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Vol.22 | 2026.5.12 |
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| 中国発の工場移転、ベトナムへ60億ドル流入の実態 |
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外資投資の流入で拡大するベトナムの工業団地 |
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| サプライチェーン再編とFDI流入の実態 |
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海外からベトナムに多くの工場が移転して来ている。これは世界的なサプライチェーン再編を背景にしたものであり、それに伴い新たな工業団地が造成されている。 ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL:世界大手の不動産サービス・投資管理会社)のベトナム報告書によると、2026年最初の2ヶ月間でベトナムへの海外直接投資(FDI)は登録額で約60億ドルに達しており、その70%が製造業に集中している。電子機器、半導体、自動車部品などを中心とした分野で中国からの投資が拡大している。 中国からの投資はシンガポールを経由するものも多い。この投資は米中対立を反映している。現在ベトナムから米国に輸出する際の関税率は20%とされる。ただ中国からの迂回輸出と見られる製品には40%の関税が課せられる。一方中国から米国に輸出する場合はグローバル関税10%に加えて、通商法301条に基づく対中追加関税が7.5%から100%(品目による)まで課されることになっている。米国が中国に課す関税率は政治情勢や関税をめぐる裁判の結果によって大きく変動するが、今後も半導体、電気自動車(EV)、鉄鋼、アルミなど戦略分野では高い関税率が維持されることになるだろう。 このような状況を反映して中国の工場がベトナムに移っている。その動きは2024年11月にトランプ氏が大統領に選出された頃に始まったが、2025年になってトランプ関税が発動されると加速した。 |
| 北部工業団地の拡大と市場動向 |
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中国からの工場の移転はハノイやハイフォンを中心とした北部が多い。現在稼働中の工業団地は70カ所以上に及び、その総面積は約1万3,000ヘクタールにもなる。2026年第1四半期にハイフォン周辺で新たに100ヘクタール以上の工業団地が造成されたが、それでも入居率は約82%と高水準を維持しており、前年同期比で5%増加している。 これらの工業団地の造成では、キンバックシティ(KBC:北部の工業団地開発において圧倒的なシェアを持つ上場企業)、ビグラセラ(Viglacera:建設資材製造および工業団地開発を主軸とするベトナムの国営マンモス企業)、ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP:ベトナムとシンガポール両政府の協力により設立された、国内で最も成功している工業団地ブランド)といった大手デベロッパーが市場をリードしている。JLLの予測では今後も工業団地の賃料は年平均4~6%上昇する見込みである。 |
| 工場移転の影響と労働問題の課題 |
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この中国からの工場の移転はベトナムの景気を牽引している。2026年の第1四半期のGDP成長率は7.83%とされ、前四半期(2025年第4四半期)の8.46%からはやや減速したが、堅調に推移している。しかしながら中国からの工場移転はベトナムにとって両手を上げて喜ぶべきものにはなっていない。それは中国の工場が中国から労働者を連れて来ているためだ。 1990年代から2000年代にかけて多くの日本の工場が中国などに移転したが、その際に日本企業は多くの労働者を現地で採用した。それに反して中国の工場がベトナムに移転する際には労働者を連れて行く。その最大の理由は中国とベトナムの間で大きな賃金差がないためと考えられる。日本の工場が海外に移転した頃、日本と工場移転先では賃金に大きな差があった。 現在中国では失業が大きな問題になっている。そのような状況の中で中国政府は工場がベトナムに移転することによって失業率が一層高まることを恐れている。中国政府は工場がベトナムに移転する際に労働者を連れて行くように指導していると思われる。一方、ベトナム政府は外国人が工場で労働者として働くことを原則として認めていない。そのような条件の労働ビザを発給していない。 それにもかかわらず現在北部に大量の中国人労働者がいることは確実であるとされる。現在ハノイの北にあるバクニンには中華街が存在する。ただ中国人労働者の実態については、彼らがどのようなビザを持っているのか、不法入国者が多いのかなどを含めて、ほとんど明らかになっていない。また中国の工場がベトナムに移転する動機はトランプ関税であるが、米国が中国の工場のベトナムへの移転をどのように考えるかについても明確になっていない。中国からベトナムへの工場移転は一時的にベトナムのGDPを押し上げたが、その工場がベトナムに定着するかどうかについては、少し時間をかけて見る必要がある。 |
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川島 博之 ベトナムVINグループ主席経済顧問 Jパートナーズ顧問 農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授などを経て、現職。 主な著書に『農民国家・中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』『極東アジアの地政学』。 |
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