ベトナムがAI分野で自立性を確保するには、半導体や大規模言語モデルだけでなく、安定的かつ持続可能な電力供給体制の構築が不可欠である。AI主権は、実質的にエネルギー主権から始まる。
1.AIを支えるのは巨大な電力インフラ
ベトナムが米国や中国と、汎用AIモデルの開発規模や先端半導体の供給網で競争することは容易ではない。一方、エネルギー分野では主体的な戦略を構築できる。AIは仮想的な「クラウド」だけに存在するものではなく、データセンター内の物理的な計算設備で稼働する。大量の演算処理と24時間体制の冷却には、安定した電力が必要である。
ベトナムでは現在、41カ所のデータセンターが稼働し、総設備容量は約221MWに達する。今後の大型施設の建設により、電力需要はさらに増える見通しである。重要なのは発電量だけでなく、停電や変動のない電力を継続的に供給できるかどうかである。
2.海洋資源でAI設備を冷却
熱帯気候のベトナムでは、データセンターの冷却が大きな課題である。冷却設備は施設全体の電力消費量の30~40%を占める場合があり、運用コストを押し上げる。
長い海岸線を活用し、次の技術を検討する必要がある。
・海水を利用した冷却システム
・海底データセンター
・洋上風力発電との直接連携
海底データセンターはすでに海外で商用化されており、洋上風力と組み合わせる事例もある。ベトナムでも単一の電源に依存せず、洋上風力、原子力、小型モジュール炉などを組み合わせた電源構成が求められる。
3.「海外企業のサーバー置き場」を避ける
目標は、外国企業向けに設備を貸し出すだけの拠点になることではない。データセンターを国内の研究、人材育成、産業応用と結び付け、自国の技術力に転換する必要がある。
そのための優先課題は以下の三点である。
・安定的で適正価格の電力を国家AI戦略の中核に位置付ける。
・沿岸地域で電源、データセンター、光ファイバーを一体的に整備する。
・海外投資を選別し、国内人材の育成、研究開発、AI活用への貢献を条件とする。
ベトナムのAI主権は、強固な電力網と、それを国内の技術力へ転換する政策にかかっている。
