2026年5月20日
2026年第1四半期の財務諸表によると、ベトナムの不動産分野への融資は依然として高い伸びを示している。しかし、ベトナム国家銀行(中央銀行)による規制強化を受け、商業銀行は不動産向け融資ポートフォリオの再編に着手した。これにより、不動産デベロッパーも従来の銀行融資に依存した資金調達からの転換を余儀なくされている。
【融資動向:急ブレーキではないものの高まる警戒感】
・融資残高の急増: 建設省のデータによると、2026年2月28日時点の不動産事業向け融資残高は2,235兆ドンに達し、前四半期比11.7%増、前年同期比では43%増と、システム全体の平均成長率を大きく上回った。
・中央銀行による統制: レ・ミン・フン首相は中銀に対し、リスク潜在分野への与信監督強化を指示した。中銀は融資枠(クォータ)を四半期ごとに付与し、「不動産融資の伸び率を各行の総融資伸び率以下に抑える」よう求めている。
・法的なボトルネックの解消による実行: 一方で、VPBankのように不動産向け与信が第1四半期に15%増加した銀行もある。これは、法的な問題が解決して再開されたプロジェクトに対し、引き渡しに向けた資金実行を継続しているためである。
・背景にある懸念: 直近で預金吸収額と融資実行額の差が200兆ドンに達しており、資金が不動産分野に過度に集中した場合、製造・実業部門への資金供給が不足するリスクが指摘されている。
【デベロッパーの課題:プロジェクトの厳選と調達手段の多角化】
ベトナムにおける対国内総生産(GDP)比の与信比率は2025年末時点で145%に達しており、レバレッジの高さが警戒されている。銀行の審査厳格化と2026年の金利上昇に伴い、デベロッパーの二極化が進む見通しである。
・二極化の進行: 豊富な引き渡し実績を持つ大手デベロッパーは引き続き銀行融資を受けられる一方、法的な問題を抱える企業やリゾート不動産に注力する企業は、2026年中に深刻な流動性リスクに直面する。
・債務再編の圧力: 2026年には約99兆ドンの不動産社債が償還期(満期)を迎えるため、デベロッパーは融資以外の3つのチャネルである「社債発行」「株式増資」「企業の合併・買収)」を加速させる必要がある。事実、2026年年初4ヶ月間の社債発行額のうち、不動産分野が57%を占めた。
【今後の展望:融資から「総合的な金融ソリューション」へ】
専門家は、銀行が不動産融資を単に抑制するだけでなく、資本市場(証券・社債)への橋渡し役となるべきだと指摘する。
証券や社債などの資本市場は、現在のベトナム経済における全資金調達手段の15〜20%に過ぎず、依然として銀行融資への依存度が高い。ベトナム投資開発銀行(BIDV)などの専門家は、不動産投資信託や国家住宅基金の早期運用、および不動産証券化のロードマップ策定を提言している。
また、大手銀行(VietcombankやHDBank)の経営陣も、従来の「資金の出し手」から、証券・ファンド管理などの自社エコシステムを活用した「財務能力の構築・企業基準の引き上げ」へと役割を転換し、デベロッパーの資本市場での資金調達を支援する姿勢を強めている。
2026年5月19日
決済プラットフォーム「2C2P by Antom」の委託により、市場調査会社IDCが実施した最新調査報告書によると、東南のアジア電子商取引(EC:E-Commerce)市場は急速な拡大を続けている。2024年から2029年にかけたCAGR(年間平均成長率)は13.2%に達すると予測され、インドに次いで世界で2番目に高い成長市場となる見通しである。2029年の市場規模は2024年比85.4%増の2,898億ドルに達すると試算されている
【決済手法の変化:国内決済とデジタル決済の台頭】
2029年までに、東南アジアのEC決済におけるデジタル決済の割合は97%(2024年は89%)に達する見込みである。特にインドネシア、タイ、ベトナムにおいてデジタルシフトが顕著である。
・ローカル決済(即時決済・ローカル銀行決済): 従来のクレジットカード決済に代わり、デジタル決済部門で最大のシェア(約32%)を占める見通しである。市場規模は2024年の451億ドルから2029年には920億ドル(104%増)へと倍増する。
・電子マネー: 2029年には790億ドル(2024年は382億ドル)に達し、EC市場全体の27%のシェアを占めると予測されている。
・後払いサービス: 2024年の69億ドルから2029年には189億ドル(174%増)へと急成長が見込まれている。
【中小企業の動向とデジタル化の課題】
東南アジア6カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の中小企業600社を対象とした調査から、EC市場を支える中小企業の現状と課題が浮き彫りとなった。
・高いオンライン参入率と現金の根強い需要: 対象企業の66%がオンライン販売を導入している。一方で、システム統合の複雑さ、不正利用への懸念、導入コスト、インフラの制約などがボトルネックとなり、全体の3分の1の企業がいまだ日常業務を現金に依存している。
・市場ごとの課題の差異: フィリピンやインドネシアでは「インフラ・接続環境の不足」、シンガポールやベトナムでは「セキュリティとシステム統合への懸念」、マレーシアやタイでは「コストと規制の圧力」が主な課題となっている。
・決済システムの刷新ニーズ: 調査対象の63%が、新しい決済トレンドに対応するために現行システムのアップグレードまたは全面刷新が必要であると回答している。
【今後の展望:クロスボーダーECの可能性】
現在、国境を越えた取引を行っている中小企業は49%に留まるが、全体の4分の3が今後2年以内の海外展開を計画している。特にインドネシアとタイの企業で新規顧客層の開拓意欲が強い。
IDCの試算によると、中小企業の国境ECへの参入を促進することで、2029年までに域内でさらに208億ドルの売上が創出され、地域全体のEC価値を7.1%押し上げる効果があるとされている。
2026年5月13日
ベトナム株式市場における製薬セクターの上場大手企業は、現在、その多くが外資による支配下、あるいは戦略的出資を受ける状況にある。2026年5月初旬、中国のリゾン・ファーマシューティカル(Livzon)がイメックスファーム(IMP)の株式67.87%を取得したことは、国内の医薬品生産チェーンを国際資本が主導する傾向をさらに強めるものとなった。
【外資の参入状況と主要銘柄】
時価総額上位の企業を中心に、外資が筆頭株主として経営権を握るケースが目立っている。
。ハウジャン製薬 (DHG): 日本の大正製薬が2019年より51%以上の株式を保有。
・イメックスファーム (IMP): 中国のリゾン・グループが約6兆ドンの投じ、67.87%の株式を取得し買収。
・ハタイ製薬 (DHT): 日本のあすか製薬が保有比率を約40%まで引き上げ。
・その他: ドメスコ(DMC)は米アボットが51.7%、トラファコ(TRA)は韓国の連合(DaewoongおよびMirae Asset)が約40%を保有。また、ピメファルコ(PME)は2021年に独スタダ(STADA)が99.5%を取得し、上場廃止となった。
【M&Aの動向と背景】
外資がM&Aを推進する主な目的は、ベトナム国内の高度な生産拠点と流通ネットワークの確保である。
・生産規格: イメックスファームが保有する「EU-GMP(欧州医薬品正製造管理基準)」準拠の生産ラインなどは、病院向け入札市場(ETC)での競争力において極めて重要な資産となっている。
・市場の成長性: ベトナムの製薬市場は2015年の約40〜50億ドルから、2024〜2025年には80〜90億ドル規模に急拡大した。2032年には160億ドルに達すると予測されており、高い成長ポテンシャルが投資を誘致している。
【規制当局の対応】
M&Aによる企業結合後の市場独占を防止するため、国家競争委員会はリゾン・グループに対し、イメックスファームへの原料供給における差別的扱いの禁止や、定期的な技術移転の実施などを条件として課している。
2026年5月8日
元首相経済顧問のグエン・ドゥック・キエン博士によると、ベトナムの合併・買収(M&A)市場は、企業の再編と資源配分を最適化する新たな発展段階に入っている。2025年の取引総額は前年比26%増の87億ドル(約367件)に達し、回復基調が鮮明となった。特に国内投資家による取引額が40億ドルを超え、市場を牽引している。
【現状の課題と「ソフト・インフラ」の欠如】
市場規模は拡大しているものの、専門的なエコシステムの未整備が最大の懸念点である。キエン博士は、以下の「ソフト・インフラ」の不足が成長のボトルネックになっていると指摘した。
・信頼性の高い市場データの欠如: 投資判断の根拠となる情報の透明性が不十分。
・職業基準と専門性の不足: M&Aに特化した専門コンサルタントチームや標準化された実務指針が確立されていない。
・法的枠組みの未完: 企業、投資家、規制当局間の効果的な調整メカニズムが不足している。
【今後の展望:VMAAの設立】
市場の標準化と透明性向上を目的に、2026年5月8日、「ベトナムM&A協会(Vietnam Mergers & Acquisitions Association)」の設立大会が開催された。同協会は2026年から2031年までの第1期任期において、以下の役割を担うことが期待されている。
・法規制の整備支援: 当局と連携し、M&A活動に関する安定的かつ強力な法制度的基盤を構築する。
・戦略的ツールへの転換: M&Aを「資産売却の手段」から、技術取得や管理能力向上、市場拡大のための「日常的な経営戦略ツール」へと昇華させる。
・信頼の構築: 参加主体間の信頼を高め、国際基準に準拠した透明性の高い取引環境を整備する。
2026年5月5日
2026年5月4日に行われた4月の政府定例記者会見において、レ・タン・カン財務次官は、世界的なエネルギー価格の変動や経済の不確実性に対応し、成長目標とインフレ抑制のバランスを維持するため、以下の4つの重要課題を提示した。
・指導方針の徹底遂行
第14回党大会決議、国会決議、および政府の経済社会発展に関する関連決議を、2026年から2030年までの経済運営における一貫した指針として徹底する。
・マクロ経済の安定化とインフレ抑制
財政政策と金融政策を柔軟かつ同期的に連携させ、インフレを制御する。また、国際経済の変動を注視し、国家財政の安全を確保した上で、国際統合と自立的経済を両立させる枠組みを早急に構築する。
・成長モデルの質的転換
経済発展と社会文化の調和を維持する。従来の量的拡大から、科学技術・イノベーション・DX(デジタルトランスフォーメーション)を原動力とする質的成長モデルへ転換し、経済競争力を強化する。
・労働生産性と投資効率の向上
科学技術の活用による全要素生産性(TFP:技術・効率の総合力)の向上を図る。また、行政手続きの簡素化により投資環境を改善する。公共投資を「呼び水」として民間資本を誘発し、資本効率の改善を重視した資源配分を行う。
2026年4月28日
ベトナムでは現在、不動産(地上スペース)所有者を対象とした、物流および電気自動車(EV)用インフラへの投資モデルが注目を集めている。主にベトテル・ポスト(Viettel Post)が展開する配送用スマートロッカーと、Vグリーン(V-Green)によるEV充電スタンドの2つのモデルが、新たな収益源として提示されている。
【小規模投資:スマートロッカー「スマートボックス」】
ベトテル・ポストが推進する「スマートボックス」は、ラストワンマイルの配送効率化を目的とした自動配送ロッカーである。
・投資規模: 1ユニットあたり7,000万〜1億ドン(約42万〜60万円)。マンションのロビーや店舗前などの小規模スペースに適している。
・収益構造: 運営側からのレベニューシェアは最大80%に達する。現在の平均利用率は約23%であり、投資回収期間は約3年と試算されている。
・課題: 消費者の対面受取習慣の転換や、各地方自治体による設置規則の整備が普及の鍵となる。
【中・大規模投資:EV充電インフラ「Vグリーン」】
ファム・ニャット・ブオン氏が設立したEV充電インフラ開発会社「Vグリーン(V-Green)」は、全国的な充電ネットワークの構築を急いでいる。
・EV用充電スタンド: 1拠点あたりの投資額は25億〜30億ドン(約1,500万~1,800万円)。60kWの充電器1基につき月間約1,500万ドンの収益が見込まれ、投資回収期間は約2.5年である。
・電動バイク用バッテリー交換ステーション: 最小投資額は2億1,000万ドン(約120万円)。5年間の最低利益率15%が保証されており、こちらも約2.5年での投資回収を見込む。
・金融支援:ヴィエティンバンクやベトナム投資開発銀行などの大手銀行が、投資額の50〜70%を対象とした融資パッケージ(年利6.2〜6.5%前後)を提供している。
【戦略的提携】
ベトテル・ポストとVグリーンは戦略的提携を締結した。ベトテル・ポストのネットワーク内3,000拠点以上にVグリーンの充電インフラを設置する一方で、同拠点にスマートボックスを併設し、24時間365日の配送サービスとEVインフラを統合した複合拠点の形成を目指している。
2026年4月27日
モバイル・ワールド(ベトナム最大手の小売企業)傘下の生鮮食品・日用品チェーンであるバクホアサイン(Bách Hóa Xanh)は、2026年第1四半期に黒字化を達成した。現在、1日平均4.4店舗という驚異的なペースで新規出店を進めており、通年での大幅な利益貢献が期待されている。
【財務実績:赤字脱却と収益性向上】
・黒字化の達成: 2026年第1四半期の売上高は約13兆1,000億ドン(前年同期比19%増)を記録した。長年の課題であった利益面においても、同期で黒字を計上し、過去の累計赤字の解消に向けた大きな一歩を踏み出した。
・店舗レベルの収益: 第1四半期に新設された280店舗(北部18%、中部14%を含む)は、開店初月から店舗レベルでの営業利益がプラスとなっている。
【拡大戦略:北部進出と市場開拓】
・出店加速: 2026年4月以降、わずか数週間で120店舗を新設している。大手都市における非正規市場(違法市場や臨時市場)の整理・削減が進む中、同社は2026年から年間1,000店舗の新規出店を計画している。
・通年目標: 2026年度、バクホアサインはMWG連結売上高の30%(約55兆5,000億ドン)、連結利益の約20%(約1兆8,000億ドン)を占める主力事業となる見通しである。
【将来の展望:IPOに向けたロードマップ】
ファム・ヴァン・チョンCEOは、現在の優先事項はベトナム国内市場(市場規模約600億ドル)に全力を注ぐことであり、海外進出よりも国内シェア拡大を重視すると明言した。
上場計画: 2026年を将来の独立上場に向けた「極めて重要な年」と位置づけ、2028年の新規株式公開(IPO)を目指す。そのためには、成長を維持しつつ過去の累積損失を早期に相殺することが不可欠な条件となる。
2026年4月20日
2026年4月18日、ホーチミン市人民評議会は、Build-Transfer方式(建設後譲渡方式)によるインフラ整備プロジェクトの投資家へ支払うための用地リストに関する決議案を採択した。現在、同市では総額366兆ドン(約2兆2,000億円)を超える大規模なインフラ案件が提案されており、その中でも環境汚染解決の鍵を握る3つの巨大下水処理場の建設が注目を集めている。
3つの下水処理プロジェクトと投資連合 環境インフラ分野において、西サイゴン下水処理場、北サイゴン1下水処理場および北サイゴン2下水処理場の3プロジェクトが提案されている。これらの投資案は、以下の3社によるコンソーシアム(連合体)から出されるものである。
・ペトロセトコ(Petrosetco:ベトナム石油ガスグループ傘下で、流通、物流、不動産管理など多角的なサービスを展開する企業)。
・ジェレックス・インフラ(Gelex Infra:電力インフラ、工業団地、上水道などの基盤整備を専門とするゲレックス・グループの中核子会社)。
・ヴィコンシップ(Viconship:ベトナムコンテナ総公社関連のインフラ・不動産開発部門)。
【投資規模と事業計画 】
3つのプロジェクトの総投資額は約36兆7,000億ドン(約2,200億円)に上り、合計処理能力は日量64万立方メートルに達する。これはホーチミン市全体の下水処理需要の約30%をカバーする規模である。
ペトロセットコは、2026年4月24日の株主総会において、これら3つの連合体への計2兆2,000億ドンの出資計画を承認する予定である。また、ジェレックス・グループのグエン・ヴァン・トゥアン会長は、上水および下水処理をグループの重点的なインフラ戦略と位置づけている。
【BT方式と用地による支払いメカニズム】
ホーチミン市は予算の制約がある中、民間資本を活用するためBT方式を採用している。投資家への支払いには、レ・ズアン通り8-12番地やハイバーチュン通り2-4-6番地といった、1区(旧区画)の中心部にある「一等地」を含む計33箇所の用地が充てられる予定である。これにより、土地資源を活性化させると同時に、環境汚染や洪水、渋滞といった都市の喫緊の課題解決を図る。
豊富な経験と財務能力を持つ投資家連合の参入により、ホーチミン市の下水処理インフラは大きく前進することが期待される。今後は、資産価値と投資額の整合性を保ちながら、透明性の高い手続きを経てプロジェクトを推進することが重要となる。