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Vol.12 | 2025.12.09 |
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| ベトナムの金利をめぐる議論への不安 |
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ベトナム政府の金融政策の行方は? |
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| ベトナムの金利をめぐる状況 |
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ベトナムの今年9月まで(3四半期)の成長率は7.85%であった。政府の今年の成長目標は8.3〜8.5%だから、達成するためには第4四半期の成長率を9.7〜10.5%にしなければならない。成長率を加速させる手段として利下げがあるが、インフレ圧力が強いために難しい。9月のCPI(消費者物価指数)は3.38%で、8月の3.24%からわずかに上昇した。またベトナム通貨ドンは米ドルに対して年初から3.55%下落した。 米国の政策金利は、年初は年4.5%だったが、10月は4.0%である。一方ベトナムの金利は3.0%である。米国の金利が低下している局面でドンが下落している。ここで金利を下げれば一層のドン安を招く。ドン安は輸出には好都合であるが、輸入物価を考えた際には避けたい。 ただ金利はCPIと為替だけで語るべきものではない。ハノイやホーチミン市の地価が高騰しているからだ。ベトナム政府は景気を維持するために金利を低く抑えているが、それは地価上昇につながっている。現在のベトナムの状況は、日本がプラザ合意を行った1985年からバブルが崩壊する1990年までに似ている。 |
| 金融政策の危険なニオイ |
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日本ではプラザ合意の結果として円がドルに対して急騰した。当時の日本は輸出主導型経済だったから円高は景気を直撃した。その対策として日本政府は財政出動を行い、かつ金利を下げた。これが地価高騰を招いた。ベトナムも景気を優先して政策金利を低く抑えているが、それが地価高騰を招いている。そして金利を低く抑えても、CPIがあまり上昇しなかった点も似ている。ベトナムの金融政策に危険なニオイを感じるのは筆者だけであろうか。 トー・ラム政権は南北新幹線やハノイやホーチミン市の地下鉄整備に力を注いでいる。これまでベトナムのインフラ整備はODAに頼る部分が大きかった。ホーチミン市の地下鉄は日本、ハノイの地下鉄は中国とフランスのODAによって整備された。 しかし中進国になった現在、もはやODAに頼ることができない。政府はビングループなどの民間企業の力を借りてインフラを整備することを考えている。それは政府に資金がないからにほかならない。 ただビングループも豊富な資金を持ち合わせている訳ではない。ビングループの自動車部門は赤字が続いている。このような状況において、政府は金利を低く保つことで民間企業の資金調達を助けようとしている。 |
| 金利をめぐる議論への不安 |
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そこには落とし穴がある。金利を低くしていると、多くの資金が土地に流れてしまうからだ。ベトナムにはバブルが崩壊するまでの日本と同様に、地価は絶対に下がらないという土地神話が存在する。今年に入って、ハノイやホーチミン市の地価がさらに上昇したことは、低金利を続けていることと無関係ではない。 1980年代の日本経済は強かったため、金利を低下させても円高が続いた。しかしベトナム経済はそれほど強くないので、低金利下でドンが下落している。ただ地価が異常に高騰している点は同じである。 ベトナムで金利を議論する際に、不動産価格高騰については何も語られない点に不安を感じる。ベトナム社会は地価が異常に高騰し、極めて危険な状況になっていることを認識していない。バブル崩壊はそれを味わったものでなければ、その苦しさが分からないからだろう。 |
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川島 博之 ベトナムVINグループ主席経済顧問 Jパートナーズ顧問 農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授などを経て、現職。 主な著書に『農民国家・中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』『極東アジアの地政学』。 |
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