Vol.14 2026.1.13
ロンタイン国際空港開港、ちょっと急ぎすぎでは?

開港式が行われたロンタイン国際空港(工事中の模様)
Photo: Stevetruong / CC BY-SA 4.0
https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/

ホーチミン市郊外のロンタイン国際空港が開港式
 2025年12月19日ホーチミン市郊外のロンタイン国際空港で開港式が行われた。ホーチミン市のタンソンニャット空港は市内にあり、アクセスには便利だが拡張の余地がなく、増加する旅客需要に対応できない。そのため新たな空港が求められていた。今回の開港は着実に進むインフラ整備の象徴といえよう。
 ただ気になることがある。開港式を行いながら実際の運用は2026年になるとされ、まだその日時は公表されていない。空港へのアクセスも気になる。ロンタイン国際空港はホーチミン市中心部から40kmも離れており、現在は一般道でしか行くことができない。ホーチミン市内の渋滞も考慮すると、空港へは最低でも2時間はかかるといわれる。
 ベトナム政府は高速道路と高速鉄道を建設する予定であり、高速道路を使えば市内まで約1時間、高速鉄道では30分程度でアクセスが可能になる。ただどちらも完成の目処は立っていない。高速鉄道は着工すらされていない。これまでの実績を考えると、その実現には数年を要すると噂されている。
 2024年7月に誕生したトーラム政権は2035年までに南北高速鉄道や高速道路などのインフラ整備を急ピッチで行うと宣言している。ロンタイン国際空港の開港はその手始めになっている。ただ今回の開港式は時期尚早に感じる。

政治的思惑で進むインフラ整備
 ベトナム人の間では、このフライング気味の開港式は政治的な思惑によって行われたと噂されている。12月に開港式を行なったのは、2026年に発足するベトナム共産党第14期に政治局入りするメンバーの選定に関係している。ベトナム共産党は5年毎に政治局員の入れ替えを行うが、その陣容は前年の12月に内定する。それゆえに13期(2020-2025)に政治局員だった人が残留するためには、12月までに実績をアピールする必要がある。このような理由から12月に開港式が行われたのではないかといわれている。
 この開港式に象徴されるように、ここに来てベトナムのインフラ整備は加速しているが、それは財政面の不安を伴うものになっている。
 殷鑑遠からず。現在中国は不動産バブル崩壊に苦しんでいる。その中国でもつい最近まで凄い勢いでインフラ整備が進んでいた。地方の中核都市に次々に大きな空港が作られた。新幹線網の延長は日本の15倍にもなる。しかしその急速な整備は財政面での裏付けが希薄だった。新幹線はほとんどが赤字路線であり、建設費用償還の目処は立っていない。

インフラ整備は経済成長の成果だが・・・
 インフラ整備が経済発展にとって重要なことは論をまたない。しかし、その整備は採算を十分に考慮した上で行うべきである。そうでないと必ず途中で齟齬が生じる。
 インフラ整備は誰の目にも見える経済成長の成果であるために、開発途上国の政府はその整備を政権の実績にしたがる。中国はその典型といっていいが、それが行き過ぎると役に立たないインフラが乱立することになる。
 ロンタイン国際空港は将来必ず役に立つ。しかし開港してから高速道路や高速鉄道が完成するまではロンタイン国際空港は使い難い空港であり続ける。その期間の採算をベトナム政府はどのように考えているのであろうか。
 現在のベトナムを見ていると中国の二の舞になりかねない不安がある。ベトナムの不動産価格はバブル状態を呈している。それにもかかわらず政府はインフラ整備に血道をあげている。南北新幹線や原発などのインフラ整備を急ぎすぎている。財源はどうなっているのであろうか。それが経済危機に発展することがないことを祈るばかりである。
川島 博之
ベトナムVINグループ主席経済顧問
Jパートナーズ顧問
農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授などを経て、現職。
主な著書に『農民国家・中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』『極東アジアの地政学』。
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