|
Vol.16 | 2026.2.10 |
|
|
||
|
|
|
| 国有銀行の経営透明化の重要性 |
|
|
ベトナム国会議事堂(ハノイ)/ |
|
|
| ベトナムの国家経済の発展戦略 |
|
ベトナム共産党政治局 は2026年1月6日に国家経済の発展戦略を発表した。その中で国有企業は社会主義志向の市場経済において「主導的役割」を担い、マクロ経済の安定、安全保障、社会的公正を確保する基盤であるとした。 その上で国有企業の現状として、 1)国際競争力が十分でない 2)資源管理の非効率、法制度の未整備 3)公的機関の組織が肥大化し、財務の自立性が低い ことを指摘している。 また2030年までの目標として、 1)ベトナムを「工業化された中所得国」にする 2)国有企業50社を東南アジアトップ500にランクインさせ、1~3社を世界トップ500に入れる 3)国有銀行をアジアトップ100に複数ランクインさせる 4)国家予算の健全化(赤字5%以内、国債60%以内) とすることを掲げた。 2045年までのビジョン としては、 1)ベトナムを「高所得の先進国」にして、国有企業を国際競争力のある基盤に育成する 2)国家備蓄をGDPの2%に拡大し、国有企業5社を世界トップ500にする ことを目標とした。 これらを実施するために、 1)法制度の整備と透明性の強化 2)国有企業の再編・近代化 3)科学技術・デジタル化・グリーン経済の推進 4)土地・資源・インフラの効率的利用 5)腐敗防止と責任体制の強化 をあげた。 |
| 社会主義志向の市場経済が抱える構造的リスク |
|
これらは野心的な計画といえるが、ベトナム戦争の終結から50年が経過して、一人当たりのGDPが5,000ドルを超えた国の計画として理解できる一方で、この発表の中でも述べているように、ベトナムは社会主義志向の市場経済を採用している。そのような国では一度計画が策定されると、計画達成が至上命題として一人歩きすることがある。 GDPを増やすこと、またインフラを整備することは銀行融資を増やせば達成できる。そこで問題になるのが融資の健全性である。中国には誰も使わない新幹線の駅や誰も住んでいない住宅団地が多数存在する。これらは建設している段階ではGDPの増加に貢献したが、現在は不良債権になっている。社会主義志向の市場経済の問題がここにある。 中国ではこれまで地方政府、国有企業、国有銀行が中心になって発展を牽引してきた。だがその発展モデルはここにきて、不良債権という問題を抱えている。 |
| 中国の教訓と国有銀行経営透明化の重要性 |
|
中国の失敗は国有企業だけではない。民営企業についても無理な課題を背負わせると、将来に大きな禍根を残す。その例がEV自動車メーカーのBYDである。 中国政府はEV振興を国家発展の中心に据えた。BYDには各種の保護と多額の融資が行われた。その結果としてBYDはEVにおいて世界のトップ企業に躍り出た。だがここに来て過大な借入が問題になっている。EVブームが去ったために売れ行きが鈍化し、かつ借入金があまりにも巨額であるために、倒産の危機が囁かれるようになってしまった。国家が強く目標を設定すると、民営企業でもこのようなことが起こりえる。 最も重要なことは国有銀行による融資の透明化である。目標達成に気を取られて融資の健全性が失われると、将来に大きな禍根を残す。共産党政治局は法制度の整備と透明化をあげている。また公的機関の財務の肥大化も心配しているが、それは正しい指摘であろう。 国家が野心的な目標を設定することは理解できる。しかしバブルが崩壊し出口が見えない不況に悩む中国の轍を踏んではならない。そのためには国有銀行の経営の透明化が最も重要な課題になる。 |
|
|
|
|
|
|
川島 博之 ベトナムVINグループ主席経済顧問 Jパートナーズ顧問 農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授などを経て、現職。 主な著書に『農民国家・中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』『極東アジアの地政学』。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
| ※このメールはJパートナーズのメールマガジン登録の方にお送りしています。
※記載されている評論は執筆者個人の見解であり、Jパートナーズ、または運営会社の見解と異なる場合もございます。 ※掲載されている全ての内容、文章の無断転載はできません。 ※本メールにそのまま返信されても、ご返答はできません。 ■ お問い合わせ お手数ですが下記メールアドレスよりお問い合わせください。 info@jpartners.jp ■ メールサービスの停止 お手数ですが下記メールアドレスより空メールをお送りください。 unsubscribe@jpartners.jp ■ 発行元 Jパートナーズ:https://jpartners.jp/ |
|
| © JPartners. All Rights Reserved. |