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Vol.20 | 2026.4.14 |
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| 停戦の裏で動く力学:イラン戦争の本質を読む |
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ホルムズ海峡を航行する米国艦隊(2012年) |
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| イラン戦争がもたらす原油高とコストプッシュ型インフレ |
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グエン・チャイ大学のグエン・クアン・フイ学部長は、イラン戦争による石油価格の上昇によりベトナムが「コストプッシュ型インフレ」に陥る可能性を指摘している。エネルギー価格の高騰は輸送コストという直接的なコスト増だけでなく、電力料金や原材料価格への転嫁を通じて、製造業全体の収益性を圧迫する。特にベトナムのような輸出主導型経済にとって、物流コストの増大は国際競争力の低下に直結しかねない。そこでは金融政策のジレンマが生じる。エネルギー由来のインフレ(消費者物価指数上昇)が進むと、中央銀行は通貨安定のために金利を引き上げざるを得なくなるが、これは企業の借入コスト増大を招き、景気回復の足かせとなる。 2024年の石油(原油)輸入額はベトナムが79億ドル、日本は853億ドルである。石油輸入代金がGDPに占める割合はベトナムが1.7%、日本は1.8%とほぼ同じ割合になっている。石油の価格上昇が経済に与える影響は日本もベトナムもそれほど変わらない。日本もコストプッシュ型インフレに陥る可能性が高い。 原油価格の上昇は世界中でコストプッシュ型インフレを引き起こす。ただホルムズ海峡を通過する石油は主にアジア諸国に運ばれていたことを考えると、日本やベトナムはコストがアップするだけでなく、原油そのものが足りなくなる事態に遭遇する。ベトナムでは航空燃料の不足から4月から減便が行われる。日本ではまだそのような事態には陥っていない。これは備蓄量に違いがあるためと考えられるが、イラン戦争が長引けば日本もベトナムと同じような状況に追い込まれよう。 |
| 戦争長期化で変わる国際政治と利害構造 |
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イラン戦争はいつ終わるのであろうか。短期間で終われば一時の危機で終わる。だがもし長引けば世界経済を根本から変える可能性がある。戦争は早く終わってほしいが、世界には長引いた方がよいと思っている人達がいることに留意する必要がある。 米国は原油を自国で供給できる。原油価格の上昇はコストプッシュ型インフレの影響を受ける消費者にはマイナスだがシェールオイル生産者は恩恵を受ける。米国のシェールオイル業界は戦争が長引くことを喜んでいる。またミサイルが不足しているとの報道があったが、米国の兵器産業にとってこの戦争は明らかにプラスである。ただ多くの有権者はガソリン価格の高騰に苦しんでおり、戦争を終わらすことができなければ、トランプ大統領は中間選挙で負ける可能性が高い。米国にとって原油価格の上昇はプラスの面とマイナスの面が存在する。 原油価格の上昇はウクライナ戦争の戦費不足に悩むロシアにとって干天の慈雨になっている。戦争が長引けば長引くほどプーチンは嬉しい。そうであればロシアは陰でイランを援助することによって、簡単には停戦に応じないように説得する可能性がある。 |
| 停戦合意の不確実性と見えない本質 |
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日本時間4月8日朝、アメリカとイランの間で「2週間の停戦」が電撃的に発表された 。つい前日までトランプ大統領は「徹底的な爆撃を行い、一つの文明を破壊する」とまで言い放つほど両国の緊張は極限に達していた。しかし一転して対話による休戦が合意された。ただこの合意によって本当に平和が訪れるのか疑問が残る。 トランプ大統領の「一つの文明を破壊する」発言は米国内で不評であり、一部では大統領の弾劾が話題に上った。その一方でイランはこの脅しに屈した面もある。4月8日、日本の株式市場は休戦を好感して高騰したが、恫喝によって得られた合意が真の合意に至るかどうかまだ分からない。本稿に書いたように、戦争が長引いた方が良いと思っている人々も大勢いる。またイランがウラン濃縮を止めるとも思えない。 戦争を報じるニュースは派手になりがちだが、表面に現れたことだけを追っていると本質を見失う。ニュースの底に隠されている真実を見抜く力が試されている。 |
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川島 博之 ベトナムVINグループ主席経済顧問 Jパートナーズ顧問 農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授などを経て、現職。 主な著書に『農民国家・中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』『極東アジアの地政学』。 |
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