ベトナム財務省、証券市場の発展に向け日本で実務協議:改正証券法案への反映を目指す

2026年7月14日

2026年7月14日、ベトナム財務省のグエン・ドゥック・チー次官率いる代表団は東京で日本の金融庁および証券取引等監視委員会と会談した。本会合は、ベトナム「改正証券法案」の起草に向け、日本の証券市場管理や新商品開発の知見を吸収することを目的に行われた。


1. ベトナム証券市場の現状と市場昇格目標
市場の成長: ベトナムの株式時価総額はGDP比80%を超え、重要な中長期の資金調達チャネルとして定着している。
新興市場への昇格: 現在、FTSE(英国の株価指数・市場分類会社)によるフロンティア市場から「新興国市場(エマージング・マーケット)」への格上審査を進めており、外資誘致に向けた法整備を急いでいる。

2. 日本の「サンドボックス制度(新たな金融商品・サービスを試験的に実証できる制度)」と人材育成の知見                                               
ベトナム側は、新商品・サービスの導入を視野に、日本の先進的な監督・試験制度に関心を示した。
金融庁の対応と提言: 金融庁の岡田大・政策立案担当副長官は、投資家保護と金融システムの安定・安全確保を最優先としつつ、金融イノベーションを促進する日本のサンドボックス制度について説明した。
伴走型の支援体制: 日本のサンドボックス制度下では、実験プロジェクトであっても現行法の枠組みを遵守する必要があり、規制当局は事業のアイデア構築段階からガイダンスや支援を提供し、企業に伴走する役割を果たす。
高度人材の育成: 専門知識と高い倫理観を備え、投資家の信頼を獲得できる人材を育成するためには、規制当局、金融機関、および民間セクターが長期にわたり緊密に連携する必要があることが共有された。         

3. 高度技術に関わる協議
会合の後半および同日の別日程では、最新技術の規制や市場インフラに焦点を当てた具体的な議論が行われた。
高度技術・アセットへのアプローチ: 双方の専門家は、サンドボックスの法的根拠や成功モデルの法制化プロセスに加え、AIやデジタル資産を活用した金融サービスへの規制、アルゴリズム取引の監視メカニズムについて意見を交わした。
関連機関との連携: ベトナム代表団は同日、日本取引所グループを訪れ、アルゴリズムやAIなどの新技術を用いた取引監視規則や電子取引インフラの構築について協議した。また、日本証券業協会とも会合を持ち、証券専門職の能力向上、証券会社によるサービスの多様化、および顧客向け新技術の応用に関する管理政策について議論を重ねた。

ベトナム不動産市場、海外大手の投資が加速

2026年7月11日

ベトナムの不動産市場において、日本、シンガポール、マレーシアなどの外国企業による投資や地元デベロッパーとの共同開発が活発化している。市場の淘汰が進む中、ベトナム企業の用地確保能力・市場理解力と、外資の資金力・プロジェクト管理能力を組み合わせた提携が主流となっている。新土地法などの法整備による透明性の向上が、さらなる資金流入を後押ししている。

1. 相次ぐ外資による大型案件と資本提携

多くのアジア系デベロッパーやファンドが、数十億米ドル規模の投資を相次いで実行している。

日越共同開発の進展: 日本の大和ハウスグループ傘下のコスモスイニシア、桧家グループ、コテラスパートナーズの日本企業がベトナムのTTCapitalと合弁を組み、ホーチミン市南部で総投資額2兆ドン超(約123億円超)、1,400戸規模の分譲マンションプロジェクト「TT Genesis」を展開する。また、西日本鉄道(西鉄)はナムロン・グループの既存子会社株式49%を取得し、2035年までに低中所得者向け住宅を中心に22,000戸を供給する計画を発表した。このほか、ファットダット不動産とロッテの提携も進んでいる。

シンガポール勢の動向: ケッペル・ランドはカンディエンの2つのプロジェクトに49%出資し、戸建てや高層マンションを共同開発する。カピタランドはベカメックスIDCからビンズオン省の都市開発プロジェクトの一部を約5億3,300万米ドル(約853億円)で買収し、将来的にベトナム国内の資産価値を50億〜70億米ドル規模へ引き上げる方針を掲げている。

マレーシア・米国勢の参入: ガムダ・ランドはこれまでに総投資額50億米ドル(約8,000億円)を超える6つの大型案件を成立させた。UOAグループは6,800万米ドル(約109億円)でホーチミン市内の好立地を買い取り、米国のトランプ・オーガニゼーションもKBCと提携してフンイエン省での高級ゴルフ場複合施設の開発に着手した。

2. 外資誘致の背景と好まれるセグメント

外資がベトナム市場を選好する背景には、構造的な強みと法改正の恩恵がある。

優位性と優先領域: 政治の安定性、高い経済成長率、実需層による旺盛な住宅需要が評価されている。投資対象としては、実需向けの中級マンションや、産業用不動産など、持続可能な長期成長が見込める分野が優先されている。
法整備による後押し: サヴィルズ・ベトナムによると、改正土地法、住宅法、不動産事業法の整備が進んだここ2年間でM&A活動が加速しており、法的な不確実性が解消されたことが投資家の安心感につながっている。

3. 市場への影響とベトナム企業への提言

外資の本格参入は市場の基準を引き上げる一方、国内企業に財務改善を迫る契機となっている。

市場の二極化と淘汰: 資本力があり適切に投資された大型プロジェクトが生活水準を向上させる一方、財務基盤の弱い地場中小企業に対する淘汰圧力が強まっている。
M&A成功に向けた提言: 専門家は、ベトナム企業が外資を呼び込むための必須条件として、①法的手続きの完了、②国際基準に準拠した資産査定(評価)、③柔軟な取引構造の設計、④国際監査を通じた財務の透明性とコーポレート・ガバナンス(企業統治)の確立、の4点を挙げている。

ベトナム、民間資産を新たな経済資金源へ:ウェルスマネジメント市場の構築と金融センター構想

2026年7月1日

ベトナムは、急速に拡大する国内の民間資産を新たな経済投資の原動力へと転換する方針を強めている。政策立案者や専門家は、従来の銀行融資や社債発行に依存した資本調達の限界を解消し、将来的な国際金融センターの地盤を強化するため、近代的なウェルスマネジメント・セクターの構築を提唱している。


1. 資本調達のボトルネックと民間資産の潜在力
ベトナム経済は、今後5年間で年間約500億米ドル(約8兆円)の投資資金不足に直面すると予測されている。
伝統的調達手段の限界: 銀行による貸出や社債発行といった従来の資金調達チャネルが圧迫される中、国内の民間資本を生産的な投資へ動員するメカニズムとしてウェルスマネジメントが注目されている。
富裕層の急増と資本流出の課題: ベトナムは中間層の台頭を背景に、2030年までに超富裕層の増加率が世界最高水準になる見通しである。しかし現状では、高度な金融サービスの不足により、多くの資産が非効率に投資されるか、海外へ流出している。


2. 市場開放に向けた3つの構造改革
専門家は、潜在的な民間資本を解き放つために以下の3つの構造的アプローチが必要であると指摘する。
専用の法枠組みの整備: 資産管理ビジネスを包括的に統制・保護する法制度の確立。
投資商品の多様化: プライベート・ファンドや信託構造などの多様な選択肢の拡充。
・専門人材の育成: 国際資格を保有する専門的なウェルスアドバイザーの育成。


3. 信頼性の高い投資環境の構築と金融センターの活性化
資金を国内に留め、長期投資へと誘導するためには、インフラとしての信頼性の担保が不可欠である。
資産保護と守秘義務の強化: 厳格な法的安全保障と顧客情報の機密保持を徹底することで、国内富裕層の資本を国内に定着させ、海外からのオフショア資産を呼び込む契機とする。
資本市場の深化と都市開発: ターゲットを絞った税制優遇措置や明確な規制体系の導入により、何十億米ドル規模の民間資産が長期投資へ流入する。これにより、銀行クレジットへの過度な依存を分散させ、ホーチミン市およびダナン市における「国際競争力を持つ金融センター」の構築を後押しする。

VN30指数の外国人投資家枠:枯渇銘柄と十分な余力を残す銘柄の二極化

2026年6月23日

FTSEラッセルによる2026年9月の準新興国市場への格上げを前に、ベトナム株式市場の大型株で構成される「VN30指数」採用銘柄の外国人投資家保有制限枠の残高において、二極化が鮮明となっている。

一部の銘柄は強い需要により枠がほぼ枯渇している一方、別の銘柄には大規模な海外資金を受け入れる十分なバッファーが残されている。格上げ後に見込まれる数十億ドル規模のグローバル資金の流入において、この外国人枠の残存状況が各銘柄へのポートフォリオ組み入れを左右する決定要因になるとみられる。


1. 外国人枠に大きな余力を残す銘柄
法定の外国人保有比率上限を100%まで撤廃した企業を中心に、広大な受け入れ余地が存在している。
主要な空き枠上位銘柄: マサングループ(MSN)が約75%の空き枠を残しているほか、サイゴン証券(SSI)が68%、ビナミルク(VNM)が51%の余力を有している。
その他の中大型銘柄:ビンソン製油(BSR)、ペトロベトナムガス(GAS)、ビングループ(VIC)、ビンホームズ(VHM)、ビンパール(VPL)、サイゴンビール・アルコール飲料総公社(SAB)の各銘柄でも、41%から50%近くの外国人枠が未消化のまま残されている。
実質的な流動性の留意点: ただし、国営企業や大手グループの親会社・子会社(VHM、VPLなど)の場合、大株主の固定保有分があるため、海外の一般投資家が市場で実際に取得できるフリーフロート(浮動株)ベースの枠は、名目上の数値より低くなる。


2. 外国人枠が枯渇・逼迫する銘柄
対照的に、リテール大手や大手商業銀行セクターでは、外国人枠が事実上の限界に達している。
枠枯渇の代表例: モバイルワールド(MWG)の残存枠はほぼ0%である。また、軍隊商業銀行(MBB)、テクコムバンク(TCB)、国際商業銀行(VIB)の空き枠もわずか1%程度にとどまる。さらにLPバンク(LPB)が約4%、ベトインバンク(CTG)が5%となっている。
銀行セクター全体の動向: アジア商業銀行(ACB)、HDバンク(HDB)、VPバンク(VPB)、TPバンク(TPB)、ベトコムバンク(VCB)などの主要行も、空き枠が6〜10%と極めて限定的である。
逼迫の背景: ベトナムの現行法制上、銀行セクターの外国人保有比率の上限が原則30%(特例で49%)に制限されていることが一因である。同時に、海外のアクティブファンドやETF(上場投資信託)から、ベトナムの銀行セクターが中長期的な成長産業として高く評価されている証拠でもある。


3. 市場格上げ後の資金流入への影響と今後の構造改革
外国人枠の枯渇は企業のコーポレートガバナンスや透明性が評価されている兆候である一方、新規資金のアクセスを阻害するボトルネックにもなる。
格上げ後の選好性: 新興国市場への格上げ後、大型株で流動性の高いVN30銘柄は海外資金の筆頭ターゲットとなる。その際、資金を直接投入できる空き枠の大きな銘柄が優先的に選好される可能性が高い。逆に、MWGや主要銀行など枠が枯渇している銘柄は、追加資金の吸収に制限が生じる。
市場インフラの整備: ベトナム市場ではこの課題を解決するため、タイの制度をモデルとした「議決権なき預託証券」の導入や、新たな決済・取引メカニズムの構築など、外国人投資家のアクセス性を改善する市場インフラの整備が急務となっている。

※2026年6月24日時点のベトナムコンバンクの公示為替レート基づき計算。
1 USD = 26,451.00 VND
1 JPY = 167.21 VND
(算出レート:1 USD = 158.19 JPY)

ベトナム銀行部門の期間ミスマッチ:短期資金による長期融資の限界と課題

2026年6月21日

ベトナムの銀行業界では、短期預金を中長期ローンの原資とする「期間ミスマッチ」が限界に達しつつある。流動性リスクと金利高止まりの温床となっており、専門家は銀行への過度な依存から脱却し、インフラ債等の資本市場を通じた直接金融へのシフトが急務だと指摘する。


1. 拡大する資産・負債の乖離
貸出の長期化と預金の短期化という逆行現象が顕著になっている。
貸出の長期化: 中長期融資の比率が約47.4%に上昇(2026年第1四半期)。特に5年超の長期貸出は2019年の194万兆ドン(約11.6兆円)から2025年には459万兆ドン(約27.4兆円)へと約2.36倍に急増した。
預金の短期化: 資金調達の約40〜50%を6ヶ月未満の短期預金に依存。一方、5年超の長期預金は2021年の約323兆ドン(約1.93兆円)から激減し、現在はほぼゼロ(数百億ドン規模)となっている。
システムへの影響: 銀行は常に短期の債務履行義務に追われている。流動性確保のための預金獲得競争が常態化し、政策金利が安定しても調達コスト(COF)が下がりにくい構造を生んでいる。

2. 企業のリファイナンス(借り換え)リスク
インフラやエネルギー分野(回収期間15〜20年)の長期資金需要に対し、企業は市場から直接調達できず短期借入(比率約50%)で凌いでいる状況である。市場変動時に銀行が融資を引き締めれば、企業は借り換えができず債務再編に追い込まれるリスクが高い。


3. 構造的解決策としてのインフラ債市場
銀行のミスマッチ負担を軽減するため、国家証券委員会(SSC)は官民連携(PPP)プロジェクト向けの公募債発行に関する政令案の整備を進めている。
期待される効果:
①企業の調達チャネル多様化とコスト最適化、②銀行のディレバレッジ(信用リスク集中の緩和)、③生命保険や社会保険基金など長期運用ニーズを持つ機関投資家とのマッチング。
今後の課題:
市場を機能させるには、発行手続きの迅速化や、高格付けインフラ債に対するリスクウェイトの優遇措置など、包括的な規制緩和と法整備が不可欠である。

【注記】 2026年6月22日時点のベトナムコンバンクの公示為替レートに基づき計算。
1 USD = 26,442.00 VND
1 JPY = 167.25 VND
(算出レート:1 USD = 158.10 JPY)

長期化する貿易赤字が為替レートに与える圧力が限定的な理由

2026年6月2日

ベトナムの貿易収支は2025年12月から2026年5月前半にかけて約6ヶ月連続の貿易赤字を記録しているが、公式市場における米ドル(USD)/ベトナムドン(VND)の為替レートは狭い範囲での変動にとどまっている。アナリストの分析によると、輸入拡大の大部分が将来の輸出に向けた生産用原材料や部品であること、また、外国直接投資(FDI)の流入やVNDとUSDの金利差など、国際収支上の他の外貨流入源がUSDの需給を支えているためである。

【貿易赤字の要因:輸出向け生産原資の先行輸入と季節性】

通常、貿易赤字は外貨(USD)の流出を意味し、現地通貨安の圧力を生むが、今回の赤字は国内の消費需要の急増ではなく、生産活動の活発化を反映している。

生産財の輸入集中: 財務省統計総局等のデータによると、輸入増を牽引しているのは電子部品、機械、デバイス類である。これは今後の輸出サイクル(2026年後半)に向けた準備や、サプライチェーンの分断リスク、および記憶用半導体などの国際価格上昇に備えた企業の「先行在庫積み増し」が背景にある。
季節的要因: 電子機器業界では、輸出の最盛期(通常8月頃)に先立ち、5月や6月に原材料・部品の輸入がピークを迎える。そのため、現在の貿易赤字は一時的なミスマッチであり、数ヶ月後には輸出による外貨還流へつながる見込みである。

【国際収支における他の外貨需給変動要因】

為替レートは貿易収支だけでなく、総合的な国際収支の各項目に影響を受ける。

FDIのネット流入(プラス要因): 2025年のベトナムへの直接投資純流入額は四半期ごとに38億〜71億ドル規模の黒字を維持しており、市場へ安定的に米ドルを供給している。
投資収益の流出(マイナス要因): 一方で、FDI企業が本国へ送金する利益や配当(投資収益)は四半期あたり24億〜57億ドルの赤字(流出)となっており、外貨需給に影響を与える主要な要因の一つとなっている。
「誤差脱漏」項目の縮小: 2025年第3・第4四半期には、国際収支統計上の「誤差脱漏」がそれぞれ113億ドル、124億ドルの赤字を記録した。これは金市場や闇外貨市場、未統計のクロスボーダー資金移動を反映しているとされるが、2026年に入り非公式市場への取り締まりが強化されたことで、この分野からの為替圧力は緩和しつつある。
金利差の恩恵: 2025年末以降、国際インターバンク市場のUSD金利が年約3.7%で推移するのに対し、VND金利はそれを約2.5ポイント上回っている。この金利差がドンの保有インセンティブを高め、投機的なドル買いを抑制している。

Vinhomesの「金で家を購入」プログラム:仕組みと専門家によるリスク分析

2026年5月25日

ビングループ傘下の大手不動産開発会社ビンホームズは2026年5月25日、市民が保有する「手元の金」を同社不動産物件の購入資金に充当できる、金・不動産交換プログラムを発表した。本プログラムは貴金属大手の金銀宝石会社との提携により実施される。この異例のスキームをめぐり、金融・経済の専門家からは仕組みの分析とリスクへの懸念が相次いでいる。

【プログラムの構造と投資家の選択肢】

参加者は、現在の金価格ベースで金を資金に換算して同社物件を購入する。5年後、投資家には以下の2つのオプションが与えられる。

不動産の保有継続: 不動産価格が大幅に上昇した場合、そのまま物件の所有権を維持する。
買戻し権利の行使: 物件を返却し、「5年後の金価格の110%」に相当する現金を受け取る(当初の換算時ではなく、5年後の時価が基準となる)。

【専門家による懸念とリスク要因の指摘】

1. マクロ経済および通貨政策への影響

国民経済大学・経済学部長のファム・テ・アイン副教授は、本スキームの本質を「金のレポ取引(買戻条件付取引)」に近いと指摘し、以下の4つのリスクを挙げている。

「金化」の再燃: 金が不動産の決済手段として機能し、金建ての利息が支払われる形になるため、国民の間で「金ベースの価格評価」や金貯蔵の傾向が強まる。結果としてベトナムドンの地位が弱まり、中央銀行の金融政策に悪影響を及ぼす。
流動性の凍結: 国際市場で流通可能な資産(金)が、個人の所得を大きく超える価格の「不動産」という流動性の低い資産に固定化される。集まった金が国家の準備預金に入らない場合、外部ショックへの国家の耐性が低下する。
企業の支払い能力: 過去数年のように金価格が急騰した場合、5年後に企業側が金価格の110%の現金を払い戻す負担に耐えきれず、債務不履行に陥るリスクがある。

2. デリバティブの構造と流動性

英国ブリストル大学の金融・会計プログラムディレクターであるホー・クオック・トゥアン上級講師は、この取引を「不動産の購入」と「売る権利の保有」の組み合わせと定義している。

投資家側のリスク: 投資家にとっては、金や不動産の価格変動リスクは回避できるものの、ビンホームズ自体が倒産・破綻した場合に約束が履行されない「取引相手方の信用リスク」を全面的に負う。
企業(売手)側のリスク: 金価格が急騰する一方で不動産価格が低迷した場合、多くの投資家が現金返還(110%払い戻し)を選択するため、ビンホームズは甚大な流動性圧力(資金ショート)に直面する。

【企業の想定されるリスクヘッジ(回避策)】

ホー・クオック・トゥアン氏は、ビンホームズが5年後の流動性リスクを回避するための財務手法として以下の2案を挙げているが、いずれも金価格の上昇率が不動産の上昇率を上回った場合、キャッシュフローの管理が最大の課題になると強調している。

国際市場でのヘッジ: 海外市場で金/米ドルのオプションを購入する。この場合、USD/VNDの為替リスクが発生する。
専門金融機関への委託: 回収した金を専門の金取り扱い機関に譲渡し、運用・リスク管理を委託する。その機関から5年後に110%のキャッシュフローを受け取る契約を結び、見返りとして不動産売却益の一部や管理手数料を支払う。

米FRBの利下げ継続なら為替と金利は安定へ:新韓銀行ベトナム幹部の見通し

2026年5月21日

新韓銀行ベトナムで外国為替およびデリバティブ取引を担当するチョン・ヒョチャン(Jung Hyo Chang)氏によると、米連邦準備制度理事会(FRB: Federal Reserve Board)が金融緩和サイクルを継続すれば、ベトナム国内の米ドル・ドン相場および金利は安定へ向かう見通しである。ベトナム国家銀行は、経済成長の支援、為替の安定、インフレ抑制、金融システム全体の流動性確保の間でバランスを取る舵取りを続けるとみられる。

【ベトナム経済に影響を与える3つの外部要因】

2026年後半のベトナムの金融政策および経済は、主に以下の3つの外部要因に左右される。

■ 国際金利の動向(特にFRBの政策): 国内の為替レート、資本流出入、金利水準を左右する最も重要な変数である。

■ 地政学的リスク(特の中東地域での紛争): エネルギー価格の乱高下を招き、世界的なインフレ圧力を予測困難にしている。

■ 世界経済の成長および国際貿易の見通し: 国際通貨基金の2026年4月版報告書では、今年の世界経済成長率を3.1%と予測する一方、中東の戦況による商品価格の上昇や世界的な金融引き締めのリスクに警鐘を鳴らしている。

【FRBの政策変更と米ドル指数の動向】

FRBは2026年3月の会合で、政策金利(目標水準)を3.5%〜3.75%に据え置いた。中東情勢によるエネルギー価格やマクロ経済指標を見極める姿勢を示しているが、年後半の利下げシナリオには依然として根拠がある。

■ 米ドル指数の軟化予測: FRBが緩和サイクルに入り、主要国との金利差が縮小すれば、2026年後半に米ドルは緩やかに下落する可能性が高い。

■ 下値の限定性: ただし、米国経済が堅調を維持していることや、地政学的リスクに伴う安全資産としての需要があるため、大幅なドル安には至らない見通しである。

■ ベトナムへの恩恵: 米ドル高圧力が後退すれば、ベトナムにとっては為替防衛の負担が軽減され、国内金利を安定させるための政策余地が生まれるため有利に働く。

【輸出入企業への為替リスク管理の提言】

為替レートの変動タイミングの予測が困難な環境下では、企業は楽観的なシナリオに依存せず、能動的なリスク管理へ転換する必要がある。

■ 決済期ごとの外貨ポジション把握: 年単位ではなく、決済期ごとのネット外貨ポジションを明確に特定する。

■ ヘッジツールの活用: 大口の決済や利益率の低い輸入契約においては、先物契約、スワップ、または部分的な為替レートの固定を活用する。

■ マッチングと契約条件の工夫: 同一通貨による収支バランスを自発的に調整するほか、長期契約においては為替変動幅に応じた免責・修正条項を盛り込む。

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