2026年7月13日
ベトナム建設省は、改正住宅法案の最新草案において、分譲マンションの使用期限を設計図書および権限のある機関による実態調査の評価結果に基づいて確定する方針を提案した。この提案は、ハノイ市やホーチミン市における数千棟規模の老朽化マンションの建て替え促進を目指すものであるが、専門家からは住民の権利保障や土地使用期限との整合性を巡り、多様な意見が出されている。
1. 建設省によるマンション使用期限に関する提案内容
提出された改正住宅法案の第88条に基づき、マンションの使用期限は以下の仕組みで管理される方針である。
● 使用期限の決定: マンションの使用期限は「設計上の耐用年数」に基づき決定され、権限のある機関による最終査定文書に明記される。期限の起算日は、竣工検査が完了し、使用が開始された時点とする。
● 安全性検査の実施: 設計上の使用期限に達した場合、または期限前であっても災害・火災や構造的な破損・傾き等により崩壊の危険がある場合、省級人民委員会は品質評価・安全検査を指示しなければならない。 ※省級人民委員会:省または中央直轄市の行政当局
● 強制解体と住民の再居住権: 危険性が確認されたマンションは強制解体となる。解体後の土地が住宅開発計画に適合している場合は「現地での再居住」が認められ、住宅建設が不許可のエリアである場合は、金銭補償または近隣地域での代替再居住地が手配される。
2. 専門家が指摘する課題と代替案
本提案に対し、業界の専門家からは実務上の観点から懸念と提言がなされている。
● 設計寿命と実質寿命の乖離: ホーチミン市不動産協会のレ・ホアン・チャウ会長は、設計寿命を基準として一律に義務付けるべきではないと主張する。同氏は、1996年に一級建築物として建設されながら、わずか30年で傾斜や亀裂が生じて全住民が避難を余儀なくされたホーチミン市内のマンションを例に挙げ、「設計寿命と実態が必ずしも一致しない」と指摘した。その上で、建設用地の使用期限とマンションの使用期限を紐づける方式への転換を推奨している。
● 老朽化対策への期待と再居住の保証: ベトナム不動産協会のグエン・ヴァン・ディン副会長は、建設省によるマンション使用期限の見直し提案が数千棟にのぼる既存の老朽化マンション改修に向けたボトルネックを解消する一助になると評価する一方、住民への速やかな代替再居住地の確保・制度設計の整備が不可欠であると強調している。
2026年6月24日
工業団地開発大手のベカメックスIDCは、2026年定時株主総会の補足資料を公表し、2026〜2030年の中期開発計画を明らかにした。同期間中の総投資額は127兆2,970億ドン(約7,614億円)に上り、3,000ヘクタールを超える新世代工業団地、交通インフラ、デジタルトレードセンター、再生可能エネルギー、社会住宅の開発を推進する。また、2025年度の配当率を14%とする計画も合わせて提示された。
1. 2026〜2030年の中期投資
総投資額127兆2,970億ドンの内訳は、自己資本から12兆2,340億ドン(約731.8億円)、外部調達資金から36兆3,160億ドン(約2,172.3億円)などを充当する。
主な投資セクターは以下の通り。
・新世代工業団地(FS段階)
・投資方針承認済みの工業団地
・主要交通インフラプロジェクト
・ビンズオン省の集中型デジタルトレードセンター
・社会住宅(ソーシャルハウジング)
・再生可能エネルギー
工業団地セクターでは、生産施設の移転や都市再開発の需要に対応するため、3,000ヘクタール以上の規模で開発を展開する。具体的には、バウバン工業団地拡張フェーズ2およびカイチュオン工業団地の2プロジェクトが進められており、法的手続きが完了して営業活動が本格化する2026年末から2030年にかけて、同セクターの売上高は段階的に拡大する見通しである。
交通インフラセクターでは、ホーチミン市のトゥドーモット~チョンタイン高速道路、国道13号線、ホーチミン首都圏外郭環状道路4号線、ミーフロックータンヴァン道路などの主要案件に参画する。インフラ関連の総投資額約3,901.8億円のうち、同社が建設・設置工事(約2,086.7億円)を担い、政府が立ち退き・用地収用(約1,815.1億円)を実施する。
また、中長期の戦略インフラとして、チョンタインーバウバンーアンビンーカイメップ間の高架貨物・旅客鉄道計画にも言及している。
2. 財務目標
中期計画期間中、売上高および税引後利益の年平均成長率10%の維持を目指す。
売上高を2026年の約493.5億円から2030年には約721.9億円へ拡大。税引後利益は約137億円から約200.6億円への成長を計画。
※2026年6月25日時点のベトナムコンバンクの公示為替レートに基づき計算。
1 USD = 26,456 VND
1 JPY = 167.15 VND
(算出レート:1 USD = 158.24 JPY)
2026年5月28日
2026年5月28日、トー・ラム書記長兼国家主席のタイ公式訪問の枠組みにおいて、ベトナムの不動産・観光大手サングループと、タイの複合商業施設開発最大手セントラル・パッタナー(セントラルグループ傘下)が戦略的協力国際覚書(MOU)を締結した。両社はベトナムの主要都市および観光地において、国際基準を満たす次世代の高級商業施設や複合施設の共同開発を目指す。
【提携の背景と開発計画の対象地域】
セントラル・パッタナーは、バンコク中心部のアジア有数の商業コンプレックス「セントラルワールド」をはじめ、タイ国内で45の商業施設、53の住宅プロジェクト、11のオフィスビル、13のホテルを運営するリーディングカンパニーである。同社は商業施設を単なる購買の場ではなく、文化・エンターテインメント・観光の目的地へと昇華させ、観光客の滞在期間延長や消費額増加を促すビジネスモデルに強みを持つ。
今回のMOUにより、両社はベトナムの以下の3つの戦略的拠点において、ランドマークとなる大規模な複合商業・エンターテインメント施設を展開する計画である。
■ ダナン市: ハン川沿いにおいて、都市の新たなライフスタイルや体験の中心となる大規模な商業・エンターテインメント複合施設を開発。
■ ホーチミン市: 将来の新たな成長極として期待される市内東部および新金融中心地区において、大規模な商業施設群を展開。
■ フーコック島: 単なるリゾート地から、地域の新たな「ショッピングパラダイス」への転換を目指し、高級商業・体験統合型センターを開発。
【「ショッピング観光」の潜在力と量から質的成長への転換】
本提携の主たる狙いは、ベトナム市場において未開拓である「ショッピング観光」市場の開拓にある。世界的にショッピング観光は急成長しており、国際観光客の旅行支出の30%〜50%を占める重要な要素となっている。
■ ベトナム観光の課題と目標: ベトナム観光業は2025年に国際観光客数2,100万人超を記録し、2026年年初4ヶ月間でも約880万人を迎えるなど急成長を続けている。一方で、「観光客数は多いものの消費額が低い」という課題を抱えており、今後の長期目標として、観光産業を「量の成長」から「質の成長(消費額の拡大)」へと転換させることが至上命題となっている。
■ 次世代商業施設の役割: 両社が目指す次世代の商業施設は、単にブランド品を購入する場にとどまらず、ハイレベルなエンターテインメントショーの鑑賞、独自の建築空間、ローカルと国際色を融合した飲食、大規模なフェスティバルなどを包括した「総合体験型拠点」である。これにより、国際的な富裕層や国内の消費欲の高い層を呼び込み、主要観光地における観光収入の大幅な底上げを図る。
2026年5月25日
ビングループ傘下の大手不動産開発会社ビンホームズは2026年5月25日、市民が保有する「手元の金」を同社不動産物件の購入資金に充当できる、金・不動産交換プログラムを発表した。本プログラムは貴金属大手の金銀宝石会社との提携により実施される。この異例のスキームをめぐり、金融・経済の専門家からは仕組みの分析とリスクへの懸念が相次いでいる。
【プログラムの構造と投資家の選択肢】
参加者は、現在の金価格ベースで金を資金に換算して同社物件を購入する。5年後、投資家には以下の2つのオプションが与えられる。
■不動産の保有継続: 不動産価格が大幅に上昇した場合、そのまま物件の所有権を維持する。
■買戻し権利の行使: 物件を返却し、「5年後の金価格の110%」に相当する現金を受け取る(当初の換算時ではなく、5年後の時価が基準となる)。
【専門家による懸念とリスク要因の指摘】
1. マクロ経済および通貨政策への影響
国民経済大学・経済学部長のファム・テ・アイン副教授は、本スキームの本質を「金のレポ取引(買戻条件付取引)」に近いと指摘し、以下の4つのリスクを挙げている。
■ 「金化」の再燃: 金が不動産の決済手段として機能し、金建ての利息が支払われる形になるため、国民の間で「金ベースの価格評価」や金貯蔵の傾向が強まる。結果としてベトナムドンの地位が弱まり、中央銀行の金融政策に悪影響を及ぼす。
■ 流動性の凍結: 国際市場で流通可能な資産(金)が、個人の所得を大きく超える価格の「不動産」という流動性の低い資産に固定化される。集まった金が国家の準備預金に入らない場合、外部ショックへの国家の耐性が低下する。
■ 企業の支払い能力: 過去数年のように金価格が急騰した場合、5年後に企業側が金価格の110%の現金を払い戻す負担に耐えきれず、債務不履行に陥るリスクがある。
2. デリバティブの構造と流動性
英国ブリストル大学の金融・会計プログラムディレクターであるホー・クオック・トゥアン上級講師は、この取引を「不動産の購入」と「売る権利の保有」の組み合わせと定義している。
■ 投資家側のリスク: 投資家にとっては、金や不動産の価格変動リスクは回避できるものの、ビンホームズ自体が倒産・破綻した場合に約束が履行されない「取引相手方の信用リスク」を全面的に負う。
■ 企業(売手)側のリスク: 金価格が急騰する一方で不動産価格が低迷した場合、多くの投資家が現金返還(110%払い戻し)を選択するため、ビンホームズは甚大な流動性圧力(資金ショート)に直面する。
【企業の想定されるリスクヘッジ(回避策)】
ホー・クオック・トゥアン氏は、ビンホームズが5年後の流動性リスクを回避するための財務手法として以下の2案を挙げているが、いずれも金価格の上昇率が不動産の上昇率を上回った場合、キャッシュフローの管理が最大の課題になると強調している。
■ 国際市場でのヘッジ: 海外市場で金/米ドルのオプションを購入する。この場合、USD/VNDの為替リスクが発生する。
■ 専門金融機関への委託: 回収した金を専門の金取り扱い機関に譲渡し、運用・リスク管理を委託する。その機関から5年後に110%のキャッシュフローを受け取る契約を結び、見返りとして不動産売却益の一部や管理手数料を支払う。
2026年5月24日
地政学的リスクに伴うグローバルサプライチェーンの分断を受け、製造業の資本移動において「安定性」の優先順位が高まっている。これに伴い、ベトナムの産業用不動産市場は、従来の規模(面積)拡大に頼る「量」の成長から、インフラの質や運用の効率性を競う「質」の成長へと転換期を迎えている。
【インフラ高度化と価値の再定義】
不動産コンサルティング会社クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドベトナムの過去10年間のデータによると、ベトナム南部における工業団地の敷地供給量は80%以上、一次価格の平均は120%上昇した(年間平均成長率:9.18%に相当)。また、既製の工場・倉庫の供給量も130%以上増加し、製造業とロジスティクスの旺盛な需要を反映してきた。
しかし、この急速な成長期を経て、市場は量的拡大から質的向上へと移行している。今後の産業用不動産は、単なる土地の提供ではなく、以下の要素が長期的な価値を左右する戦略的段階に入っている。
■ インフラ接続性とクラスター化:工業団地は単独での分散開発を避け、主要な高速道路、深海港、空港に直結した「ロジスティクス回廊」に沿ってクラスター(集積地)を形成する傾向が強まっている。
■ 完成済み施設の需要拡大: 初期投資コストを抑え、市場投入までの期間を短縮するため、高性能な既製工場や既製倉庫の導入がデベロッパー・顧客双方のトレンドとなっている。
■ESG(「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス/企業統治)」)の適用: 米国グリーンビルディング協会が開発したLEED認証などのグリーンビルディング基準の導入は、エネルギー管理の最適化や長期的な運用コスト削減に直結するため、投資誘致の必須条件となりつつある。
【サプライチェーン再編を支える安定的な基礎条件】
不動産サービス会社サヴィルズベトナムによると、短期的にはエネルギー価格の高騰が物流費や生産コストに波及し、貿易開放度の高いベトナム経済への圧迫が懸念されている。しかし、市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は極めて堅調である。
■ 高水準の入居率: 南部の主要経済地域(ビンズオン省、ドンナイ省、ホーチミン市など)の工業団地入居率は依然として約90%以上を維持しており、世界的な投資マインドの慎重化にもかかわらず、実需は衰えていない。
■ チャイナ・プラス・ワンの受け皿: 多国籍企業によるサプライチェーンの分散化の動きを受け、ベトナムはコスト、地理的優位性、貿易接続性のバランスが取れた有力な移転先として選ばれ続けている。
【今後の展望:産業エコシステムへの転換】
法務専門家や市場アナリストは、ベトナムが今後も次世代の産業投資先としての魅力を維持するためには、単なる土地の切り売りから「強靭性の高い産業エコシステム」への転換が必要だと指摘する。
具体的には、周辺の衛星省への開発拡大や、法的な透明性の向上が求められる。さらに、ネットゼロを目指す多国籍企業の環境基準に対応するため、屋根置き太陽光発電、水リサイクルシステム、廃棄物発電などのクリーンエネルギー・ソリューションをあらかじめ統合した「スマート統合型工業団地」の開発が、ベトナムの新たな国際競争力となる見通しである。
2026年5月20日
2026年第1四半期の財務諸表によると、ベトナムの不動産分野への融資は依然として高い伸びを示している。しかし、ベトナム国家銀行(中央銀行)による規制強化を受け、商業銀行は不動産向け融資ポートフォリオの再編に着手した。これにより、不動産デベロッパーも従来の銀行融資に依存した資金調達からの転換を余儀なくされている。
【融資動向:急ブレーキではないものの高まる警戒感】
・融資残高の急増: 建設省のデータによると、2026年2月28日時点の不動産事業向け融資残高は2,235兆ドンに達し、前四半期比11.7%増、前年同期比では43%増と、システム全体の平均成長率を大きく上回った。
・中央銀行による統制: レ・ミン・フン首相は中銀に対し、リスク潜在分野への与信監督強化を指示した。中銀は融資枠(クォータ)を四半期ごとに付与し、「不動産融資の伸び率を各行の総融資伸び率以下に抑える」よう求めている。
・法的なボトルネックの解消による実行: 一方で、VPBankのように不動産向け与信が第1四半期に15%増加した銀行もある。これは、法的な問題が解決して再開されたプロジェクトに対し、引き渡しに向けた資金実行を継続しているためである。
・背景にある懸念: 直近で預金吸収額と融資実行額の差が200兆ドンに達しており、資金が不動産分野に過度に集中した場合、製造・実業部門への資金供給が不足するリスクが指摘されている。
【デベロッパーの課題:プロジェクトの厳選と調達手段の多角化】
ベトナムにおける対国内総生産(GDP)比の与信比率は2025年末時点で145%に達しており、レバレッジの高さが警戒されている。銀行の審査厳格化と2026年の金利上昇に伴い、デベロッパーの二極化が進む見通しである。
・二極化の進行: 豊富な引き渡し実績を持つ大手デベロッパーは引き続き銀行融資を受けられる一方、法的な問題を抱える企業やリゾート不動産に注力する企業は、2026年中に深刻な流動性リスクに直面する。
・債務再編の圧力: 2026年には約99兆ドンの不動産社債が償還期(満期)を迎えるため、デベロッパーは融資以外の3つのチャネルである「社債発行」「株式増資」「企業の合併・買収)」を加速させる必要がある。事実、2026年年初4ヶ月間の社債発行額のうち、不動産分野が57%を占めた。
【今後の展望:融資から「総合的な金融ソリューション」へ】
専門家は、銀行が不動産融資を単に抑制するだけでなく、資本市場(証券・社債)への橋渡し役となるべきだと指摘する。
証券や社債などの資本市場は、現在のベトナム経済における全資金調達手段の15〜20%に過ぎず、依然として銀行融資への依存度が高い。ベトナム投資開発銀行(BIDV)などの専門家は、不動産投資信託や国家住宅基金の早期運用、および不動産証券化のロードマップ策定を提言している。
また、大手銀行(VietcombankやHDBank)の経営陣も、従来の「資金の出し手」から、証券・ファンド管理などの自社エコシステムを活用した「財務能力の構築・企業基準の引き上げ」へと役割を転換し、デベロッパーの資本市場での資金調達を支援する姿勢を強めている。
2026年5月5日
日本の大手鉄道会社である西日本鉄道株式会社(西鉄)は、ベトナムの不動産大手ナムロン・グループ(Nam Long Group)と提携し、2035年までに合計約2万2,000戸の住宅を供給する計画を発表した。日本の建設技術と品質管理体制をベトナム市場へ導入し、都市部における深刻な住宅不足の解消を目指す。
【提携の枠組みと事業内容】
・合弁事業の設立: 西鉄は、ナムロン傘下の住宅開発部門である「ナムロンADC(Nam Long ADC)」の株式49%を取得し、合弁会社を運営する。西鉄は経営への参画とともに、設計、建築技術、品質管理などのノウハウを供与する。
・製品ターゲット: 中所得者層向けの低価格住宅「EHome」および社会住宅「EHomeS」を中心に展開する。価格帯は、集合住宅で約12億ドン(約720万円)、戸建住宅で約25億ドン(約1,500万円)を想定している。
・事業目標: 2030年までに事業規模を80%拡大させ、2035年までに2万2,000戸以上の引き渡しを目指す。
【今後の市場展開】
ベトナムでは年間約10万戸の住宅需要がある一方で供給が追いついていない状況である。この需要ギャップに対し、ナムロンADCはこれまでに南部を中心に1万戸以上の住宅を供給してきた実績を持つ。2026年からは、これまでの南部地域に加え、北部市場のハイフォンやハロンへの進出を計画しており、供給網を全国へ拡大する方針である。
2026年4月21日
2026年3月1日より、ベトナム政府は政令第357/2025/NĐ-CP(以下、政令357号)に基づき、国内のすべての不動産に対して「電子識別コード(IDコード)」を正式に発行する。これにより、土地や住宅は単なる物理的な存在から、国家データベース上で一意に識別されるデジタル実体へと移行する。市場の透明性向上が期待される一方で、個人所有情報の保護が管理上の大きな課題となっている。
【データの「孤島」を解消する連結性】
これまでベトナムの不動産情報は、地籍機関、建設部門、銀行、公証役場などに分散しており、情報の照会には多大な労力と時間を要していた。
・情報の統合:IDコードが「糸」のような役割を果たし、都市計画、抵当権の設定状況、紛争歴、取引履歴などの分散したデータを同期する。
・資産価値の明確化:資産のライフサイクル全体におよぶデータ履歴が形成されることで、資産査定が容易になり、法的なリスクやトラブルの減少につながる。
【透明性とプライバシーの境界線】
データが集約されるほど、個人情報や財務情報の漏洩リスクも高まる。
・プライバシーへの懸念:所有権データが適切に管理されない場合、一方的な営業活動やマーケティングに悪用されるだけでなく、個人の安全を脅かす可能性もある。
・管理メカニズムの重要性:単なるセキュリティ技術の問題ではなく、「誰が、いつ、どのような目的でアクセスできるのか」という権限設定と、不正利用に対する説明責任の明確化が求められる。
【持続可能な市場構築に向けた解決策】
先進国の事例に基づき、透明性と機密保持のバランスを保つための「階層型アクセス」が提案されている。
① 一般公開層:都市計画や紛争状況など、民間の安全な取引に必要な基本情報のみを公開。
② 制限データ層:所有者の詳細、取引履歴、納税義務などの機密情報は、当局や直接の利害関係者のみにアクセスを限定し、厳格なアクセスログを記録する。
不動産IDコードの導入は、国家のデジタル化プロセスにおける必然的なステップである。このシステムの成功は、高度な技術や暗号化アルゴリズムだけでなく、設計・運用段階における厳格な情報保護体制にかかっている。国民が「自分の資産情報が透明かつ安全に管理されている」と信頼できる環境を構築することこそが、不動産市場の持続可能な発展のための強固な土台となる。