2026年上半期、ベトナムの製造・輸出セクターは堅調な成長を維持したものの、原材料価格の高騰、物流コストの上昇、注文の流動性といった多重の供給側の圧力に直面している。輸出総額は大幅に増加したものの、伝統的な労働集約型産業を中心に利益率が著しく圧迫されており、企業は下半期に向けて慎重な事業運営を迫られている。
1. 輸出の拡大と伝統的製造業の利益圧迫
ベトナム統計局のデータによると、上半期の財貨輸出額は前年同期比21%増の2665億米ドル(約4兆1,516億円)に達した。しかし、その内実には格差が見られる。
● 伝統的産業の停滞:製造・加工業全体の鉱工業生産指数(IIP: Index of Industrial Production)が11.4%増であったのに対し、衣類・縫製品(10%増)、繊維(10%増)、革製品(4%増)などの伝統的産業は低水準にとどまった。
● コストによる利益の摩耗:輸入原材料費や国際運賃の上昇が利益率を押し下げており、水産物(輸出額58億ドル、約9,040億円、12.8%増)でも「小口・短期発注、価格競争の激化」という傾向が強まっている。
2. 地政学リスクに伴う物流コストの高騰
中東紛争の長期化による影響が、海上輸送ルート(特にスエズ運河)を直撃し、サプライチェーンの大きな足かせとなっている。
● 運賃のピークアウトへの不透明感:直近のドリューリー世界コンテナ指数は、40フィートコンテナあたり4,500米ドル(約70.1万円)を突破し、前年同期比で約40%上昇、過去約2年間での最高値を記録した。
● 購買担当者景気指数(PMI)の動向:S&Pグローバルが発表した6月のベトナム製造業PMIは51.8となり、5月(52.8)からは低下したものの、景気拡大の節目である50を維持した。米国・イラン間の交渉進展による中東情勢の沈静化や、関税回避を目的とした先行発注(駆け込み需要)が下半期の支えとなっている。
3. 下半期の見通しと経営課題
企業の景況感は改善傾向にあるが、内憂外患の課題が山積している。統計局の調査では、製造・加工企業の39.4%が第3四半期の業績を「改善する」と見込んでいる。
● 製造業が直面する主要リスク(ハノイ・ホーチミン市統計局調査)
・ 国内市場における競争激化(46.6%)
・ 国内市場の需要の低迷(46.2%)
・ 高金利による負担(34.3%)
・ 国際需要の不足(30.7%)
・ 財務上の困難(25.6%)
● 雇用のミスマッチ:受注量や生産高が回復基調にある一方で、6月の統計では「雇用者数の減少」が続いており、マクロ心理の慎重さを反映している。上半期のIIP上昇率は10.8%と、年間目標(12〜14%)を下回っている。
4. 成長維持に向けた提言
統計局は、2026年通年の経済成長を確実なものにするため、以下の対策を提言している。
● 企業側:調達先の多角化、物流コストの厳格な統制、サプライチェーン管理(SCM)の自律的強化。
● 政府側:行政手続きの簡素化による原材料流通の円滑化、公共投資の執行加速、エネルギー安全保障の確立、医療および製造現場へのAI・デジタル転換(DX)の導入支援。
2026年7月6日時点のベトナムコンバンクの公示為替レートに基づき一括計算。
1 USD = 26,463 VND
1 JPY = 169.87 VND
(1 USD≒ 155.78 JPY)
