Vol.15 2026.1.19
ベトナムの2025年輸出額は4,750億ドル(前年比17%増)、GDPの9割超

輸出がGDPの9割超を占めるベトナム経済。
ガットライ港(ホーチミン)の港湾風景
(Photo AC)

輸出に依存するベトナム経済
 昨年のベトナムの輸出額は4,750億ドル(前年比17%増)、輸入額は4,550億ドル(前年比19%増)であった。主な輸出品は電子機器で約1,080億ドル、それに機械類、携帯電話、繊維製品が続く。一方輸入品は電子部品が約1,510億ドル、それに機械類、鉄鋼、プラスチック製品、自動車が続く。貿易収支は200億ドルの黒字である。外資系企業が貿易黒字を牽引している。
 2025年のベトナムのGDPは5,140億ドルと推計されており、輸出額がGDPに占める割合は92%にもなっている。ちなみに日本の2024年の輸出総額は7,090億ドル、GDPは4兆0193億ドルだから、輸出額がGDPに占める割合は18%に過ぎない。ベトナム経済は輸出に大きく依存している。
 輸出先は米国が1,532億ドルと最大であり、それに中国の704億ドル、EUの562億ドルが続く。輸入は中国からが最も多く、その額は1,860億ドルにもなる。これらの数字から、ベトナムが中国から部品を輸入し、それを加工して米国に輸出していることが分かる。

貿易黒字がもたらすリスク
 トランプ政権はこの構造に不満を募らせており、中国製部品の割合が高いものに高い関税を課すと言っている。ただ最近、そのことに対しては言及していない。トランプ政権は気まぐれなところがあり、最近はウクライナやベネズエラ問題にかかりきりであり、中国が迂回輸出先としてベトナムを利用していることに、それほど腹を立てていないようにもみえる。
 これまでベトナムは貿易赤字が続いていたために、景気が悪化しても利下げの余地が限られていた。赤字が続く状態で金利を低下させると、通貨のドンが急落する恐れがあったからだ。貿易黒字が定着したことによって金融政策の自由度が増した。
 ただ不安な面も存在する。それは米国だけでなくEUも中国の大幅な貿易黒字に文句を言い始めたことだ。その矛先がいつベトナムに向かってもおかしくない。大幅な貿易黒字は相手国の反発を招くので、輸出によって国を富ませる政策には限界がある。
 またベトナムの貿易黒字が外資系企業によってもたらされていることも気になる。外資系企業は利益を自国に送金する。そしてベトナムで研究開発を行なわない。その結果としてベトナムに資本も技術も蓄積されない。

外資系企業に頼らない発展モデルを育成すべき
 それにもかかわらず、いまだにベトナム政府は外国企業の誘致に熱心である。最近は特にAIや半導体に関連した産業を誘致したがっている。しかし、それによってベトナム人は豊かになれるのであろうか。2025年のベトナムのGDP成長率は8%とされるが、庶民はその成長を実感していない。外資系企業が富を作り出しても、その富はベトナムの庶民に回っていない。
 海外から資本と技術を導入し、安い労働力と組み合わせて輸出産業を育成する。このモデルにいつまでも依存していると、自国産業が発展しない。高度人材も育たない。東南アジアにおいてベトナムより一歩先に発展したタイとマレーシアが、中進国の罠に苦しんでいる理由がそこにある。
 最先端のAIや半導体産業を招致するばかりが産業政策ではない。もっと地に足のついた発展モデルがあるはずだ。ベトナム独自の資本と技術によって世界と戦うことができる産業を育成する。中進国の罠に嵌まらないためには、そこが重要になると思う。
川島 博之
ベトナムVINグループ主席経済顧問
Jパートナーズ顧問
農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授などを経て、現職。
主な著書に『農民国家・中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』『極東アジアの地政学』。
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