シンガポールの半導体産業は、サムスンやインテルのような大手チップメーカーが拠点を置かない中でも、GDPの約6%を占め、約3万5,000人の高度人材を雇用している。背景には、約60年にわたる長期的な産業政策と研究・開発を中心としたエコシステムの形成がある。
A*STAR(:シンガポール科学技術研究庁)のド・アイン・トゥアン主任研究員によると、要因は三つある。第一に、政府による長期的な投資と政策の継続性である。第二に、政府、大学、研究機関、企業の連携である。A*STARなどの研究機関が大学の研究者・学生と企業をつなぎ、共同研究や人材育成を促進している。第三に、透明な法制度と強固な知的財産保護であり、企業が中核技術を持ち込んで研究できる環境を整えている。
シンガポールは半導体製造だけでなく、設計、製造、パッケージング、テスト、製造装置などサプライチェーンの複数分野に展開している。世界のチップ生産の約1割、半導体製造装置の約2割を占めるとされる。
ベトナムが2030年までに5万人の半導体技術者を育成するには、短期的な工場誘致だけでなく、10~30年を視野に入れた人材・研究・開発の戦略が必要である。高額な研究設備も一括導入ではなく、大学・企業が共同利用し、段階的に整備する方法が考えられる。重要なのは、政府、企業、大学の政策・投資・人材育成を一体化し、継続的に研究開発能力を高めることである。
