ベトナム建設省は、改正住宅法案の最新草案において、分譲マンションの使用期限を設計図書および権限のある機関による実態調査の評価結果に基づいて確定する方針を提案した。この提案は、ハノイ市やホーチミン市における数千棟規模の老朽化マンションの建て替え促進を目指すものであるが、専門家からは住民の権利保障や土地使用期限との整合性を巡り、多様な意見が出されている。
1. 建設省によるマンション使用期限に関する提案内容
提出された改正住宅法案の第88条に基づき、マンションの使用期限は以下の仕組みで管理される方針である。
● 使用期限の決定: マンションの使用期限は「設計上の耐用年数」に基づき決定され、権限のある機関による最終査定文書に明記される。期限の起算日は、竣工検査が完了し、使用が開始された時点とする。
● 安全性検査の実施: 設計上の使用期限に達した場合、または期限前であっても災害・火災や構造的な破損・傾き等により崩壊の危険がある場合、省級人民委員会は品質評価・安全検査を指示しなければならない。 ※省級人民委員会:省または中央直轄市の行政当局
● 強制解体と住民の再居住権: 危険性が確認されたマンションは強制解体となる。解体後の土地が住宅開発計画に適合している場合は「現地での再居住」が認められ、住宅建設が不許可のエリアである場合は、金銭補償または近隣地域での代替再居住地が手配される。
2. 専門家が指摘する課題と代替案
本提案に対し、業界の専門家からは実務上の観点から懸念と提言がなされている。
● 設計寿命と実質寿命の乖離: ホーチミン市不動産協会のレ・ホアン・チャウ会長は、設計寿命を基準として一律に義務付けるべきではないと主張する。同氏は、1996年に一級建築物として建設されながら、わずか30年で傾斜や亀裂が生じて全住民が避難を余儀なくされたホーチミン市内のマンションを例に挙げ、「設計寿命と実態が必ずしも一致しない」と指摘した。その上で、建設用地の使用期限とマンションの使用期限を紐づける方式への転換を推奨している。
● 老朽化対策への期待と再居住の保証: ベトナム不動産協会のグエン・ヴァン・ディン副会長は、建設省によるマンション使用期限の見直し提案が数千棟にのぼる既存の老朽化マンション改修に向けたボトルネックを解消する一助になると評価する一方、住民への速やかな代替再居住地の確保・制度設計の整備が不可欠であると強調している。
