料代、駐車料金、車両維持費などを月400万ドン(約2万4,000円)削減できる場合、節約額は10年間で4億8,000万ドン(約285万円)、20年間で9億6,000万ドン(約570万円)となる。さらに通勤時間の短縮は、仕事、家族、休息に使える時間を増やす。
このため、住宅価格が比較的低く、メトロとの接続性が高い郊外・衛星都市は、初回購入者や予算の限られた世帯の選択肢となり得る。
4.将来価値の先取りには注意
メトロの効果は、開業時期、接続性、周辺サービス、実際の移動需要によって異なる。「駅近」や「TOD予定」だけで価格上昇を判断すべきではない。特に未完成・計画段階の路線では、将来のインフラ価値が現在価格へ過度に上乗せされていないか確認する必要がある。
※円換算額は、2026年8月31日の提示売却レート(1円=168.55ドン)に基づく概算である。
2026年8月28日
ベトナム北部のフンイエン省は、大規模な工業団地計画、物流網、高度人材へのアクセスを基盤に、ハイテク産業と高付加価値型の外国直接投資(FDI)の誘致を進めている。
1.国内最大規模の工業用地を計画
省計画では、計9,588.63ヘクタールの工業団地30カ所を整備し、2030年以降にさらに5カ所、2,460ヘクタールを追加する方針である。
2021~2030年(2050年までのビジョンを含む)の省・市計画案によると、将来の工業用地は計1万5,798ヘクタールで、全国最大となる見通しである。計画が実施されれば、生産拠点の拡大と国際的なサプライチェーンへの参入が進む可能性がある。
2.物流、人材、投資選別が基盤
フンイエン省はハノイ南東部に位置し、ハノイ―ハイフォン高速道路、国道5号線、環状4号線を通じて、ラックフェン国際港やノイバイ国際空港へ接続できる。
また、低廉な労働力への依存から脱却し、半導体、ハイテク、精密製造などを優先する方針である。行政手続きの改善、ESG(環境・社会・企業統治)基準の導入、自由経済区構想も進めている。
ハノイに近いため、地元の技術労働者に加え、専門家や技術者を確保しやすい点も特徴である。
3.工業団地は複合型へ移行
新規工業団地では、賃貸用地、完成済み工場、倉庫、保税倉庫などを一体的に整備する動きがある。専門家・労働者向け住宅、サービス施設、緑地などを併設し、企業の操業と人材定着を支援する構想である。
今後の競争力は、工業用地の規模だけでなく、交通インフラ、環境対応、人材供給、運営効率を備えた持続可能な生産環境を構築できるかに左右される。