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Vol.21 | 2026.4.28 |
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| トー・ラム新体制始動:権力集中と改革の行方 |
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ベトナム国会議事堂(ハノイ)。トー・ラム新体制は、 |
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| 党大会から国会承認までの経緯と権力構造の変化 |
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ベトナム共産党は2026年1月19日から23日までハノイの国家会議場で第14回共産党全国代表者大会を開催して、トー・ラム氏を書記長に選出した。これは党の人事であり国家主席や首相は国会が決める。通例では国家主席や首相は党の序列から国会を待たずに明らかになる。ただ今回はトー・ラム書記長が国家主席を兼任するとされたことから、党内のコンセンサスを得るのに時間がかかった。国会を開くまでに三ヶ月近くの時間を要した。首相の人事についても異論があったと見られる。 しかし4月6日に国会が開かれると波乱はなくトー・ラム書記長が国家主席を兼任し、レ・ミン・フン氏が新首相に選出された。トー・ラム氏の書記長と国家主席の兼任はトップに党と国家の権限を集中させて、中国の習近平国家主席や米国のトランプ大統領と会談する際に強い立場を与えるためとされる。ただそれは独裁を嫌い権力を分散してきたベトナム共産党のやり方に反するものであった。そのために党内コンセンサスを得るのに時間がかかった。 トー・ラム書記長兼国家主席が68歳であるのに対して新たに就任したレ・ミン・フン首相が55歳と若いことから、今後多くの重要な決定はトー・ラム氏主導で行われると見られている。 |
| フン首相が掲げる5つの重点施策 |
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フン首相は就任演説の中で、5つの重点施策を打ち出した。 ①「現代的・奉仕型」政府への変革と制度の抜本的改革 制度構築を「最優先の任務」と位置づけ、行政手続きを徹底的に簡素化する。社会的なあらゆる資源を解き放つため、法規制の「ボトルネック」を即座に解消することを約束。また、政府組織を「精鋭・簡素・強力」なものに再編し、各閣僚には「現代的な管理思考」による柔軟な運営を求める。 ②歴史的な経済成長目標 2026年から2031年までの期間において、平均GDP成長率10%以上の維持。これを達成するため、科学技術、イノベーション、DX(デジタルトランスフォーメーション)を主要な動力源とし、戦略的な自主性を高める。グリーン転換と気候変動への適応を推進し、国家経済が主導権を握りつつ、民間経済を最も重要な原動力として位置づける。 ③徹底した分権化と公務員の質的向上 2025年7月からの地方自治体新体制(2段階制)の運用を加速させる。2026年を「地方公務員の質的向上の年」とし、行政の役割を「管理」から「奉仕・創造」へ転換する。「地方ができることは地方に任せる」。 ④社会基盤と人間への投資 「人間への投資こそが最も持続可能な投資」とし、教育の抜本的改革、ハイテク人材の育成、才能のある人物の重用。公衆衛生システムの強化に加え、「誰一人取り残さない」社会保障政策や、ベトナム文化のアイデンティティ確立。 ⑤清廉な政治と責任の明確化 汚職防止と浪費の撲滅を継続し、行政の規律を厳格化する。特に「責任逃れ」や「無関心」な姿勢を厳罰に処す一方で、「公共の利益のために敢えて行動し、責任を負う公務員」を保護するメカニズムを実質的に運用して公務員の士気を高める。 |
| 政策評価と今後の最大課題 |
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同じ社会主義国である北朝鮮が核保有と国防の強化、韓国との関係断絶、米国敵視と中露との関係強化などを施政方針としていることに比べれば、ずいぶん常識的な内容になっている。 ここで①、③、⑤は公務員の汚職と非効率に関連している。ベトナム政府も行政の効率化が最大の問題だと認識しているのであろう。この春に予定されていたロンタイン国際空港の開港は年末にずれ込むと発表されたが、年末になっても開港できないだろうと噂されている。このようなことでは、いくら立派な計画を立てても高い成長率を維持することは難しい。グエン・フー・チョン政権は苛烈な汚職摘発によってこの問題を解決しようとしたが、トー・ラム体制はどのような手段でこの問題を解決するつもりなのであろうか?フン首相が掲げた目標の達成手段が問われている。 |
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川島 博之 ベトナムVINグループ主席経済顧問 Jパートナーズ顧問 農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授などを経て、現職。 主な著書に『農民国家・中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』『極東アジアの地政学』。 |
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