ベトナムはドイモイ政策以降、累計約5,500億米ドル(約87兆円)の外国直接投資(FDI)を誘致し、貿易額がGDPの約200%に達する成果を収めた。しかし、外資による「国内経済への波及効果」の限定性が課題視されている。ベトナム政府が採択した「決議第10号」は、安価な労働力や税制優遇に頼る従来モデルから脱却し、外資を「国内企業の技術力・自立性を高める触媒」へと転換する、FDI誘致に対するマインドセットの劇的なシフトを象徴している。
1. 現行のFDI誘致における3つのボトルネック
経済協力開発機構の分析によると、現在のベトナム経済とFDIセクターの間には以下の乖離が存在する。
● サプライチェーン接続の弱さ: 在ベトナム外資系企業の原材料・部品の約40%は輸入に依存しており、現地調達分のうち地場民間企業による供給は約25%にとどまる。地場企業は依然として低付加価値の組み立て工程にとどまっている。
● 研究開発の不在: 外資によるベトナム国内でのR&D投資や設計・技術開発活動は極めて限定的であり、地場企業が先進技術や管理手法を学ぶ機会が阻まれている。
● 技術吸収能力の不足: デジタル、エネルギー、知的財産等のインフラ・法規制が、AIやデータセンター、半導体といった最先端ハイテクプロジェクトの要求水準に追いついていない。また、技術発展の速度に対して、高度IT・専門人材の育成がボトルネックとなっている。
2. グローバル投資のパラダイムシフト
元外国投資局長のファン・フー・タン博士は、世界の投資環境が「選択的グローバル化」のフェーズに移行したと指摘する。多国籍企業は現在、サプライチェーンの再構築を進め、半導体、AI、グリーンエネルギーなどの知識集約型分野へ投資を集中させている。国家間の誘致競争は「低コスト・税制優遇」から、「制度の質、高度人材、インフラ、イノベーション・エコシステム」へと移行している。
3. 「決議第10号」が定める新たな評価基準と提言
「決議第10号」は、投資案件の件数や資本規模ではなく、「投資の質」を重視する新たな評価指標を導入した。
● 新たな評価指標: 先進国からの投資比率、現地調達率、外資サプライチェーンへ参画する地場企業の数、および技術移転や共同イノベーションの実現度を重視する。
● 「優遇措置」から「受け入れ能力の向上」へ: 外交部が主催した「2026年戦略対話フォーラム」において、国際専門家らは「ベトナムは投資インセンティブ(優遇措置)の付与から、高付加価値資本を受け入れる国内能力の強化へ焦点を移すべきである」と一致して提言した。
