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Vol.24 | 2026.6.9 |
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| 開発途上国にとってFDIは魔法の杖か |
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FDIによって発展したベトナムの電子機器製造拠点 |
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| FDIがもたらしたアジアとベトナムの成長 |
| アジアの奇跡の成長はFDI(Foreign Direct Investment : 海外直接投資)に依存している部分が大きい。日本や米国などの先進国が技術と資本を持ってやって来て、途上国は安価な労働力を提供する。それは先進国にとっても途上国にも利益をもたらすWin-Winモデルとされた。 ベトナムの経済成長においてもFDIが果たした役割は大きい。韓国のサムソン電子が携帯電話の生産拠点をベトナムに移したことはベトナムの成長に大きく貢献した。生産された携帯電話は米国などに輸出されたが、それがベトナムの貿易収支を大きく改善させて、中央銀行の金融政策の幅を広げた。だがFDIに依存した成長モデルは、ここに来てベトナム経済に新たな課題を投げかけ始めた。 2026年5月13日に開催された「ベトナム発展の橋渡しフォーラム2026」では、次世代の海外直接投資(FDI)誘致における国内企業の重要性が強調された。ベトナムは単に外資を受け入れるだけなく、部品などを製造する国内企業を育成しなければならない。 ベトナムには約100万社の国内企業が存在するが、多国籍企業と直接取引を行う企業はわずか約100社に過ぎない。それらの企業においても生産性と技術の低迷が続いており、労働生産性はタイの約半分、マレーシアの4分の1の水準に留まっている。昨今は外資系企業が進出する際に母国から下請け企業を連れてくる例が多く、国内企業が参入することも難しくなっている。 |
| FDI依存からの脱却と国内産業育成 |
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このような状況を認識した上で、グエン・ヴァン・タン副首相は、今後のFDIを誘致する際には、安価な労働力や優遇措置に頼るモデルから脱却して、「技術」「付加価値」「環境保護」そして「国内企業との連携」を主要な評価基準にしたいと発言した。単独企業での対応ではなく国内企業間の連携を強めて、部品供給からロジスティクスまでを網羅した「国内サプライチェーン」を構築する必要があることを強調した。 また政府は外資企業に対して国内企業への技術移転を促す必要があるとした。 FDIが活発になったのは米国が日本やドイツに通貨の切り上げを求めた1985年のプラザ合意以降だが、その後のアジアの発展を振り返る時、中国とタイの発展の経路は大きく異なっていた。中国では先進国からの技術移転が進み、EVや太陽電池の分野では先進国を凌駕する企業が生まれた。中国は世界の工場になり、膨大な貿易黒字を生み出すようになった。一方、タイは日本企業が進出することによって自動車を輸出する国になったが、その技術をタイが自国のものにして独自の産業を育てることはなかった。現在タイは中国から安価な工業製品が流れ込むことによって、貿易赤字を計上する年も多くなっている。 |
| ベトナムが進むべき道 |
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ベトナムの一人当たりのGDPは5,000ドルを超えて名実ともに中進国になった。今後、さらに発展し続けるには中国が行なったように、以下の取り組みが必要となる。 1) 進出してきた企業から積極的に技術移転を受ける 2) 下請け企業を育成してサプライチェーンを構築する そして、ベトナム独自の技術を持つ企業を育成しなければならない。 近隣に中国という見習うべき見本、そしてタイと言う反面教師が隣にいたにもかかわらず、ベトナムはFDIの利用の仕方について、あまり考えを巡らしてこなかったように見える。ただ孔子も言っているように「過ちては改むるに憚ること勿れ」である。ベトナムはFDIの金額ばかり気にしてきたことを反省する時期に来ている。 |
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川島 博之 ベトナムVINグループ主席経済顧問 Jパートナーズ顧問 農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授などを経て、現職。 主な著書に『農民国家・中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』『極東アジアの地政学』。 |
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