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Vol.19 | 2026.3.24 |
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| ベトナムが挑む「国営企業改革」の行方 |
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ベトナム石油・ガスグループ本社ビル(ハノイ)。 |
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| ベトナムが直面する国営企業改革の必要性 |
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ベトナム政府が国営企業改革に乗り出した。対象になる企業はVietnam Oil and Gas Group(ベトナム石油・ガスグループ)、Vietnam Electricity(ベトナム電力)、Viettel(ベトテル:最大手通信企業)、Vietnam Airlines(ベトナム航空)、Vietnam Railways Corporation(ベトナム鉄道公社)など20社とされる。いずれもベトナムを代表する企業であり、電気やガス、交通インフラなどを担っている。ベトナム政府は2045年までの高所得国入りを目指しているが、それを実現するには国営企業の改革が欠かせない。 日本でも昭和50年代から平成にかけて国有企業や国営事業の改革が大きな政治課題になった。もっとも困難を極めたのは国鉄と郵政の民営化だった。国鉄改革は昭和に中曽根内閣、郵政改革は平成に小泉内閣によって行われた。日本の政治史において中曽根内閣も小泉内閣も強い政権であり、強かったからこそ改革に手を付けることができた。 国営企業改革を口で言うのは簡単だが、その実行は極めて難しい。国営企業は産業の基盤であり、かつ国民生活に密着している。重要な分野であるから国営にしている。その多くが大企業であり、多くの従業員を抱えている。 |
| 日本の経験に見る国営企業改革の困難 |
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どの国でも経済が発展すると国営企業の効率の悪さが目につくようになる。日本が戦後復興を遂げた時代に国鉄は重要な役割を果たした。しかし自動車が発達し道路が整備されると、物資の輸送はトラックを利用する方が便利になった。トラックなら荷物を軒先まで取りに来て、軒先まで届けてくれる。バスを利用する団体旅行も増えた。 国鉄はこのような時代の趨勢について行けなかった。その結果、戦前から戦後復興期まで黒字であった国鉄は1970年代に入ると多額の赤字を出すようになってしまった。政府は国鉄の分割民営化を考えた。だが国鉄は戦後復興期に職員を60万人以上も抱えたことがある大企業である。労働組合が分割民営化に強く反対したことから改革は困難を極めた。 平成の時代に行われた郵政改革は国の資金の流れに関連していた。郵便貯金で集められた資金は財政投融資としてインフラの整備に使われていた。しかしその頃になるとインフラの整備はほぼ終わってしまい、財政投融資による資金の流れには無駄が目立つようになっていた。 その改革に小泉内閣が取り組んだが、それには与党である自民党の内部から反対の声が上がった。国営企業改革は既得権益層との戦いになる。この時に“抵抗勢力”なる言葉が生まれた。 |
| 日本と中国の教訓-ベトナム改革の成否は? |
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日本の経験からも分かるように、ベトナムにおいても国営企業の改革は極めて困難な課題になる。ベトナム政府は株式の公開から手をつけるつもりだと思われるが、中国の国営企業改革がそうであったように、株式を公開しても51%以上を国が保有し続ければ、民間の意見が経営に反映されることはない。 現在中国の国営企業は借金まみれの経営を行なっているとされる。しかしその実態は明らかになっていない。このことを見ても、政府が株式の過半を保有する状況では国営企業の資金の流れの透明化は不可能と言ってよい。国営企業改革が中途半端に終わったことが、中国が不動産バブルの崩壊に苦しむ原因の一つになっている。 ベトナム政府は日本や中国における国営企業改革から学ぶことが多いはずだ。ベトナムが先進国入りする上で国営企業の改革は欠かせない。最後にもう一度言うが、国営企業改革を口で言うのは易しい。だがその実行は極めて難しい。ベトナム政府が困難を克服して、国営企業改革を進めてくれることを祈るばかりである。 |
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川島 博之 ベトナムVINグループ主席経済顧問 Jパートナーズ顧問 農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授などを経て、現職。 主な著書に『農民国家・中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』『極東アジアの地政学』。 |
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