ベトナムの不動産市場において、日本、シンガポール、マレーシアなどの外国企業による投資や地元デベロッパーとの共同開発が活発化している。市場の淘汰が進む中、ベトナム企業の用地確保能力・市場理解力と、外資の資金力・プロジェクト管理能力を組み合わせた提携が主流となっている。新土地法などの法整備による透明性の向上が、さらなる資金流入を後押ししている。
1. 相次ぐ外資による大型案件と資本提携
多くのアジア系デベロッパーやファンドが、数十億米ドル規模の投資を相次いで実行している。
● 日越共同開発の進展: 日本の大和ハウスグループ傘下のコスモスイニシア、桧家グループ、コテラスパートナーズの日本企業がベトナムのTTCapitalと合弁を組み、ホーチミン市南部で総投資額2兆ドン超(約123億円超)、1,400戸規模の分譲マンションプロジェクト「TT Genesis」を展開する。また、西日本鉄道(西鉄)はナムロン・グループの既存子会社株式49%を取得し、2035年までに低中所得者向け住宅を中心に22,000戸を供給する計画を発表した。このほか、ファットダット不動産とロッテの提携も進んでいる。
● シンガポール勢の動向: ケッペル・ランドはカンディエンの2つのプロジェクトに49%出資し、戸建てや高層マンションを共同開発する。カピタランドはベカメックスIDCからビンズオン省の都市開発プロジェクトの一部を約5億3,300万米ドル(約853億円)で買収し、将来的にベトナム国内の資産価値を50億〜70億米ドル規模へ引き上げる方針を掲げている。
● マレーシア・米国勢の参入: ガムダ・ランドはこれまでに総投資額50億米ドル(約8,000億円)を超える6つの大型案件を成立させた。UOAグループは6,800万米ドル(約109億円)でホーチミン市内の好立地を買い取り、米国のトランプ・オーガニゼーションもKBCと提携してフンイエン省での高級ゴルフ場複合施設の開発に着手した。
2. 外資誘致の背景と好まれるセグメント
外資がベトナム市場を選好する背景には、構造的な強みと法改正の恩恵がある。
● 優位性と優先領域: 政治の安定性、高い経済成長率、実需層による旺盛な住宅需要が評価されている。投資対象としては、実需向けの中級マンションや、産業用不動産など、持続可能な長期成長が見込める分野が優先されている。
● 法整備による後押し: サヴィルズ・ベトナムによると、改正土地法、住宅法、不動産事業法の整備が進んだここ2年間でM&A活動が加速しており、法的な不確実性が解消されたことが投資家の安心感につながっている。
3. 市場への影響とベトナム企業への提言
外資の本格参入は市場の基準を引き上げる一方、国内企業に財務改善を迫る契機となっている。
● 市場の二極化と淘汰: 資本力があり適切に投資された大型プロジェクトが生活水準を向上させる一方、財務基盤の弱い地場中小企業に対する淘汰圧力が強まっている。
● M&A成功に向けた提言: 専門家は、ベトナム企業が外資を呼び込むための必須条件として、①法的手続きの完了、②国際基準に準拠した資産査定(評価)、③柔軟な取引構造の設計、④国際監査を通じた財務の透明性とコーポレート・ガバナンス(企業統治)の確立、の4点を挙げている。
