2026年1〜7月のベトナムの貿易総額は6,595億8,000万米ドル(約104兆円 /前年同期比28%増)と過去最高を記録した一方、貿易赤字が205億2,000万米ドル(約3兆2,422億円)に達した。ハノイ貿易大学副学長であるダオ・ゴック・ティエンによる主要な分析内容は以下の通りである。
1. 赤字急増の背景と「電子・パソコン・部品」の先行調達
・製造用資材の輸入拡大: 工業生産指数(IIP)が11.4%増と近年で最高水準を記録しており、赤字の一部は新規・拡張投資プロジェクト向けの設備機器輸入によるものである。
・電子関連品目の影響: 電子・パソコン・部品を除くと、ベトナムは依然として300億米ドル超の貿易黒字である。米中・米欧の貿易摩擦やRAM・チップ価格の高騰を受け、外資企業が生産維持のために戦略的な先行調達(在庫積み増し)を行ったことが赤字の主因である。
2. 伝統的輸出産業の鈍化と構造転換の必要性
繊維・アパレル(1.1%増)および履物(0.7%増)の輸出伸び率は原材料の輸入伸び率を下回り、成長が鈍化している。最低賃金上昇による人件費高騰もあり、単純加工モデルは限界に達しているため、原料の自給化やデザイン主導型への転換が求められる。
3. 主要市場の動向とリスク管理
・中国(最大輸入国): 輸入伸び率(36.6%増)が輸出(30.7%増)を上回り、赤字が拡大。農水産物等の通関・基準チェックが厳格化している。
・米国(最大輸出国・最大の貿易黒字国): トランプ政権によるベトナム製品への輸入関税引き上げ(10%から12.5%へ)により、価格競争の圧力が増大。公正で持続可能な貿易協定に向けた協議が不可欠である。
・EU(環境・持続可能性基準): 比較的大きな黒字を維持しているが、脱炭素や環境配慮等、より厳格化する基準への適合が必須である。
4. 海外投資主導構造と国内企業との連携
年初から7か月の輸出額のうち外資企業が80%以上を占め、主導的役割が続いている。外国投資資本経済の発展に関する政治局決議10号の精神に基づき、外資企業の強みを活用しつつ、国内企業がグローバルサプライチェーンに深く参画・連携する体制構築が重要である。
※1米ドル=158円(2026年8月10日時点)で換算
