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Vol.28 | 2026.8.10 |
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| 世界トップ75への挑戦:ベトナム国際金融センター構想の光と影 |
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ホーチミン市中心部のスカイライン。ベトナム国際金融センター構想の中核を担う。 |
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| ホーチミン市とダナン市、二都市体制で描く2035年ビジョン |
| ベトナム政府が打ち出した国家戦略が、いよいよ本格的な実行フェーズへと移行しようとしている。グエン・バン・タン副首相兼ベトナム国際金融センター運営評議会議長が署名・承認した「決定04号」は、2035年を見据えた壮大なロードマップだ。目指すは世界トップ75の金融センター入り、アジア太平洋地域でトップ25、そしてASEAN域内では3位の座を掴み取ることである。 この計画の特筆すべき点は、経済の中心地であるホーチミン市と、イノベーションの拠点であるダナン市という2大都市に明確な役割分担を与えた点にある。 ホーチミン市には、包括的かつ多様な金融エコシステムの構築が求められている。伝統的な資本市場の発展はもとより、資金調達、投資、決済、資産・ファンド管理、さらには世界的な潮流であるグリーンファイナンスやデジタルファイナンスの中核を担う。国際貿易や物流とも連動させながら、商品市場やデリバティブ取引の活性化を牽引していく構えだ。 一方のダナン市は、未来の金融を見据えた「イノベーション・フィンテック国際金融センター」としての役割を託された。デジタル資産や決済、資産トークン化といった最先端領域に加え、貿易金融やサプライチェーンファイナンス、持続可能金融を連動させる。ここでは、新しい金融技術やビジネスモデルを柔軟に試すための管理下試験(サンドボックス)が重点的に行われることになる。 このように、制度やガバナンスの枠組みを整え、投資家にとって魅力的なビジネス環境を創出しようとするベトナムの意欲は非常に高い。2026年から2030年にかけての第一段階で国際基準に接近した法的枠組みを作り、後半の2031年から2035年で現代的な金融エコシステムを完成させるというスケジュールも緻密に描かれている。 |
| 成功の鍵は市場の信頼性と監視体制の強化 |
| しかし、ここで冷静に立ち止まる必要がある。グローバルなマネーや最先端のフィンテック企業を惹きつけるために「自由度」や「特区的な優遇措置」をどれほど拡充しようとも、その土台となる「市場の信頼性と公正性」が担保されていなければ、計画は砂上の楼閣になりかねない。 国際金融センターとしての地位を高めるうえで、仕組みやインフラといったハード面を整えることと同時に不可欠なのが、不正監視の徹底と市場の透明化である。いかに魅力的な金融商品やデジタル資産を揃えようとも、インサイダー取引や相場操縦、マネーロンダリングといった不正行為が野放しになる市場には、世界の機関投資家も健全な長期資金も絶対に寄り付かない。 |
| 世界トップ75への最後の条件 |
| ベトナムが真の意味で世界トップクラスの仲間入りを果たすためには、市場の拡大やイノベーションの推進と並行して、強力な権限を持った「証券監視委員会(日本の証券取引等監視委員会のような独立性の高い市場監視機関)」の機能強化が急務である。 どれほど高度なデジタル資産やフィンテック技術を導入しようとも、それを悪用した不正をリアルタイムで検知し、厳格に摘発する仕組みがなければ、市場の安全性は保てない。また、経済の急成長に伴って複雑化する金融商品やクロスボーダーの資金移動に対し、司法や行政から独立した立場から厳しく目を光らせる存在があってこそ、投資家は安心して資産を託すことができる。二度とヴァン・ティン・ファット事件※のようなことが起きない仕組み作りが、強く求められる。 ベトナムの国際金融センター構想は、同国を次のステージへ引き上げる起爆剤となるポテンシャルを秘めている。だからこそ、アクセルを踏み込んで特区の優遇策や新技術の導入を急ぐのと同時に、不正を許さない強固なブレーキと監視の網を張り巡らせる必要がある。攻めと守りのバランスが完璧に噛み合ったとき初めて、ベトナムの描く「2035年の夢」は現実のものとなるはずだ。 ※【編集部註】 ヴァン・ティン・ファット事件:不動産大手ヴァン・ティン・ファット社会長チュオン・ミー・ラン氏によるSCB銀行私物化・巨額横領事件。一審死刑、控訴審で減刑の動き。 |
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川島 博之 ベトナムVINグループ主席経済顧問 Jパートナーズ顧問 農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授などを経て、現職。 主な著書に『農民国家・中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』『極東アジアの地政学』。 |
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