Vol.13 2025.12.23
レアアース埋蔵量世界第2位のベトナムが持つポテンシャル

ハイテク製品に欠かせないレアアースが生産できれば、
世界市場に大きな影響力を持てるのだが・・・
(写真はイメージです Photo AC)

世界第2位のレアアース埋蔵量を持つベトナム
 レアアースはスマートフォン、パソコン、モーターなどを生産する上で欠かせない物質になっている。レアアースの埋蔵量と生産量においては、中国が世界第1位である。その中国は米国との貿易交渉においてレアアースを戦略物質として使い始めた。
 ベトナムのレアアース埋蔵量は中国に次いで世界第2位である。ただ現在ベトナムはレアアースを生産していない。もしベトナムがレアアースを生産して輸出するようになれば、世界のレアアース市場に大きな影響を与えることができよう。
 地中にあるレアアースを掘り出し、精製して製品にすることはそれほど難しいことではない。だが精錬の際に出る廃棄物が問題になる。レアアースを含む土壌には天然放射性物質(トリウム、ウランなど)が含まれており、廃棄物は放射性物質を含む。その保管場所が問題になる。
 中国がレアアースの生産で世界第一になった理由がここにある。レアアースは他の国でも生産できるが、廃棄物の保管を考えるとコストが上昇する。中国では放射性廃棄物の保管についての規制が緩く、その結果としてレアアースを安く生産することができる。

日本と組めばチャンス到来も
 日本は放射性廃棄物の保管に対して世論が非常にセンシティブであり、レアアースを生産することはほぼ不可能と言ってよい。
 中国はトランプ政権との貿易交渉においてレアアースを交渉の切り札として使っている。その効果はテキメンであり、トランプ政権は大幅な譲歩を迫られることになった。ただ米国はこのような状況に甘んじる国ではない。レアアースの輸入先を多角化して、中国からの輸入に頼らなくてもよい状況を作りたいと思っている。また放射性廃棄物の保管に関する規制を緩めて、米国内でレアアースを生産したいとも考えている。
 世界がこのような状況にあるため、ベトナムにチャンスが訪れている。ベトナムの技術水準を考えると単独でレアアースを製品化することは不可能である。一方で日本はレアアースを精錬する技術を持っている。ベトナムはそんな日本と組んでレアアースを生産することを考えてはどうであろうか。
 放射性物質を含んだ廃棄物の保管については、ベトナムの世論は日本ほどセンシティブではないと思う。中国は大量のレアアースを生産して、その際に出た廃棄物を国内に保管している。ベトナム世論を勘案すると、日本側から積極的に持ち掛ける話ではないが、ベトナム政府が国益を考えて本気でレアアースの生産を検討するなら、技術を有する日本は良い提携先になろう。

問われるベトナムの本気度
 レアアースを生産することは、中国を牽制する意味でも有効である。中国はベトナムのレアアース生産を面白くなく思うだろうが、まさか武力を持って阻止することはしないであろう。
 もしベトナムが中国と並ぶレアアースの輸出国になれるならば、世界がベトナムをみる目は大きく変わる。ベトナムを安い労働力を提供するだけの国とはみなくなる。そしてレアアースを輸出できることは、世界の国々と貿易交渉を行う上でも武器になる。
 ベトナムがレアアースの生産に本気で取り組めば、それはベトナムが大きく飛躍するチャンスになるであろう。中国はレアアースを戦略物質にした。今ベトナムの本気度が問われている。
川島 博之
ベトナムVINグループ主席経済顧問
Jパートナーズ顧問
農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授などを経て、現職。
主な著書に『農民国家・中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』『極東アジアの地政学』。
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