ベトナムで大型鉄道インフラプロジェクトが相次いで始動しており、鉄道技術分野の労働需要がかつてない規模で高まっている。国会で承認された総投資額約1,713兆ドン(約10兆9,700億円:2026年7月23日時点のレートで換算)規模の「南北高速鉄道プロジェクト」をはじめ、ハノイ・ホーチミン両市の都市鉄道、主要幹線鉄道の建設に伴い、建設・運行・保守を担う専門人材の育成が国家的な急務となっている。
1. 鉄道プロジェクトの拡大と人材需要
政府の「2035年までのベトナム鉄道人材育成・発展プロジェクト(首相決定第2230/QĐ-TTg号)」に基づき、2025〜2030年の期間に少なくとも35,000人の新規人材を育成する目標が掲げられている。
● 全体労働需要: ベトナム鉄道局の試算によると、2025〜2030年における同分野の総労働需要(プロジェクト管理、コンサルティング、エンジニア、技術者、現場作業員等を含む)は最大で約33万8,000人に達する。高速鉄道等の主要路線稼働時には、運行要員のみで約2万人が必要とされる。
● 必要とされる専門分野: 鉄道建設工学、輸送運行管理、信号・通信、電気・電化、機関車・客車、電気機械・自動制御、プロジェクト管理など多岐にわたる。国内外のEPC事業者や国際コンサルタント、設備サプライヤーでの就職機会が見込まれている。
2. 育成体制と教育現場の課題
大学教育においては、「鉄道工学」という単一の名称ではなく、土木・交通・運輸・機械・電気電子・自動制御などの既存学科で基礎を学び、その後鉄道専攻へ進むコース設計が一般的である。
● 求められるスキルセット: 構造物、車両、信号制御、電化、安全管理などの専門知識に加え、外国語、IT、BIM、プロジェクト管理能力が重視されている。
● 指導者・専門家の不足: 建設省の指摘によると、現代的な鉄道技術を備えた指導教員や高度専門家がベトナム国内で不足している。海外専門家への依存度を下げ、自国で技術を内製化するための人材基盤構築が急務となっている。 ● 主要育成機関: 交通運輸大学(ハノイ/ホーチミン)、ハノイ建設大学、ハノイ工科大学、ホーチミン市工科大学などが関連学科を設置している。
3. 高度技術人材の確保に向けたボトルネック
鉄道工学分野は複雑なシステム運用と厳格な安全基準が求められる領域であり、単なる人員数だけでなく「質の高い技術者」の確保が最大の課題となっている。
● 現場での実務要求: 現場施工やインフラ維持管理への直接従事、工事進捗に応じた移動、厳格な安全規制の遵守が求められる。また、国際案件では外国語での技術ドキュメント読解や海外専門家との協働能力が不可欠となる。
● 教育インフラの拡充: 国内のトレーニングプログラム、講師陣、実験・実習設備のアップデートを図り、高速鉄道や都市鉄道といった次世代システムに対応できる技術波及・吸収能力を育むことが求められている。
